性別変更、この認知認めず 凍結精子出産「現行法と整合せず」東京家裁

東京新聞  2022年3月1日

 

性同一性障害で男性から性別変更した女性が、
自分の凍結精子でパートナーの女性との間に
生まれた子と法的な親子となるための認知を
巡る訴訟で、東京家裁(小河原寧裁判長)は
28日、『法律上の親子関係を認めることは
現行法と整合しない』と認知を認めない
判決を言い渡した。

カップルは東京都の40代女性と、パートナー
の30代女性。40代女性が性別適合手術前に
凍結保存した精子を使い、39代女性が2018年
に長女、20年に次女を出産した。
40代女性は18年に戸籍上の性別を変更した。

判決は、親子関係は血縁上と法律上で
「必ずしも同義ではない」と指摘。
婚外子を父または母が認知できるとする民法
の条文は「『父』は男性、『母』は女性が
前提」とし、法律上の女性は「父」と認めら
れないと判断した。
懐胎、出産しておらず、「母」にも当たらない
とした。

女性側は認知届を出したが、自治体に受理さ
れず、子ども2人を原告として40代女性に
認知を求めていた。
原告側は控訴の方針。
別に、国を相手に親子関係の確認を求める
訴訟を起こし、東京地裁で審理中。

「実際に育て、生物学的にもつながって
いるのに、矛盾感じる」

1歳の次女とともに法廷で判決を聞いた40代女性。
判決後の記者会見で「親子関係がないと言われ
つらいし、残念に思う。
実際に育てていて、生物学的にもつながっている
のに、矛盾を感じる」と無念の思いを語った。
経済や福祉面で子に不利益になることが不安だと
いい、「裁判を続けたい。子どもが生きやすい
社会にしたい」と話した。

子どもたちは、女性二人をともに「ママ」
と呼んでいるという。
代理人の仲岡しゅん弁護士は、判決が母子関係の
根拠を出産としたことに「生殖補助医療もなく、
性同一性障害も認められていない大昔の最高裁
判決を引っ張ってきた。
家族関係は多様化しているのに硬直的な思考だ」
と批判。
男性ではないから「父」ではないという判断にも、
子が成人後に性別変更すれば女性が「父」、男性
が「母」となる実態を挙げ「未成年では認めない
合理的な理由はあるのか」と疑問を投げかけた。
松田真紀弁護士は「法律という多数決で決まる
ルールから取りこぼされる人を救うのが司法の役割。
少数者は誰に助けを求めればよいのか」と指摘
した。(小嶋麻友美)

 

子の福祉に触れず問題

渡邉泰彦・京都産業大教授(家族法)の話
子どもが親を求めた裁判なのに、判決が子の
福祉に触れていないのは問題。
戸籍に親として記載されず、子どもの
「出自を知る権利」も保障されないことになる。
法律上の「父」とは何かという論点にも
踏み込んでいない。
性別と親の分離について、きちんと議論すべき
だった。

 

 

 

au Webポータル 2022年2月28日

(弁護士ドットコム)

判決などによると、男性として生まれたが
性同一性障害を有していたため、性別適合
手術を受け、戸籍上の性別を女性に変更。
凍結保存していた精子をパートナーの女性
に提供し、2人の子をもうけたが、自治体
が認知届を受理しなかったため、2021年
6月に提訴していた。

判決後に開かれた会見で、性別変更した
Aさん(40代)は、「裁判の場で認めてもら
えず悲しく思う。(カップルで)子を産み
育てていて、生物学的に親子関係があるのに、
このような判断が出ることに矛盾を感じた」
と話した。

 

家裁「母子関係は懐胎・分娩によって生じる」

この日の判決は、Aさんのパートナー・Bさん
(30代)が2人の子どもを代理した原告として、
Aさんを被告とする「認知の訴え」に関する
もので、利害が完全に一致しているカップル
が原告と被告になる異例の裁判だった。

現状、子どもらの身に何かあっても、Aさん
は保護者として扱われない中、Aさんと子ども
らとの生物学上(血縁上)の親子関係がある
ことから、認知を求めていた。

東京家裁は、「親子関係は認めない」との
結論を下した。
主な理由として、女性が父親として子を認知
することはできないことと、母子関係は懐胎・
分娩によって生じるので、懐胎・分娩していな
い者には親子関係が生じていないことを挙げた。

その上で、「法律上の親子関係は民法における
身分法秩序の中核をなすもの」と指摘。
「多数の関係者の利害にかかわる社会一般の
関心事でもあるという意味で、公益的な性質
を有しており、当事者間の自由な処分が認め
られるものではない」として、「血縁上の父
が子の父となることを争っていないからとい
って、このことからただちに法律上の親子関
係を成立させて良いことにもならない」と判断した。

 

「戸籍上、女性である父や男性である母
はすでに存在する」

判決後の会見で、原告ら代理人の仲岡しゅん
弁護士は、「不当だ」と判決を批判した。

「女性である父や男性である母を認められない
という判断を下したことになるが、日本の法律
のどこにもそんな規定はありません。

むしろ、(性別変更の要件などを定める)性
同一性障害特例法では、性別変更する際に、
子が成人している場合だと、女性に変わっても
戸籍上は父のままですし、男性に変わっても
戸籍上は母のままです。
戸籍の記載上、女性である父や男性である
母はすでに存在しています。

今回は子どもが未成年のケースですが、あえて
(女性である父や男性である母を)認めない
合理的理由はあるのでしょうか。
私はないと考えています」(仲岡弁護士)

また、母子関係が懐胎・分娩によって生じる
との判断は「昔の判決を引っ張ってきた」と
話し、性同一性障害が認識され、生殖医療も
発達している現在とは「時代が違う」と指摘した。

「発達した生殖医療によって、懐胎・分娩に
よらずに子が生じることもあります。
家族関係が多様化している中、そういった
実態を認めずに、硬直的な思考で懐胎・分娩
によって生じると判断したわけですが、
間違っていると思います」(仲岡弁護士)

子どもを抱えながら会見にのぞんだAさんは、
「凍結精子だと認めないというのは時代錯誤
なのでは」と疑問の声をあげた。

「親子関係がないと言われ続けるのは辛いです。
ここで諦めるつもりはありません。
最終的には(親子関係を)認めてもらいたい
と思っています。
なかなか当事者でないと理解が難しいかもしれ
ませんが、こういう存在もいるのだということ
を社会にも認知してもらいたいです」(Aさん)

仲岡弁護士は、「認められないなら最高裁まで
争う」と話し、上訴する意向を示した。

 

 

朝日新聞D IGITAL 2022年2月28日

男性から性別を変えたトランスジェンダーの
女性と、自身の凍結精子を使って生まれた
子どもとの間に「親子関係」は認められるか――。
この点が争われた訴訟の判決が28日、東京家裁
であった。
小河原寧裁判長は「法律上の親子関係を認める
のは現行の法制度と整合しない」と述べ、
親子関係を認めずに請求を棄却した。

同性カップルの婚姻は法律で認められておらず、
40代女性と子どもは血縁関係がありながら
法律上の親子関係がない。
子どもを産んだパートナーのみ法的な親子関
係がある状態だった。

裁判では、原告の子ども2人が被告の40代女性
に対し親子の認知を求め、40代女性も親である
ことに合意していた。
判決が訴えを認めれば同性同士の親が誕生する
ことになり、司法判断が注目されていた。

訴状によると、40代女性の凍結精子を使い、
事実婚状態のパートナーの女性が2018年に
長女を出産。
40代女性はその後、性同一性障害特例法に
基づき性別を男性から女性に変更し、20年
には再び凍結精子を使って次女も生まれた。

民法は、婚姻関係にない男女の間に生まれた
子について「父または母が認知できる」と
定めており、40代女性は性別変更後、自身を
子どもの父とする認知届を自治体側に提出。
だが、「認知は無効」として受理されなかった。

 

 

 

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