夫婦の受精卵を、夫に無断で移植して出産した子に親子関係を認める判決

夫婦の受精卵を、夫に無断で移植して出産

凍結保存をしていた夫婦の受精卵を、妻が別居中の
夫に無断で移植して出産し、夫が子どもとは法律上
の親子関係がないと訴えた裁判の判決が、最高裁判所
で出ました。

 

最高裁の判決は、男性の上告を退ける決定で、親子
関係を認めた判決が確定。

 

奈良県内に住む40代の元夫だった男性は、別居して
いた妻が、クリニックに凍結保存されていた受精卵
を無断で移植して出産した2人目の子どもについて
「同意のない出産で、法律上の親子関係はない」
と、離婚した後に訴えていたものです。

 

 

 

 

別居中に、夫に無断で受精卵で出産

判決などによりますと、男性と元妻は2009(平成21)
年から不妊治療を始め、奈良市の婦人科クリニックで
体外受精で作った複数の受精卵を凍結保存しました。

 

2011(平成23)年に、受精卵の移植で長男が誕生し
ますが、2013(平成25)年に夫婦は別居。
元妻は、2014(平成26)年に、男性に無断で残って
いる受精卵を移植し、2015(平成27)年に長女を出産
し翌年、2016(平成28)年に夫婦は離婚しました。

 

民法には、婚姻中に妻が懐胎した子どもは法律上、
夫の子とするとした「嫡出推定」という規定があり
ますが、裁判では夫に無断で受精卵を移植したこと
について、この規定が及ばない事情と言えるか否か
が争われました。

 

 

 

1審「夫婦の実態があったとして父子関係を認める」

2017(平成29)年12月の1審、奈良家裁判決では、
体外受精などの生殖補助医療では、
「夫が妻との間に子どもを設けることに同意して
いることが必要」
との判断を示す一方、夫婦の実態があったとして
父子関係を認めました。

 

 

 

2審「嫡出推定の規定からも、男性の子と推定される」

2018(平成30)年2審の大阪高等裁判所の判決は、
「男性は別居中も長男の世話で妻の家を訪れる
などしており、明らかに夫婦の実態が失われて
いたとまでは言えない」と指摘。

 

妻が婚姻中に妊娠した子は夫の子と推定する民法
の「嫡出推定」の規定から、長女は男性の子と
推定されるとしてうえで、そもそも訴えが却下
されるため、
「同意が必要かどうかは判断の必要がない」とし、
「同意がないことは子の身分の安定を保つ必要が
なくなる理由にならず、民法の規定が及ばない特段
の事情とはいえない」と指摘し、1審に続いて法律
上の親子関係を認めていました。

 

 

 

 

最高裁、受精卵の移植に夫の同意が必要かについては判断せず

これに対して元夫だった男性は上告していましたが、
最高裁判所第2小法廷の三浦守裁判長は、7日までに
上告を退ける決定を出し、親子関係を認める判決が
確定し、受精卵の移植に、夫の同意が必要かについ
ては判断しなかったということです。

 

どう考えても生物学的な親子関係は存在するでしょう
から、あくまでも法律上の父子関係ということになります
が、ここに書かれている限りにおいては、父子関係が
存在しないというのは難しいことのように思えます。

 

ただ、それが1審、2審でいうような「夫婦の実態が
あったから」という理由は、少々疑問を感じます。
離婚した夫婦でも、できる限り子どもとの関わり等の
責任をとることは当たり前であり、罵り合ったりせず
スムーズにそれが行われるのが望ましいところ。
それを「夫婦の実態があった」という言葉で表現する
ことには抵抗がないわけでもありません。

 

 

 

いくつかの違和感

また、妻はなぜ離婚するつもりで別居中の夫の子を
妊娠したいと思ったのかも不思議です。
「長男と両親が同じきょうだい」を生んであげた
かったからなのでしょうか?

 

しかし、最も私が感じる違和感は、今回の問題とは
離れてしまいますが、やはり生命を操作するという
根本的な事柄についてです。

 

今回の裁判で訴えているのは(被害者)は元夫で、
彼が訴えている相手(加害者)は元妻。
裁判で、夫の主張は認められなかったのですから
被害者、加害者という線引きはぼやけました。

 

 

 

 

真の被害者、本当に考えてあげなければいけないのは子ども

しかし、この裁判で本当の被害者は、受精卵に
よって誕生した子どもではないかと私は思います。
自分がこの世に誕生した経過を、生物学上の父が
認めず「法律上の親子関係はない」と1審、2審、
最高裁まで争ったのです。

 

裁判では、夫に無断で受精卵を移植したことが、
嫡出推定の規定が及ばない事情かどうかを争った
ようです。

 

確かに、法的にそれは重要なことに違いありま
せんが、生まれた子どもにとって問題はそれでは
ありません。

 

現在はまだ幼い子どもですが、この事実を知った
時にどのような傷を心に抱え込んでしまうのか
ため息が出る思いです。

 

 

生命を「操作」するということ

体外で受精卵を作り、凍結して保存し移植するという
生命操作を人間がしてしまう傲慢さ。

 

以前、このブログでもお伝えしましたが、自分の精子
を使って患者さんに子どもを数十人も産ませていた
医師がいたりするなど、このような問題は残念ながら
必ず起きてしまうことでしょう。

 

また、体外受精で生まれた子どもが苦しんでいる
現状もお伝えしたことがありました。

 

病院でも裁判でも、子どもを持ちたいという両親、
大人のために物事が進んでいます。

 

肝心の生まれてくる子どものことは一体、誰が
本気で考えてくれるのでしょう?
責任を持っていくれるのでしょうか?

 

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