フィンランド大統領に選ばれたタルヤ・ハロネン氏  2000年2月7日 朝日新聞

シングルマザーとして育ててきた娘は21歳になった。
つきあいの長い今の恋人とも籍は入れず、
同じマンションの隣りに住んでいる。

対立候補のエスコ・アホ前首相が四人の父親
として、家庭の価値を前面に出して選挙戦を
戦ったのとは対照的な経歴だ。

欧州連合(EU)加盟と高い失業率という
明確な争点があった前回とは異なり、今回の
選挙戦では候補の性別に焦点があたった。

女性の参政権をいち早く認め、議員の
三分の一が女性というフィンランドだが、
大統領職はこれまで男性に占められてきた。

前回1994年の選挙では、女性のレーン前国防相
がアハティサーリ氏に惜敗した。

今回のハロネン氏の当選は、有力候補だった
レーン氏ら保守系女性に候補の指示票を、
政党を超えて集約した結果だった。

当選後、「この結果は女性の励みになると思う。
女性も男性同様、いかなる仕事にも就ける
ことを示したのだから」と語っている。

労働組合の弁護士だったころ
「赤毛の闘士」と呼ばれた。

社会民主党に加わった後も教会批判や
ゲイ擁護など過激な発言で知られた。

だが、EU議長国を務めた昨年後半は、
外相として調製手腕を発揮。

選挙戦でも過激な左派のレッテルを嫌い、
現実主義者であることを強調した。

行く手には多くの課題が待ち受けている。
隣国ロシアは政治的にも経済的
にも不安定なままだ。

北大西洋条約帰国(NATO)加盟
問題も決着がついていない。

アハティサーリ現大統領はNATOの
ユーゴスラビア空爆時に、ミロシェビッチ
・ユーゴ大統領から和平案受諾を引き出し
たことで評価を高めた。

大国にもてあそばれた歴史がはぐくんだ
小国の外交手腕が託される。
五十六歳。

    (ブリュッセル・山本敦子)

 

 

 

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