AID(非配偶者間人工授精)で生まれた子どもの思い

 

 

AIDで生まれた子

夫に不妊等の理由がある場合などに、夫以外の第三者の
精子を使って人工授精をすることを「A ID」といいます。

私は以前から、このようにして生まれた子がこれらの
事情を知った時に、父親を知りたいと思わないのだ
ろうか?、と疑問に思っていました。

もう20年以上前のことですが外国で作られた、この問題
を扱ったTV番組を NHKで見たことがありました。

どこの国で制作されたものかは、はっきりとは覚えて
いないのですが、多分北欧だったのではないかと
思います。

 

 

実父母を知りたい

その番組に出演していたADIで生まれた子どもたち
(といってもいわゆる子どもではなく、成人していた
子どもがほとんどだったと思いますが)は、私が
ずっと疑問に思っていた、まさにそのことで悩んで
いるということでした。

当然のことでしょう。
生物学上の本当の父を知りたい、という思いは
ごく自然なものと思われます。

私の知り合いで、AIDで生まれた子ではなく、いわゆる
「藁の上からの養子」といわれる、法的な養子縁組を
とらずに生まれてすぐ、実際の父母から養父母に
渡され、育てられた人がいます。

この場合、戸籍上も養父母が実の親という扱いです。
私が彼女から聞いた時、彼女は50代だったと思います
が、彼女は実の両親をとても知りたいので教えてくれる
よう養父母に頼んだそうですが、その願いは叶いません
でした。

彼女をもらう時に、両親の名を明かさないことが条件
だったということもあったようですが、彼女自身は両親
が、実の親を知られるのを嫌がっているという理由に
よるのだろうと言っていました。

 

 

 

 

探し当てた父

このケースは、養父母は実際の両親を知っていて話さな
いのですが、AIDの場合は、養父母自身がそれを知らな
いので子どもは知るすべがありません。

そこで先ほどの20年以上前に外国で作られたTV番組です
が、生物学上の親を知りたいと思ったADIで生まれた
子どもたちが集まって会が作られ、中には実の親を探し
出した子どももいました。

また、その会のメンバー同士が、同じ父親の子であり、
生物学的にはきょうだいである、という事実が
わかったケースもあったようです。

その番組の最後のシーンは、暗く重い雰囲気のもの
でした。
なんとか自分の父・精子提供者を見つけ出した子ども
が父親の家を訪れたシーンです。

父親は驚きと戸惑いに襲われたに違いありません。
彼は、我が子に数十年ぶりに巡り会えた喜びに満ち
溢れているようには見えませんでした。

もっとも、それも無理のないこと、彼は好意で精子
の提供をしただけなのですから。
子どもの
側が望むような反応ができなくても、
彼を責めることはできないでしょう。

 

 

70年間で1〜2万人の子どもが誕生

結局、話は「AID」そのものについてになります。
先日、AIDで生まれた38歳になる女性のインタビューを
読みましたが、彼女の話す内容は全てがもっともと
思われ、私が疑問に感じていたことばかりでした。
(東洋経済ONLINE 2019年1月8日)

「父親は誰?『AID』で生まれた38歳女性の叫び」)

日本では慶應義塾大学病院で、すでに1949年から行われ
以来70年間で1〜2万人の子どもが生まれていると
いいます。

しかも正確な数は、国も日本産婦人科学会も把握して
いないということで、多くのAIDで生まれた子は、
生物学的父親がわからないケースが大半を占める
ようです。

 

 

 

遅れすぎている法整備

私が一番、疑問に思うことは、70年もの年月が過ぎて
いるというのに、いまだにAIDで生まれた子に関する
親子関係を明確に定める法律がないことです。

記事の中で、厚生労働省が生殖補助医療に関する法律
を作るための審議会での内容が出ていました。

医師を含む委員の誰一人として、 AIDで生まれた子の
その後について追跡調査をしておらず、「子どもは
秘密のままやっているが、それでうまくいっています」
というような意見を述べているそうです。

 

 

「この人たち、何を言っているんだろう」

それを読んだAIDで生まれた彼女は、「この人たち、何を
言っているんだろう」と医療のあり方に問題があると
思い、
「『(医者は)とにかく患者が妊娠して子どもが生まれ
れば成功』と思っているかもしれないですが、それは
違います。
生まれた後のことまで考えてくれたら、うちの状況も
もっと違ったかもしれません」と発言しています。

全くおっしゃる通りですが、「生まれた後のことまで
考えてくれたら」ではなく、「生まれた後のことまで
考えなくてはいけない」のではないのでしょうか、
本来は。

一人の人間がこの世に生まれという現実を考えること
なく、そのような技術が先走ることの方が大きな問題
だと、私には思えてなりません。

 

 

オーストラリアでは

なお、この記事のコメント欄にはオーストラリアでの
卵子提供を受ける場合のケースに関して説明があり
ました。

卵子提供を受ける際には、相手の何度か面接絵推し、
生まれて来る子どもに生物学的母の存在を教えるか、
子どもと対面する加藤を話し合うといいます。

また生まれて来る子どもに対する対応についても
親になる人はm事前に学んだり話し合ったり
という準備をするのだそうです。

 

 

 

技術の前に生まれる子どもの幸せは?

このシステムが最善というわけでもありませんし、
これをしたからといって問題がなくなるわけでは
ないでしょう。
ですが今の日本状態は、すでに70年も経っていて
このお粗末さは言葉になりません。

親ももちろんですが、何より生まれてくる子どもの
幸せを、傷つくことがより少なくなるような状態を
用意するのは大人として最低限のことのように
思えるのですが。

生殖技術の前に、子どもの心なのではないでしょうか?

 

 

「夫との絆強めるために」2002年1月30日(水)毎日新聞

私・主義 「自己責任」時代の暮らしかた 番外編

昨年夏、60歳の女性が国内最高齢で男児を生んだ。
愛する男性の子どもを欲しいと望み、
自分の責任で超高齢出産を選んだ。

「私・主義」の番外編として、生殖医療の進化、
女性の生き方をめぐる議論のきっかけに
なった女性に話を聞いた。(戸嶋誠司)

卵子提供を受け60歳で初産

出産したのは都内の公務員、影山百合子さん(60)=仮名。
在米日本人女性(28)の卵子と夫の制止を体外受精させ妊娠。
昨年7月、帝王切開で2558グラムの元気な男の子を産んだ。
黒髪のおかっぱ、意思の強そうな目が印象的な女性だ。

24歳年下と再婚
53歳の時に24歳年下の米国人男性と再婚した。
「年齢差を埋め、2人の絆を強めるために
子どもを産むことにこだわりました。
でないと相手が離れていくと思ったから。
男と女がうまくいくには努力が必要でしょ?
私にとってそれが子どもでした」
3歳で両親を亡くした。
価値観の違う前夫との生活は冷え切っていた。
子どもはおらず、痴呆の祖母の介護、脳卒中で
倒れた夫の世話が加わり「このまま老いるのか」
の味気ない生活だった。

今の夫と出会い、状況は一変する。
「この人の子どもがほしい」との思いに押されて、
夫に離婚を切り出した。

再婚後の98年秋、不妊治療をコーディネートする
卵子提供・代理母出産情報センター(東京)を訪れた。
閉経間近だったので、日本では認められていない
卵子提供を米国で受けることを決めた。

60歳出産への世間の偏見は怖くなかったのか。
影山さんは「他人に迷惑をかけないで自分の
責任で引き受けた。
人間として恥ずかしくない生き方をしてきたので
不安はありませんでした」と、明るく振り返る。

検査で骨密度が20代並みとわかった。
歯はすべて自前。
医者が驚くほどの健康体。
薄くなっていた子宮内膜は、ホルモン投与で
着床可能な厚さになった。
子宮筋腫を切除したあと、2回に分けて
受精卵8個を子宮に戻し、妊娠した。
つわりはほとんどなく、妊娠中毒症も軽かった。
出産日は夫の誕生日に合わせた。

「医者が取り上げた子どものほっぺを
私のほっぺにくっつけてくれた。
温かい肌、ぬるっとした感触で、
『子どもを産んだんだ』と実感しました」

出産が大きく報道されると、「将来子どもの養育
ができるのか」「無責任だ」と批判が噴出した。
だが、影山さんは不思議に思ったという。
「子どもは母親だけで育てるわけではないのに。
私に何かあっても、夫が子どもをみてくれる
見通しがあった。
夫が同じ世代か上だったら、こんな選択は
しなかったでしょう」

自分の選択をまったく後悔していない。
「60歳は単なる老人ではない。
妊娠にだって挑戦できるし、何かを成す
可能性が残っていることを示せた。
まだまだ捨てたもんじゃないですよ」

「女の子がほしい
昨年11月に、仕事に復帰した。
生後6ヶ月の長男は今、体重7キロ。
テレビが大好きで、最近離乳食を食べ始めたという。
「2人目?
まだ1、2年のうちなら可能でしょう。
できれば女の子がほしいですね。
半分冗談で、半分本気です」

____________________________
ファイル
卵子提供・代理母出産情報センター
同センターの紹介で米国で卵子提供を受け、
出産した人は128人。
うち50歳以上は17人、閉経後の人も40人。
卵子提供者への謝礼や体外受精費用など
総額400万〜500万円がかかる。
鷲見侑紀(すみ・ゆき)代表は「影山さんは特別
な例だが、条件さえクリアすれば50代出産は可能。
産む産まないは女性が決めるべきだ」という。

「ありがとう、赤ちゃんー60再発出産の物語ー」
光文社 影山さんが自分の生い立ちや出産までの
経緯を綴った手記。

____________________________

社会は議論不足

柘植あづみ明治学院大学助教授(医療人類学専攻)の話

子どもを産んだ気持ちは理解できるが、卵子提供
という先端技術を利用していいかは、別の問題だ。
今の社会で、将来、子どもが何を思うかなどの
議論が足りない。
不妊治療を続けても子どもをもてない人もいるし、
高齢出産は自分の命にもリスクがある。
出産をあきらめることによって、
次の人生が開くこともある。
あきらめられない気持ちの背景を、
社会はもっと考えるべきだ。

 

 

 

性別変更、この認知認めず 凍結精子出産「現行法と整合せず」東京家裁

東京新聞  2022年3月1日

 

性同一性障害で男性から性別変更した女性が、
自分の凍結精子でパートナーの女性との間に
生まれた子と法的な親子となるための認知を
巡る訴訟で、東京家裁(小河原寧裁判長)は
28日、『法律上の親子関係を認めることは
現行法と整合しない』と認知を認めない
判決を言い渡した。

カップルは東京都の40代女性と、パートナー
の30代女性。40代女性が性別適合手術前に
凍結保存した精子を使い、39代女性が2018年
に長女、20年に次女を出産した。
40代女性は18年に戸籍上の性別を変更した。

判決は、親子関係は血縁上と法律上で
「必ずしも同義ではない」と指摘。
婚外子を父または母が認知できるとする民法
の条文は「『父』は男性、『母』は女性が
前提」とし、法律上の女性は「父」と認めら
れないと判断した。
懐胎、出産しておらず、「母」にも当たらない
とした。

女性側は認知届を出したが、自治体に受理さ
れず、子ども2人を原告として40代女性に
認知を求めていた。
原告側は控訴の方針。
別に、国を相手に親子関係の確認を求める
訴訟を起こし、東京地裁で審理中。

「実際に育て、生物学的にもつながって
いるのに、矛盾感じる」

1歳の次女とともに法廷で判決を聞いた40代女性。
判決後の記者会見で「親子関係がないと言われ
つらいし、残念に思う。
実際に育てていて、生物学的にもつながっている
のに、矛盾を感じる」と無念の思いを語った。
経済や福祉面で子に不利益になることが不安だと
いい、「裁判を続けたい。子どもが生きやすい
社会にしたい」と話した。

子どもたちは、女性二人をともに「ママ」
と呼んでいるという。
代理人の仲岡しゅん弁護士は、判決が母子関係の
根拠を出産としたことに「生殖補助医療もなく、
性同一性障害も認められていない大昔の最高裁
判決を引っ張ってきた。
家族関係は多様化しているのに硬直的な思考だ」
と批判。
男性ではないから「父」ではないという判断にも、
子が成人後に性別変更すれば女性が「父」、男性
が「母」となる実態を挙げ「未成年では認めない
合理的な理由はあるのか」と疑問を投げかけた。
松田真紀弁護士は「法律という多数決で決まる
ルールから取りこぼされる人を救うのが司法の役割。
少数者は誰に助けを求めればよいのか」と指摘
した。(小嶋麻友美)

 

子の福祉に触れず問題

渡邉泰彦・京都産業大教授(家族法)の話
子どもが親を求めた裁判なのに、判決が子の
福祉に触れていないのは問題。
戸籍に親として記載されず、子どもの
「出自を知る権利」も保障されないことになる。
法律上の「父」とは何かという論点にも
踏み込んでいない。
性別と親の分離について、きちんと議論すべき
だった。

 

 

 

au Webポータル 2022年2月28日

(弁護士ドットコム)

判決などによると、男性として生まれたが
性同一性障害を有していたため、性別適合
手術を受け、戸籍上の性別を女性に変更。
凍結保存していた精子をパートナーの女性
に提供し、2人の子をもうけたが、自治体
が認知届を受理しなかったため、2021年
6月に提訴していた。

判決後に開かれた会見で、性別変更した
Aさん(40代)は、「裁判の場で認めてもら
えず悲しく思う。(カップルで)子を産み
育てていて、生物学的に親子関係があるのに、
このような判断が出ることに矛盾を感じた」
と話した。

 

家裁「母子関係は懐胎・分娩によって生じる」

この日の判決は、Aさんのパートナー・Bさん
(30代)が2人の子どもを代理した原告として、
Aさんを被告とする「認知の訴え」に関する
もので、利害が完全に一致しているカップル
が原告と被告になる異例の裁判だった。

現状、子どもらの身に何かあっても、Aさん
は保護者として扱われない中、Aさんと子ども
らとの生物学上(血縁上)の親子関係がある
ことから、認知を求めていた。

東京家裁は、「親子関係は認めない」との
結論を下した。
主な理由として、女性が父親として子を認知
することはできないことと、母子関係は懐胎・
分娩によって生じるので、懐胎・分娩していな
い者には親子関係が生じていないことを挙げた。

その上で、「法律上の親子関係は民法における
身分法秩序の中核をなすもの」と指摘。
「多数の関係者の利害にかかわる社会一般の
関心事でもあるという意味で、公益的な性質
を有しており、当事者間の自由な処分が認め
られるものではない」として、「血縁上の父
が子の父となることを争っていないからとい
って、このことからただちに法律上の親子関
係を成立させて良いことにもならない」と判断した。

 

「戸籍上、女性である父や男性である母
はすでに存在する」

判決後の会見で、原告ら代理人の仲岡しゅん
弁護士は、「不当だ」と判決を批判した。

「女性である父や男性である母を認められない
という判断を下したことになるが、日本の法律
のどこにもそんな規定はありません。

むしろ、(性別変更の要件などを定める)性
同一性障害特例法では、性別変更する際に、
子が成人している場合だと、女性に変わっても
戸籍上は父のままですし、男性に変わっても
戸籍上は母のままです。
戸籍の記載上、女性である父や男性である
母はすでに存在しています。

今回は子どもが未成年のケースですが、あえて
(女性である父や男性である母を)認めない
合理的理由はあるのでしょうか。
私はないと考えています」(仲岡弁護士)

また、母子関係が懐胎・分娩によって生じる
との判断は「昔の判決を引っ張ってきた」と
話し、性同一性障害が認識され、生殖医療も
発達している現在とは「時代が違う」と指摘した。

「発達した生殖医療によって、懐胎・分娩に
よらずに子が生じることもあります。
家族関係が多様化している中、そういった
実態を認めずに、硬直的な思考で懐胎・分娩
によって生じると判断したわけですが、
間違っていると思います」(仲岡弁護士)

子どもを抱えながら会見にのぞんだAさんは、
「凍結精子だと認めないというのは時代錯誤
なのでは」と疑問の声をあげた。

「親子関係がないと言われ続けるのは辛いです。
ここで諦めるつもりはありません。
最終的には(親子関係を)認めてもらいたい
と思っています。
なかなか当事者でないと理解が難しいかもしれ
ませんが、こういう存在もいるのだということ
を社会にも認知してもらいたいです」(Aさん)

仲岡弁護士は、「認められないなら最高裁まで
争う」と話し、上訴する意向を示した。

 

 

朝日新聞D IGITAL 2022年2月28日

男性から性別を変えたトランスジェンダーの
女性と、自身の凍結精子を使って生まれた
子どもとの間に「親子関係」は認められるか――。
この点が争われた訴訟の判決が28日、東京家裁
であった。
小河原寧裁判長は「法律上の親子関係を認める
のは現行の法制度と整合しない」と述べ、
親子関係を認めずに請求を棄却した。

同性カップルの婚姻は法律で認められておらず、
40代女性と子どもは血縁関係がありながら
法律上の親子関係がない。
子どもを産んだパートナーのみ法的な親子関
係がある状態だった。

裁判では、原告の子ども2人が被告の40代女性
に対し親子の認知を求め、40代女性も親である
ことに合意していた。
判決が訴えを認めれば同性同士の親が誕生する
ことになり、司法判断が注目されていた。

訴状によると、40代女性の凍結精子を使い、
事実婚状態のパートナーの女性が2018年に
長女を出産。
40代女性はその後、性同一性障害特例法に
基づき性別を男性から女性に変更し、20年
には再び凍結精子を使って次女も生まれた。

民法は、婚姻関係にない男女の間に生まれた
子について「父または母が認知できる」と
定めており、40代女性は性別変更後、自身を
子どもの父とする認知届を自治体側に提出。
だが、「認知は無効」として受理されなかった。

 

 

 

両親の死から4年後に赤ちゃん誕生(中国)

ある代理母が昨年12月、4年前に自動車事故で亡くなった
カップルが生前に冷凍保存していた受精卵を使い、
男の赤ちゃんを出産したことを中国メディアが伝えた。
(2018年4月12日 BBC News  JAPAN)

2013年に亡くなったカップルは、体外受精で子供を
授かろうと、いくつかの受精卵を冷凍保存していた。

カップルが自動車事故で亡くなったあと、2人の
両親たちはその受精卵が使われることが許可されるよう、
長期にわたって法廷闘争を戦った。

赤ちゃんは12月にラオス人の代理母から生まれ、
新京報が今週、一連の出来事を報じた。

新京報は記事でこの出産をめぐり、この種の出来事に
対する先例がなかったことが、代理母が無事出産
する前にカップルの両親に法的な地雷原を歩ませる
ことを強いた、と解説した。

 

前例なし

自動車事故当時、受精卵は液体窒素タンクの中で
マイナス196度に凍らされ、南京病院で安全に
保存されていた。

法廷闘争を経て、カップルの4人の両親は受精卵に
関する権利を手に入れた。

新京報によると、この4人が自らの子供が冷凍保存
した受精卵を譲り受ける権利を持つかどうかに
関する前例は存在しなかったという。

結果的に4人は受精卵を譲り受けたものの、次の
問題が起こるまでにそう長い時間はかからなかった。

受精卵を南京病院から移動させるには、受け入れ先
の病院が決まっている必要があった。

しかし、未移植の受精卵に関する法的な不確実性を
考慮すると、この件に関わることに前向きな
医療機関を中国で見つけるのは難しかった。

また、代理出産は中国では違法なことから、唯一の
現実的な選択肢は国外に目を向けることだった。

 

親子関係と国籍の証明

最終的に、生まれてくる赤ちゃんの祖父母となる
4人は仲介会社と協力し、ラオスで代理出産を
行うことに決めた。

ラオスでは商業的代理出産が合法となっている。

魔法瓶ほどの液体窒素ボトルを進んで受け入れる
航空会社がなかったため、ボトルは車で運ばれた。

受精卵はラオスで代理母の子宮に移植され、
2017年12月、男の子が誕生した。

子供は甜甜と名づけられた。甜甜はラオスでは
なく中国で生まれたため、その市民権が
問題となった。

ラオス人の代理母は、普通の観光ビザで
中国に来ているだけだ。

親子関係を証明する両親が残っていないため、
4人の祖父母は全員、血液を提供しDNA検査を
受けることで、この赤ちゃんが本当に4人の
孫で、両親が中国国籍を持っていたことを
立証しようとしている。

赤ちゃんの祖父は、血筋がつながり続ける
ことに興奮していると語った。

(英語記事 Chinese baby born four years after parents’ death)

 

 

 

不妊治療で生まれた双子は、別の夫婦の子どもだった

体外受精で別の夫婦の子を妊娠

アメリカ、カリフォルニア州で、不妊治療クリニック
で体外受精(IVF)をしたアジア人カップルが、双子
を妊娠しました。

 

しかし2019年3月30日に生まれた子どもたちは、
とてもアジア系とは見えない赤ちゃんでした。
カップルは衝撃を受ます。

 

医師のミスにより、自分たちとは無関係の子ども
を妊娠、出産したとして、このアジア人カップルは
クリニック「CHAファーテリティ(Fertility)」と
共同経営者らの男性2人を相手取って、ニューヨー
ク州で訴訟を起こしました。

 

 

 

 

赤ちゃんの1人は同クリニックで治療していた夫婦の遺伝子と判明

2回目の不妊治療で双子を人したカップルは
妊娠中、それぞれの遺伝素材を使って赤ちゃん
ができたと、医師から説明を受けていました。

 

しかし、DNA鑑定の結果、赤ちゃんは2人とも
カップルとは遺伝的なつながりがないことが
判明します。
同じクリニックで治療を受けていた別の夫婦
の遺伝子を持っていることがわかりました。

 

赤ちゃん同士にも、つながりは見られないと
いうことですので、双子の赤ちゃんの1人が
その夫婦の子どもということなのでしょうか?
報道ではわかりかねますが。

 

カップルは赤ちゃんの親権を放棄したという
ことです。

 

 

 

 

クリニックを提訴

彼らは、クリニックについて、医療過誤を犯し、
恋に精神的苦痛を与えた責任があると主張。
「CHAファーテリティ(Fertility)」は、ウェブ
サイトで、「個人に合わせた最高レベルの治療
(中略)最大の職業意識を持って提供する」と
しています。

 

クリニック側は、この訴えに対してコメントは
出していません。

 

カップルの弁護士は、BBCに対し、
「カップルは、CHAファーテリティ(Fertility)
のあまりに怠慢で向こう見ずな行為によって
被害を受けた」
「この訴訟の目的は、依頼人の損失を保証させ、
こうした悲劇が二度と繰り返されないようにする
ことだ」
と話しました。

 

 

 

 

妊娠中から不審なことが

不妊治療に10万ドル(約1090万円)以上を費やした
といいますが、赤ちゃんが生まれる前から、おかし
な点があったとカップルは言っています。

 

妊娠中のスキャン検診では、赤ちゃんは男の子だと
言われましたが、治療中に医師たちは、男性の胚
は使っていないと話していたのです。

 

同クリニックでは、去年の初めにこのカップル
から精子と卵子を採取し、生倍数体の胚を5個
形成しましたが、そのうちの4個は性別が女性
だったのです。

 

そこでカップルは、クリニックの経営者の1人に
連絡を取ります。

 

するとその共同経営者は、
「自分の妻も妊娠時に、男の子だと告げられて
いたが、出産したら女の子だった」
と言い、超音波検診の結果は不正確だとして、
そのまま続行したということです。

 

そして3月に出産すると、超音波検査通りに
双子はどちらも男の子で、人種も両親とは
異なったものでした。

 

またカップルは、自分たちから採取された
2つの胚が、どうなったのかも知らされて
いないということです。

 

 

 

 

赤ちゃんの親権を放棄したカップル

この報道では、カップルが赤ちゃんの親権を放棄
した、ということまでしかわかりませんが、2人
の赤ちゃんは誰が親になり、育てることになる
のでしょう?

 

1人は、同じクリニックの別の夫婦の子どもだと
いうことが遺伝的にわかったようですが、それで
はやはり、不妊治療をしていたと思しき彼らは、
大喜びで自分たちの遺伝子を持ったその赤ちゃん
を引き取って育てるのでしょうか?

 

また、もう1人の赤ちゃんのことに関してはわかり
ませんが、いずれにせよ、出産した「母親」は
親であることを放棄したのです。

 

 

 

 

最大の被害者は「子ども」

このアジア人カップルが被害者であるということ
にはもちろん異論はありませんが、私はこれらに
関連する記事にはいつも申し上げているように、
生命の操作をしてしまうことに、大きな疑問を
感じます。

 

命を人間が操作するということは、このような
ことが起きた時に、取り返しのつかないことが
生じてしまうことでもあります。

 

そしてその時の最大の被害者は、もちろんいう
までもなく子ども自身。
その子どもは、自分の命の操作をすることに
関して承諾も反対もできない立場であるという
当たり前のことが、大きく抜け落ちていること
に憤りを感じざるを得ません。

2人の赤ちゃんの幸せを願いつつ……

 

同性婚をした息子のために、61歳女性が代理出産 アメリカ

同性婚をした息子のために

2019年3月25日、61歳のアメリカ人女性が、同性婚を
した息子とそのパートナーのために代理出産をしました。
2019年4月3日の「BBC News JAPAN」からです。

 

アメリカ、ネブラスカ州のセシル・エレッジさんは、
息子のマシュー・エレッジさんと、彼のパートナー
であるエリオット・ドーティさんの子どもを出産
しました。

 

生まれたのは女の子。
ウーマ・ルイーズちゃんと名づけられたマシューさん
とエリオットさんの娘は、セシルさんの孫娘でもあり、
セシルさんの子どもでもあります。

 

 

 

冗談でしょ?

息子のマシューさんとエリオットさんが、家族を持ち
たいと母親のセシルさんに話した時、彼女は自ら代理
出産を申し出たということです。

 

しかし2人は笑うだけでした。
当時59歳だったセシルさんの提案は、一種の冗談と
しか受け止められず、現実的なものとは考えられな
かったのです。

 

しかし、自分のことよりも他者を大切にする彼女に
対して、エリオットさんは、
「本当に美しい思いやりだと思いました」といいます。

 

 

左がマシュー・エレッジさん
ウーマ・ルイーズちゃんを抱くセシル・エレッジさん
右がマシューさんのパートナーエリオット・ドティーさん

 

 

 

冗談が現実に

ところが、セシルさんと同じ州に住むマシューさん
とエリオットさんは、子どもをもつ選択肢を探して
いるなかで、セシルさんの提案もありえるかもしれ
ない、と不妊治療専門医から告げられたのです。

 

問診と一連の検査後、セシルさんは代理出産が可能
との診断をされました。

 

「私は非常に健康志向なので、赤ちゃんを妊娠できる
はずだと、全く疑っていませんでした」
子どもは、マシューさんの精子と、エリオットさんの
妹であるレア・イリブさんの卵子を使って、体外受精
で誕生しました。

 

美容師のエリオットさんは、異性カップルにとって
は体外受精というのは、最後の手段かもしれないが、
自分たちにとっては、血のつながった子どもをもつ
ための「唯一の望み」だったと述べました。

 

公立学校教師のマシューさんは、
「これについては、自分たち独自のやり方、枠に
とらわれない方法が必要だと、最初から承知して
いたので」
と付け加えます。

 

 

 

妊娠検査薬は「陰性」?「陽性」?

受精卵の移植が成功したかを確認するため、
セシルさんは妊娠検査薬を使いました。

 

「ダメだと言われていたけれど、息子たちは
待ちきれない様子だった」
というセシルさんは、検査薬の判定が「陰性」
だったことに愕然とします。

 

母親を慰めに訪ねてきた息子のマシューさんが
検査薬を見てみると、「陽性」を示すピンク色
の線が出ていたのです。

 

セシルさんは、自分の視力がいかに衰えている
笑いながら、
「本当に嬉しい瞬間だった」
と語ります。

 

息子のマシューさんとエリオットさんは、
「ママは何も見えないけど、出産はできる」
と笑いながら言ったといいます。

 

 

左から
エリオットさんの妹で卵子提供者のレア・イリブさん
エリオット・ドーティーさん
マシューさんの母のセシル・エレッジ
精子提供をしたマシュー・エレッジ

遺伝的には両端の男女が父母で、
右から2人目の女性が代理出産し、
2人の男性が育ての親となる

 

 

 

残る差別

セシルさんの妊娠に対して、家族全員、特に
マシューさんのきょうだい2人は、前向き
でした。

 

「どういうことかみんなが理解してからは、
全面的に応援してくれました」
と語るセシルさんですが、今回の妊娠により、
ネブラスカ州の性的少数者(LGBT)家族が
どういう差別を受けるかということも、浮き
彫りになりました。

 

ネブラスカ州では、同性愛者の結婚は、
2015年の最高裁判決以降、合法ですが、
性的指向に基づく差別を禁止する州法は
存在しません。

 

2017年までは、ゲイ取れずビアンが里親になる
ことを禁止する数十年前の州法を適用し続けて
いました。

 

 

 

医療費の払い戻しも受けられず

その上、セシルさんが出産したのが自分の子ども
だった場合には支給されたはずの医療費の払い戻し
を、保険会社は認めませんでした。

 

セシルさんは、保険会社と争いましたが認められ
ませんでした。

 

赤ちゃんを出産する人物を母と定める法律により、
出産証明書には母セシルさんと、息子のマシュー
さんの名前は記載されていますが、エリオットさん
の名前は除外されています。

 

「本当にたくさんのことが障害になるかもしれず、
これは本当にごくごくわずかな一例に過ぎない」
とセシルさんは言います。

 

 

 

宿場を追われたマシューさん

マシューさんは4年前、当時勤めていたオマハに
あるスカット・カトリック高校にドーティさんと
結婚する予定だと伝え解雇され、大きく報じられ
たことがありました。

 

学校側の対応は、地元で激しい抗議を巻き起こし、
保護者や卒業生、在校生が、
「マシューさんと将来の教員に対する雇用差別を
終わらせる」ようも止めるオンライン申し立てを
作成すると、10万3000人近くの支持が得ました。

 

典型的な一般家庭だというセシルさんの家族は、
LGBTの人々や家族に対する「憎悪」に対抗する
ために、家族の経験談を共有し、「そこには常に
希望がある」と伝えました。

 

 

 

「何もかも、なるなるべくして……」

マシューさんと家族に対する否定的な反応について
「個人的に受け止めないようにすることを学んで
きた」
といい、

 

「結局のところ、私たちには家族がいて、友人が
いて、私たちを支えてくれる巨大なコミュニティが
ある」
「この小さな女の子を、本当に大勢の人が応援して
くれています。
愛情あふれる家族に囲まれて成長します。
何もかも、なるべくしてこうなりました」
と語りました。

 

 

 

 

男性医師が無断で自分の精子を使い49人の子どもを誕生させていた

患者に無断で自分の精子を使った医師

オランダの不妊クリニックの男性医師が、患者に
無断で自分の精子を使って体外受精をしていた
ことが判明したというニュースを、2019年4月15日
の「BBC News JAPAN」からお伝えします。

 

4月12日に公表されたDNA鑑定の結果で明らか
になったもので、親子関係にあることが判明
した子どもの数はなんと49人ということです。

 

オランダ、ロッテルダム近郊のブレイドルプ
で不妊治療クリニックの院長だったヤン・
カールバートさんに、2017年、ドナーの精子
ではなく、自分の精子を使って体外受精を
していた疑いが浮上。

 

体外受精で生まれた子どもと、その親が
DNA鑑定を求める訴えを起こしました。

 

 

 

自称「不妊治療界のパイオニア」

体外受精で生まれた子どもの中には、青い色
の目のドナーから精子提供を受けたのに
茶色の目をしている子どもがいたり、また外見
自体がカールバート医師によく似ている子
どもも含まれています。

 

クリニックは、カールバート医師がデータや
分析結果、ドナー情報を改ざんしたほか、
ドナー1人当たり子どもは6人までと定めら
れている人数を超えて体外受精を行なって
いた疑惑が浮上するなか、2009年に閉鎖し
ています。

 

カールバート医師は、その8年後の2017年
4月に89歳で死亡していますが、彼は自ら
を「不妊治療界のパイオニア」と呼んで
いたということです。

 

 

 

真実が明らかになって嬉しい

49人の子どもの一人、ジョーイさんは、
「11年間父親を探し続けて、私は人生を
継続することができる。
ようやく真実が明らかになって嬉しい」
と述べます。

 

(話はちょっと外れてしまうのですが、
上記のジョーイさんの言葉は英文では
こうなっています。

“It means that there is finally clarity
for the children who are matched,”

「BBC News JAPAN」はとても興味深い
話題を取り上げてくれるのですが、
日本語訳が少々……、というところが
あって残念です)

 

49人の子どもの代理人を務めたティム・ビュー
ターズ弁護士は、DNA検査の結果に満足して
いると語りました。

 

 

 

生前、カールバート医師はDNA鑑定を拒否

地元メディアによりますと、オランダの裁判所は
2017年、この疑惑に関する訴訟の結論が出るまで
は結果を公開しないことを条件に、DNA鑑定の
実施を認めたということです。

 

カールバート医師の死去後、自宅からDNAが
押収されました。

 

カールバート医師の遺族の弁護団は、DNA
鑑定の実施に反対していました。
カールバート医師は、生前DNA鑑定を拒否
していました。

 

カールバート医師がDNA鑑定を拒否していた
ということですが、彼のように精子を操作でき
る立場にあり、かつかなり信憑性のある疑惑
が浮上している時にも、拒否できるのですね。
私にはちょっと意外でした。

 

 

 

裁判所がDNA鑑定結果を開示するように命令

AFP通信によりますと、2017年5月にカール
バート医師の息子が提出したDNAについては
体外受精で誕生した19人の子どもと、生物学
的な関係があることがわかっていて、カール
バート医師が父親である可能性が指摘されて
いました。

 

ロッテルダムの地方裁判所は、今年の2月、
DNA鑑定の結果を開示するよう命じました。

 

法律事務所のレックス・アドヴォケート
(Rex Advocate)が、サイトに掲載した声明
によりますと、鑑定結果は、
「カールバート氏が、自分の精子を体外受精
に使っていたという深刻な疑惑」
を解明するものだということです。

 

夫婦の受精卵を、夫に無断で移植して出産した子に親子関係を認める判決

夫婦の受精卵を、夫に無断で移植して出産

凍結保存をしていた夫婦の受精卵を、妻が別居中の
夫に無断で移植して出産し、夫が子どもとは法律上
の親子関係がないと訴えた裁判の判決が、最高裁判所
で出ました。

 

最高裁の判決は、男性の上告を退ける決定で、親子
関係を認めた判決が確定。

 

奈良県内に住む40代の元夫だった男性は、別居して
いた妻が、クリニックに凍結保存されていた受精卵
を無断で移植して出産した2人目の子どもについて
「同意のない出産で、法律上の親子関係はない」
と、離婚した後に訴えていたものです。

 

 

 

 

別居中に、夫に無断で受精卵で出産

判決などによりますと、男性と元妻は2009(平成21)
年から不妊治療を始め、奈良市の婦人科クリニックで
体外受精で作った複数の受精卵を凍結保存しました。

 

2011(平成23)年に、受精卵の移植で長男が誕生し
ますが、2013(平成25)年に夫婦は別居。
元妻は、2014(平成26)年に、男性に無断で残って
いる受精卵を移植し、2015(平成27)年に長女を出産
し翌年、2016(平成28)年に夫婦は離婚しました。

 

民法には、婚姻中に妻が懐胎した子どもは法律上、
夫の子とするとした「嫡出推定」という規定があり
ますが、裁判では夫に無断で受精卵を移植したこと
について、この規定が及ばない事情と言えるか否か
が争われました。

 

 

 

1審「夫婦の実態があったとして父子関係を認める」

2017(平成29)年12月の1審、奈良家裁判決では、
体外受精などの生殖補助医療では、
「夫が妻との間に子どもを設けることに同意して
いることが必要」
との判断を示す一方、夫婦の実態があったとして
父子関係を認めました。

 

 

 

2審「嫡出推定の規定からも、男性の子と推定される」

2018(平成30)年2審の大阪高等裁判所の判決は、
「男性は別居中も長男の世話で妻の家を訪れる
などしており、明らかに夫婦の実態が失われて
いたとまでは言えない」と指摘。

 

妻が婚姻中に妊娠した子は夫の子と推定する民法
の「嫡出推定」の規定から、長女は男性の子と
推定されるとしてうえで、そもそも訴えが却下
されるため、
「同意が必要かどうかは判断の必要がない」とし、
「同意がないことは子の身分の安定を保つ必要が
なくなる理由にならず、民法の規定が及ばない特段
の事情とはいえない」と指摘し、1審に続いて法律
上の親子関係を認めていました。

 

 

 

 

最高裁、受精卵の移植に夫の同意が必要かについては判断せず

これに対して元夫だった男性は上告していましたが、
最高裁判所第2小法廷の三浦守裁判長は、7日までに
上告を退ける決定を出し、親子関係を認める判決が
確定し、受精卵の移植に、夫の同意が必要かについ
ては判断しなかったということです。

 

どう考えても生物学的な親子関係は存在するでしょう
から、あくまでも法律上の父子関係ということになります
が、ここに書かれている限りにおいては、父子関係が
存在しないというのは難しいことのように思えます。

 

ただ、それが1審、2審でいうような「夫婦の実態が
あったから」という理由は、少々疑問を感じます。
離婚した夫婦でも、できる限り子どもとの関わり等の
責任をとることは当たり前であり、罵り合ったりせず
スムーズにそれが行われるのが望ましいところ。
それを「夫婦の実態があった」という言葉で表現する
ことには抵抗がないわけでもありません。

 

 

 

いくつかの違和感

また、妻はなぜ離婚するつもりで別居中の夫の子を
妊娠したいと思ったのかも不思議です。
「長男と両親が同じきょうだい」を生んであげた
かったからなのでしょうか?

 

しかし、最も私が感じる違和感は、今回の問題とは
離れてしまいますが、やはり生命を操作するという
根本的な事柄についてです。

 

今回の裁判で訴えているのは(被害者)は元夫で、
彼が訴えている相手(加害者)は元妻。
裁判で、夫の主張は認められなかったのですから
被害者、加害者という線引きはぼやけました。

 

 

 

 

真の被害者、本当に考えてあげなければいけないのは子ども

しかし、この裁判で本当の被害者は、受精卵に
よって誕生した子どもではないかと私は思います。
自分がこの世に誕生した経過を、生物学上の父が
認めず「法律上の親子関係はない」と1審、2審、
最高裁まで争ったのです。

 

裁判では、夫に無断で受精卵を移植したことが、
嫡出推定の規定が及ばない事情かどうかを争った
ようです。

 

確かに、法的にそれは重要なことに違いありま
せんが、生まれた子どもにとって問題はそれでは
ありません。

 

現在はまだ幼い子どもですが、この事実を知った
時にどのような傷を心に抱え込んでしまうのか
ため息が出る思いです。

 

 

生命を「操作」するということ

体外で受精卵を作り、凍結して保存し移植するという
生命操作を人間がしてしまう傲慢さ。

 

以前、このブログでもお伝えしましたが、自分の精子
を使って患者さんに子どもを数十人も産ませていた
医師がいたりするなど、このような問題は残念ながら
必ず起きてしまうことでしょう。

 

また、体外受精で生まれた子どもが苦しんでいる
現状もお伝えしたことがありました。

 

病院でも裁判でも、子どもを持ちたいという両親、
大人のために物事が進んでいます。

 

肝心の生まれてくる子どものことは一体、誰が
本気で考えてくれるのでしょう?
責任を持っていくれるのでしょうか?