戸籍と番号制  東京新聞 2018年2月21日 戸籍7

(東京新聞 2018年2月21日)

戸籍制度にマイナンバー制度を導入する
検討が法制審議会の部会で始まっている。
個人のプライバシー侵害の危険性はないか。
高額な構築費用とその効果が見合うのか。
もっと検証されるべきだ。

 

政府組織が抱える多くの情報がマイ
ナンバー制度に組み込まれつつある。

この共通番号制は規模が大きくなれば
なるほど、システムの運用費用が嵩むし、
いったん事故が起きれば、どんな深刻な
被害が出るか予想がつかない。

 

とくに戸籍は個人の出自を記録した情報
である。
出生、親子関係や「続柄」などが書かれて
おり、極めてセンシティブな記録でもある。

だから、戸籍の扱いは特別に慎重であらね
ばならないのは当然である。

 

だから、税や社会保障など多様な個人情報
と戸籍の情報を「紐付け」して、データ
マッチングするという発想自体に疑問を覚える。

個人のプライバシー侵害の可能性がある限り、
立ち止まった方がよいと考える。
取り返しのつかない事態と回避するためだ。

 

そもそも戸籍は現在、市町村によって
システムはバラバラである。

電算化前の死亡者の除籍記録などは画像
データで保存されていて、これにマイナンバー
つけるのは膨大なコストがかかる。

何かの手続きで必要性が出ても不可能である。
だから番号制による効率化はできないだろう。

 

また漢字の問題もある。
例えば本家と分家との間で、
字体を微妙に変える習慣もある。

外字は百万字を超すともされる。
これを一文字ずつ作成するのは困難な作業だ。
かなり時間を要しよう。

 

おそらく戸籍制度にマイナンバーを導入
するとしても親子関係や夫婦関係の証明、
婚姻や離婚の年月日、日本国籍の有無ー、
この程度しか使い道はないだろう。

具体的には児童扶養手当や老齢年金、
年金分割の請求、旅券発給の申請だけだ。

これら請求や申請を現行方法のままでしても、
国民にそれほど負担がかかるとは思えない。

逆に言えば、マイナンバー制度を導入する
メリットが大きいと国民に説得できるか。

莫大な国費を投じるなら、それに見合う
効果の証明をある程度は示すべきである。

日弁連は「戸籍情報と個人番号はひも付け
しないよう求める」意見書を出している。

法制審にはそれほどプライバシーに敏感な
テーマだという意識を、まず持ってもらいたい。