離婚した男性の自殺率の多さ

妻を亡くした夫はガクッと寂しそうに見えるのに対して
夫と亡くした妻はそうでもない、どころか以前より元気
なのでは?、なんて思えることが結構ありますね。
今回は、離婚した男性の自殺の多さに関しての分析を
2019年2月18日の「東洋経済 ONLINE」から御紹介します。
「離婚した男性」の自殺はなぜこんなに多いのか」
書き手は独身研究家の荒川和久さんです。

 

ここ100年の中で、自殺率が最高だったのは平成時代でした。
年間3万人の自殺者のうち、2万人以上は男性。
女性より男性の方が自殺者が多いというのは世界的
にも共通する傾向ですが、日本では平成以降、
男女差が拡大し、最大で女性の3倍近くの自殺者が
発生しています。

 

失業率が高いほど自殺率も高くなるとみられています。
1960年から2017年までの男性の平均完全失業率は、 2.9%、
男性の自殺者が年間2万人超だった、1998年から14年間
の平均失業率は、4.8%。
一方、女性の自殺は失業とは無関係。

 

しかし男性の自殺には、失業以外に離婚があります。
「有配偶者」「未婚」「死別」「離別」それぞれの
男性の自殺者数を見てみますと、最も多いのが離別。
配偶者を失った男性よりも多いのです。

 

その理由として、離別した男性の「ソロで生きる力」
は相当弱い、と荒川さんはいいます。
死別の悲しさや寂しさはあるものの自己否定には
なりませんが、離別は相手による自己の拒絶であり、
否定だからです。

 

極度に配偶者に精神的依存をしている傾向のある
日本の既婚男性は、配偶者から完全なる自己否定を
突きつけられることに弱いのでしょう。

 

離別した男性は、未婚男性よりも病気の罹患率が高く
なり、友人等がいない場合は社会的孤立感に苛まれます。
現在孤独死をしている70歳以上の男性は、皆婚時代の
人たちで、ほとんどが元既婚者。
ところが女性の場合は正反対で、逆に幸福度が上がります。

 

荒川さんは、既婚男性だけに特徴的な状態を「既婚男性
妻唯一依存症候群」と呼んでいるそうです。
子育ても終わり、定年退職して無職になった既婚男性が
突然発症するパターンが多く、母親に甘えるが如く
妻に依存していますといいます。

 

これはあくまでも妻だけに依存するという状態で、
妻を大切に思うこととは別。
確実に増加している熟年離婚ですが、既婚男性と
対面調査をしていると多くの既婚男性は「うちだけは
大丈夫だ」と思っているそうです。

 

荒川さんは、一度客観的に夫婦関係を見つめることを提案。
頼れる人が1人しかいない、居場所が1か所しかないという
「選択肢が1つしかない唯一依存」が最も危険だそう。
老後の資金だけではなく「人とのつながり」をためて
おくことを進めていらっしゃいます。