規約人権委員会審議 1993年10月〜11月 ジュネーブ 

規約人権委員会審議
「ジュネーブ1993 世界に問われた日本の人権」
              こうち書房 1994.5.3

日本政府の第三回定期報告書に対する
国際人権(自由権)
規約委員会の
審査記録および日本弁護士連合会の報告
P.61
第1章の最後の質問1は、次の通りです。
「非嫡出子の王的情況はどのようなものか」
我々の回答は次の通りです。
婚姻関係以外で出生した子ども(婚外子)に関して、
子どもが法律上の親を有する限りにおいて、たとえば
扶養・相続権など、民法所定の親子関係に基づき
1親等親族の有する権利義務を取得することになります。
日本民法に従った婚外子の取り扱いは、婚姻により出生
した子どもとは次の点において異なったものとなっています。
第一に、婚姻関係から生まれた子どもは、出生により
法律上の父親を有することになります。
ほとんどの場合は、合法的な婚姻関係から生まれた子ども
は嫡出子であると看做される(訳注、「推定される」)
と規定する民法第772条の嫡出推定規定の適用を受けます。
これに対して、婚姻外から生まれた子どもは、父親の
認知によって初めて法律上の父親を有することになります。
第2に、婚姻関係から生まれた子どもは、
その両親の姓を名乗ることになります。
これに対して婚姻外から生まれた子どもは、
その母親の姓を名乗ります。
これは民法790条に規定されています。
第3に、相続に関し、婚外子と嫡出子が同順位の
相続人である場合において、婚外子は嫡出子の半分
とされています。
こ
れは民法900条4号但書に規定されています。
この他、出生登録において婚外子と嫡出子とが
明確に区別されることを定める戸籍法によって、
嫡出子はたとえば「長男」または「長女」などの
ように記載されますが、婚外子は「男」または「女」
のように記載されます。
このような区別は、全て不可避的な事実的区別から
生じるものであり、子どもが合法的な婚姻関係から
生まれたかどうか、また合法的な婚姻関係を保護する
ための必要から行われるものです。
したがって、婚外子に対してそれが何らかの不合理な
差別を作り出すものではないと考えられます。
議長、以上が質問書第1章に対する我々の回答です。
ご清聴ありがとうございました。

(ディミトゥリエヴィッチ議長)
國方さん、どうもありがとうございました。
それでは、委員会の委員の皆さんに質問事項第1章に
関する補足的質問、または日本政府代表団による
回答に関するコメントをいただきます。
委員の皆さんには、現在発言予定者は12名であること、
また時間の制約も考慮して発言していただき
たいと思います。
最初の発言者は、サディ氏です。
サディさん発言をどうぞ。

(サディ委員)
議長、遠藤大使を団長とし、伊藤公使、
人権難民課長の國方氏から成る日本政府代表団を
心から歓迎したいと思います。
代表団の規模がこのように大きなものであるという
ことが、日本政府がここでの対話をきわめて重要な
ものであると考えているということを証明するもの
であると思います。
こ
れは非常によいスタートであると思います。
私は、代表団の後世上の選択がすばらしいものであり、
またそれぞれが多くの任務を委ねられた規約の
各分野の専門家であると思います。
本当によい審査開始になると思います。
日本の報告書は、私の考えでは優れたものであり、
委員会の指針にかなりの程度においてしたがって
いるものであると思います。
こ
れが第3回定期報告書であるという事実を考慮しても、
また以前の報告書を補足するものであるという点からも、
全体的に見て、日本における人権の情況を明確に
示しているものと考えます。
今朝は、冒頭の陳述および質問事項に対する詳細な
回答をいただきましたが、國方氏の回答は実に役に立ち、
日本における人権に一層の光を当ててくださったものです。
まず、日本の報告者は、一の重要性を付加したものである、
と考えます。
というのは、日本はただ単なる一国家で
あるわけではなく、日本は地域的なパワーを持つ国です。
日本は大きなパワーを持った国であり、スーパー・パワーを
持った国になり、国連安全保障理事会の席を占めている国です。
したがって、日本が規約に基づいて行うこと、発言すること
のすべてが、地域的にも国際的にも機関車的役割を果たす
ことになります。
したがって、日本が規約の選択議定書や拷問禁止条約など
のその他の条約の批准に関してやや保守的であることを
残念に思います。
再び申しますが、日本の地位を考えると、日本が地域の
ためにもまた国際的役割のためにも、基準を示すという
意味における指導的役割を果たすことを期待します。
質問事項に関して述べる前に、いくつか
申し上げたいことがあります。
私は問題の全てを取り上げるつもりはありません。
まず、安藤仁介氏とこうして一緒に仕事をさせて
いただいていることを心から感謝したいと思います。
私は過去3年間知遇を得ており、彼が優れた専門家であり、
学識ある専門家であり、またこの委員会の非常に
重要な委員であると思います。
また、彼が委員長に選ばれているという事実こそ、
安藤氏の見解や貢献に我々が多くのものを負って
いることの証左です。
したがって、日本政府に対してこのように有能な委員を
推薦していることに関して感謝したいと思います。
それでは、時間がありませんので、私の念頭にある
いくつかの問題を取り上げ、その他のものについては
他の委員に譲りたいと思います。
私の最初の質問は、規約の地位についてです。
この機会が日本における規約の地位に関してうかがう
第3回目のものであると思いますが、これは中心的問題
ですので、この問題を再び取り上げさせていただきたいと
思います。
この問題について明確にしておかないと、我々としても
永久に問題の明確な認識を欠くことになりますので。
自分にとってよくわからないのは、報告書の第12項に
おいて、日本国憲法では日本国が締結した条約が忠実に
遵守される旨の記述があります。
それで結構かと思います。
しかし、規定の趣旨にしたがうという文章に関して、
この「規定の趣旨」とは何をいうのでしょうか。
法的術語においては、意図とか趣旨ということになった
場合に、トラブルが生ずることが多いのです。
そして、問題が不明確になります。
規定の内容に関して
実際に解釈されたとこに関して「規定の趣旨にしたがい」
ということを説明した後で、今度は、これこれのことが
「……と考えられている」と言われました。
この「と考えられる」とは、誰がそのように考えている
ということでしょうか。
つまり、日本における規約の地位はトリッキーなもの
(微妙なもの)となっているのです。
このような私の考えが誤ったものであることを希望して
いるのですが、しかし、報告書を読んだ上での私の
コメントをさせていただければ、そのように感じるわけです。
さて、政府代表は、本日、規約が日本の判決でときどき
言及されることがある、と言われましたが、同時に、
規約が国内法の一部としての地位を占めているという
ことを明確に述べている判決が皆無であるという
事実にも触れられました。

規約が裁判で取り上げられることがしばしばある、
とも言われました。
また、裁判所の中には、
(問題とされた)法律は規約に違反していないと
判決している例もある、とも言われました。
そこで、私の直接的質問は、以下の通りです。
裁判所が規約を解釈する場合において、裁判所は、
当委員会の先例を指針とするのでしょうか。
たとえば、
ある種の法律が規約に違反していない、とされる場合です。
さまざまな規約の規定を解釈する際に、当委員会が
述べていることを考慮に入れるのでしょうか。
というのは、これは非常に中心的問題であり、
国内裁判所が規約を国内法との関連で解釈する場合には、
当委員会の先例を指針とすべきである、と私は考えます。
そうでなければ、さまざまにことなった解釈が
生じてしまうことになります。
次に、第2条の差別に移りたいと思います。
報告書
35項で、日本国憲法は、何人も、人種、信条、性別、
社会的身分または門地により差別を受けないと
されていますが、国籍又は出生国が除外されている
ことに何か特別の理由があるのでしょうか。
「優しい」
欠落あるいは非意図的な欠落かもしれませんが、しかし、
規約の観点からすれば、何故そのような基準が欠けて
いるのかということに関して伺わざるをえないわけです。
次に在日朝鮮・韓国人の問題に移りたいと思います。
私はこれが経過のある問題であり、差別に関しては
あまり強い主張がなされていない問題であると承知
していますが、私の質問は、このような差別的取り扱い
は朝鮮・韓国人であることによって生じているのか、
ということです。
こ
れは朝鮮・韓国人が日本国籍を喪失したことを
理由とする一種の「もつれ糸」のような関係で
生じていることなのでしょうか。
私は、将来における問題を念頭において考えているのです。
現在では第三世代が日本国内に居住しているとのこと
ですので……質問の趣旨は、この問題が、原因結果の関係
においてどうか ……在日朝鮮・韓国人に関してだらだらと
長期化してきている問題なのですが。
私のもう一つの質問は、彼らを特別永住者として考える
場合に、たとえば米国の居住者であるグリーン・カード
保有者として取り扱うことができないのでしょうか。
たとえば、カナダや米国における場合のように、
(理解可能な)選挙権の問題を除き、意図や目的など
あらゆる点において事実上完全に平等の取り扱いを行う
ことは不可能なのでしょうか。
もしこの点に関する情報をいただければ、毎年2万人もの
在日朝鮮・韓国人が外国人登録証を携帯していないために
逮捕されていると聞いていますので、それを訂正して
いただけるかもしれません。
これが正しい情報がどうか私は知りません。
しかし、正直に申し上げると、日本の報告書が、かなり
広範なレベルでの緊張を生じさせているように感じています。
もちろん、その他のさまざまな分野で積極的な発展が見られ
ることは確かですが。
このような情報が正しいでしょうか。
というのは、問題がそのようなレベルまで達していれば、
消極的な差別的取り扱いが、たとえば在日朝鮮・韓国人に
対して行われているかどうか、という問題です。
次に第4条に行きたいと思います。
報告書における第4条の
取り扱いは、非常に簡素なものであると思います。
緊急事態に関する問題はほとんど存在しないのではないか
と思いますが、しかし、規約の下では日本は国内法を
規約第4条に適合させる義務を有しているということを
率直に指摘したいと思います。
たとえば、緊急自体を宣言する際の理由に関して、
国連事務総長に通知すること、規約の規定の適用除外の問題、
その他についてです。
立法に関して述べるだけでも、この問題に関してもう少し
多くの取り扱いが必要であると思います。
次に、少し早口になりますが、女性の権利について
扱いたいと思います。
男女の平等問題に関して、市民権、子どもの出生、たとえば
外国人と婚姻した母から生まれた子どもについて、
母の(日本)国籍は、日本人父親の場合と同様に
(子に)伝わるのでしょうか。
もう既に回答された
かもしれませんが……。
しかし、回答を全体的にうかがった後で、私としては、
ただその点に関して確認したいのです。
私の最後の懸念は……私の同僚の懸念も考慮しつつ……
婚姻外で生まれた子どもの問題です。
思うに、
我々は婚外子は付加的な保護を必要とするということに
皆同意することができると思います。
平等の保護のみだけでなく、付加的な保護であり、
また(婚外子であることによって)罰を受けることが
あってはならないのです。
非嫡出子に関しては、両親が罰を受けることがありえても、
子どもが罰を受けることがあってはならないのです。
それを念頭に置けば、また規約では「それぞれの
子どもは」と規定しており「婚姻によって生まれた
子ども」とは規定していないのですから……。
私は、日本がこのような状況を矯正するための努力をし、
またこの無実の子どもたちに対して付加的な保護を
与えることにより相当の進展をしていただければ、
たいへん喜ばしいと考えています。
そして、それが実際にそのような子どもに対する
必要な留意、ケアそして保護に拡張されることを
希望しています特に、相続を含むものとされる
べきであり、私は個人的には婚外子はより少なく
ではなく、より多くを相続すべきであると考えます。
もちろん、これは私の主観的な考えであり、
他の人々にお仕着せするつもりはありません。
少なくとも、それらの子どもには、同情と付加的な
保護を、いかなる意味においても(その身分による)
罰が与えられないことが必要だと思います。
以上が私の質問です。
もちろん、後ほど、別の章で質問をしたいと
思っております。
どうもありがとうございました。

(ディミトゥリエヴィッチ議長)
マブロマティスさん、ありがとうございました。
では,ポカール委員に発言をお願いします。

(ポカール委員)
議長,ありがとうございます。
議長,私も,遠藤大使のご欠席の下で,伊藤公使より
代表される日本政府代表団を心から歓迎する
ことから始めたいと思います。
伊藤公使には,別の会議でいろいろと
協力いただいています。
代表団の規模および能力からして,今朝から既に
開始しておりますが,質問事項の第3章に至るまで
我々は良好な対話をもつことができるのではないか
と考えます。
時宣にかなって提出された(政府)報告書については,
我々の立て込んだスケジュールの関係で直ちに審理する
ことができませんでしたが,よい報告書であります。
また,國方氏に対しては,報告書をアップ・ツー・
デートなものとするための補足的説明を
いただきありがとうございました。
議長、私がいくつかのコメントをする前に,我が委員会の
委員長である安藤氏について述べさせて
いただきたいと思います。
彼にこの委員会の委員長を
務めていただいているのは,我々の喜びとするところです。
安藤氏は我々の活動に対して大きな貢献を行っています。
我々の非差別——この問題は,ここ数日においても
取り上げられることになっています——に関するジェネラル
・コメントの最終のドラフトの作成のような困難な仕事
においても,指導的な役割を演じています。
最近の優れた
ロラボルトゥール(報告書)であり,さらに我々に議
論においてもいつも刺激的な考えを示してくださっています。

最後に,また必ずしも最も重要性が低いわけでは
ありませんが,彼の公正さ,親切、我々のすべての
ものとの友情において,極めて顕著な方です。
それでは,個別的な問題に移りたいと思います。
まず,人権状況を改善するための近年における日本
政府の大きな努力について私はよく熟知しております。
国内外で,私は,アジア地域におけるさまざまな会議
やワークショップに参加する機会を得ており,
また個人的に,この分野における日本人の専門家や
代表団が果たしている役割を知る機会がありました。
そして,ここに,このように多くの政府代表団やNGO
が来られていること自体が,少なくとも規約の周知に
関する目的が達成されたことを示すものである
と思われます。
これは,多くの他の国にとっては,一般的なことで
あるわけではありません。
特に,私は,我々に多くの情報を提供してくださった
さまざまなNGOに感謝したいと思います。
ところで,私は最近日本を訪問し,意見を
交換する機会がありました。
このようなことを言うのは,これから述べるいくつかの
問題に関する批判について,このような背景を持って
申し上げているということを理解していただきたいと
思うからです。
この質問事項第1章に関しては,私はごくわずかな
質問しか有していません。
これは,他の多くの問題が討議を必要としているという
ことのみならず,いくつかの問題は,今朝,既に代表団
によって回答されているからでもあります。
私の主要なコメントは,差別問題についてです。
私の印象では,今朝,代表団が述べた日本政府のさまざまな
努力にもかかわらず,また立法や実務慣行における非常に
多くの改善例にもかかわらず、いくつかの領域で法と慣行の
両方において一定の差別が依然として存在しています。
法の点に関してまず申し上げます。
私の同僚は,既に婚外子差別について述べられました。
私自身も婚外子差別が存在するのみならず,正当化されて
いるという話を聞いて,驚きを禁じえなかったわけです。
相続事項に関して婚外子が差別される旨を規定する
民法第900条は、規約違反です。
明確に規約違反です。
委員会も規約24条に関するジェネラル・コメントにおいて、
相続を含むあらゆる領域における差別について言及しています。
マブロマティス氏が既に述べたことを繰り返しませんが,
子どもの差別に関するその他の規定もあるわけであり,
出生の登録や通知など,差別の根拠とされる事項を含めて,
それは出生後の社会における婚外子の差別となります。
この問題は,私にとって非常に重要なものであり,
代表団がただ今説明したような家族を保護するための
法秩序をもってしても,子どもの権利を阻害するような
ものとて確保されることが会ってはならない,
というのが私の意見です。
その他の方法によって達成されなければなりません。
私が申し上げたいのは,家族の保護をもってしても,
婚外子という家族の一員が保護されない自体が
生じてはならないのです。
もし第一次的保護が家庭内の保護であるとしても,
なぜ社会が,家族自身を保護しようとしない家庭を保護
しなければならないのか理解できません。
当該の状況に関してまったく責任を有しない子どもの利益
を害するような仕方で,家庭を保護する理由はないのです。
したがって,子どもの保護が第一に考えられるべきであり,
次に,婚外子の不利益にならないという考え方に照らして,
家庭の保護が考えられるべきである,と思います。
したがって,私は,この種の差別が
すべて除去されるよう希望します。
次に,私の印象では,国のさまざまな地域で,特に職場
における女性や労働者に対する差別が存在する,と思います。

もちろん、さまざまな改善が行われているわけですが,
この点について,NGOからの一定の思想を有する
労働者あるいは一定の行動を行った労働者の解雇に
関するいくつかの情報を得ています。
私は,このような労働者慣行は法に違反するもので
あると理解しています。
法はそのような差別について規定していないからです。
代表団に確認をしてみたいことは,救済方法が
不適切であるため,実際に差別が存在している
のかどうかということです。
私の理解では、解雇された労働者は、地方(労働)委員会
に申し出て、問題を討議してもらうことができるもの
とされている、と思います。
地方(労働)委員会からは中央(労働)委員会に、
さらにそこから東京の下部裁判所に、さらに最終的
には最高裁判所に提起することができ、それも事件
によって全体で15年以上かかると思います。
手続きを急速化したり、差し止め命令が利用可能と
されるメカニズムがない場合は、そのようになる
わけですが、代表団は何か差し止め命令について
述べられたのでしょうか。
さまざまな分野における差別を除去するために、
差し止め命令が利用可能なものとされ、または適用に
なるかどうかうかがいたいと思います。
議長私は子どもの権利に関して1つ質問をするのを
忘れたような気がします。
また、それに関して代表団から情報を
いただきたいと思います。
最近、東京高等裁判所は、今年の6月ですが、
民法第900条4号が憲法違反であると宣言した、
と聞いています。
この判決のインパクトがどのようなものであったか
知りたいと思います。
民法900条を違憲として無効としたのでしょうか,
あるいは別の立法が必要とされたのでしょうか。
もしそうであれば、この点に関する日本政府の
アプローチはどのようなものとなるのでしょうか。
議長、最後に私も、日本が近い将来において
我々の規約の選択議定書を批准することが
非常に望ましいものであると申し上げたく存じます。
マブロマティス氏と同様に,私が前述したように,
問題が救済方法の問題とリンクされているのでなければ,
司法システム制度上の問題や消極的影響の救済が不合理に
引き延ばされたとの通報を送ることができたことは
確かなのですから。
そ
れは司法制度に影響を及ぼすかもしれませんが,
司法制度にとって何らの問題も発生させる
ものではありません。
問題があれば,法律の改正を行えばよいことになります。
というのは,私の国でも多くの点で司法手続きの
長期化の問題があるからです。
わが国では,可能な場合には手続きを急速化する
ための試みが行われています。
もちろんそれは簡単ではありません。
規約人権委員会のような国際機関の支援が
この点においても有効かと思います。

 

(ディミトゥリエヴィッチ議長)
ポカールさん、ありがとうございました。
それではエヴァットさん、発言をどうぞ。

(エヴェト委員)
議長、ありがとうございます。
同僚とともに、
日本政府代表団を心から歓迎したいと思います。
その規模と強さは、規約が日本で重要視
されている証左です。
ご存知のように私の国と日本とは、地理的に隣人である
という意味においてもさまざまな関係を有しています。
私にとって、初めてこの委員会に対する日本の報告書
の審査に参加することになり,たいへん嬉しく思います。
冒頭の陳述で赤松女史への言及がありましたが、
女性の(権利に関する)委員会の委員としてご一緒
させていただきましたので、嬉しくうかがった次第です。
また、私がこの委員会に加わりましたとき、有能な
指導者である安藤仁介氏が委員長を務められている
ことを嬉しく思った次第です。
彼は,これまで私がこの委員会で知遇を得た、唯一の
委員長であり、私は彼と一緒に仕事をすることが
できることを喜びとしています。
日本の第3回報告書および付属資料は、
非常に包括的なものです。
マブロマティス氏がいわれたように、先例のない
ほどの量の資料をNGOから受取っています。
私は20以上の団体から資料を受取りました。
そこでは多くの問題点が指摘され、あるものは
大きな問題であり、あるものは小さな事件を
問題にしています。
それらは、我々が日本報告書に関してとりあげるべく
詳細に研究するにはあまりに多くの問題を掲げています。
その点で、日本政府がこれらの資料とそこで掲げられて
いる問題点を検討すると今朝言われたのを知り、
嬉しく思っています。
私は、日本が詳細な資料を提供して下さったことに
感謝したいと思います。
それらは英語で作成されていましたので、嬉しく
思うわけですが、それらのなかでは、前回の審査で
とりあげられた問題について扱われています。
また、今朝、明確な回答をしていただいた
ことにもお礼を述べたいと思います。

日本の報告書を見ていますと、前回の審査で当委員会
委員による討議の内容は、規約の地位、勾留されて
いる者の処遇、死刑の適用、さまざまな差別であり、
これらの同じ問題が今回の報告書でも、また我々が
NGOから受取った報告書でも扱われています。
まず初めに、だい選択議定書の批准問題から
コメントしたいと思います。
これは前回においても議論され、
今回も本日議論されました。
個人通報に関する選択議定書の、人権世界会議に
よる普遍的な批准の要請を考慮すると、日本が
この問題にも積極的な考慮をおこなうことが
重要であると思います。
多くの国は、選択議定書を批准する手続きを
とっていますし、またいずれの意味においても
選択議定書の批准により批准国の司法権の独立が
侵害されるようなことはないわけです。
また、いままであまり経験されていませんが、
濫用の問題が生じても、国内的救済を尽くさ
なければならない、という要件もあります。
規約の地位に関して。
以前にはこれに関して
若干の懸念が表明されていたようであり、また
その懸念は現在でも継続しているように思います。
特に、公共の福祉による制限に関して
そのような懸念があります。
説明によれば、この問題は個別の事件において
裁判所が決めるものであるとされていますが、
そのことが権利の適用の不確実性を
もたらすように思われます。
規約自体に、当該の状況を定義する法律
による規約が定められています。
報告書題15項における説明において、
「もし法が当該の定めをしている場合は
規約が許容される」と書かれていますが、これは
非常に重要な要件をミスリーディングするものであり、
許容される制約は人権規約において明確に認め
られているものでなければなりません。
報告書で言及されている判決および今朝説明された
ものは、いくつかの懸念を生じされるものです。
私の考えでは、選択議定書を批准することによる
この問題は、オープンな討議を必要とする
ものであると思います。
報告書の第8項では、「ナショナル・インスティ
チューション」(国の機関)とされているものですが、
人権擁護委員会の任務についてさらに、特に、
その期間が行政機関による人権侵害のケースを
とりあげることがあるのかどうかについて、
情報をいただきたいと思います。
報告書によれば、私人間の私的問題を扱う事例が
ほとんどである、とされていますが、公的機関が
関わっている場合に、どのような手段を利用する
ことができるかうかがいたいと思います。
女性と差別の問題に関して、今朝かなり長い間
討議されたわけですが、国内行動計画が歓迎
されるべきステップである、ということを
まず申し上げたいと思います。
私は、雇用機会均等と平等賃金の実施が遅れている
ことに関するILOの報告を読みました。
育児に関する報告書題94項の記述との関係で、
規約題23条4項に基づく責務を考慮すると、
「家事責任を有する労働者に関するILOの条約」
を日本が積極的な考察を行っているのか
どうかについて質問したいと思います。
ここにおいて問題になっているのは、日本の家族関係
における男女の役割に関する黙示的または
伝統的な前提であり、それが女性の地位向上、
雇用および政治参加の障害になっていると思います。
他の委員が、(既に)子どもの権利、とりわけ
婚外子に関して続けられている差別について話され
ましたので、私はその点に関して、次のことだけを
申し上げたいと思います。
氏名や家族事項の登録があまりに厳格すぎるのが
この問題の核心にあるのだと思います。
それが、婚外子の継続的差別につながっているのです。
この問題の解決のためには、それらの両方の要件を
克服することが必要だと思います。
なぜならば、子どもであれ大人であれ、平等に
扱われなければならないのは個人の人権であるからです。
ポカール氏が言われたように、高等裁判所が婚外子の
相続に関して判決を下したとのことですが、私はそれが
上訴されたかどうかもう少しうかがいたいと思います。
他の委員が在日朝鮮・韓国人および被差別部落
について話されましたので、私は以下のことだけを
申し上げたいと思います。
アイヌ社会に関して、私の認識する問題点は、
個々の文化的アイデンティティーや言語を
維持し続けるという当該社会の希望が取り
入れられていないのではないかということです。
このことは、今日ここで議論された改善以上のもの、
すなわちこれらの地域社会自体が自己の発展のために
協議と参加をすることが必要である
ということを意味するわけです。
議長、この章で最後に私がとりあげたいのは、
選挙過程と政治参加についてです。
委員会では
さまざまな委員から、選挙キャンペーンに
おける人々に対する非常に厳格な制約に
ついて懸念が表明されました。
私としてはこの問題は、また規約第25条における
自由かつ公開の選挙過程に参加する権利との関係を、
明確にしていただきたいと思います。
議長、どうもありがとうございました。
以上が私の論点です。

 

(ディミトゥリエヴィッチ議長)
エヴァットさん、ありがとうございました。
委員のご理解をいただきたいと思いますが、
我々はこの報告書と審議の重要性をもちろん完全に
理解しているわけですが、しかし、時間は限られて
おり、発言リストにある発言予定者は多くおります。
したがって出来るだけ完結に、また既に他の委員に
よって扱われた問題については、代表団が一まとめ
にして回答していただくことになっていますので、
重ねて言及することのないようにお願いします。
このことは、利用可能な時間を用いて発言して
いただくことを決して制約するものではありませんが、
手続き状の経済から、御配慮をお願いするものです。
では、次に、ヒギンズさん、発言をお願いします。

(ヒギンズ委員)
議長、ありがとうございます。
まず初めに、私は議長も代表団も「見る」ことは
できませんが、しかし議長も代表団何処かそこに
いらっしゃると信ずべき十分の理由がありますので、
それぞれの方に語りかけたいと思います。
私は、心から代表団を歓迎し、また第2回の審査に
際して行った対話の続きをここにおいて行いたい
と思います。
私の同僚が我々の委員長に対して表明した言葉と
同じものを、安藤教授におくりたいと思います。
安藤教授は、静かに、丁寧に、かつ強力で良好な力
を持って委員長席につかれています。
私は、彼を委員長および同僚として
高く評価しています。
私は、そこに盛られている膨大な情報に関しては
多くの対話を必要とするけれども、(日本政府)
報告書をかなり良い報告書であると考えています。
また、極めて有能な代表団であると思います。
このように我々の質問やコメントに真に
回答することができる代表団を贈っていただいた
ことについて、日本政府に感謝したいと思います。

また、國方氏に対しても、相当の準備が必要で
あったと思われる、当初の質問に対するあのように
優れた回答をしていただいたことに関して感謝します。
同僚が既に言われたように、我々は非常に多くの
NGOからの提出物を受取っています。
そのあるものは規約に関してかなりの根拠を有する
内容を持っており、またそうでないものもありますが、
しかし、それらのものをいただいて大変喜んでいます。
また、私は、人権に関するこのように健康的な
公的意見の交換に対する政府の
積極的な対応を喜んでいます。
また、顕著な領域における最近の立法における
非常に印象的な変化があったと聞いています。
行政的措置においても疑いもなく改善が行われており、
またさまざまな問題に対する特定的なアファーマティブ
・アクションに関する解答が出されている、
と聞いています。
こういったことのすべてが、非常に推奨される
べきものであると考えています。
選択議定書に関して、私は、私の同僚が
既に話された、裁判所の独立に対する懸念に
関する2つの主要な理由およびその他の
濫用問題について非常に興味をひかれました。
第2の点について私が申し上げたいことは、
ただ、選択議定書自体が、濫用となる個人通報の
拒否に関する規定を有しているということです。
また、手続きの濫用から我々自身(委員会)
またその国連の締約国を保護するため、第2条
および第3条にその他のメカニズムも有しています。
したがって、まったく問題はない、と強く信じています。
さて、私は、特定問題に入る前に、
一般的問題について扱いたいと思います。
前回の審査において懸念された問題のいくつかは、
現在でも存続しているのではないか、
という疑問をもっているからです。
また、その反面、いくつかの分野に関しては
改善があったと思います。
ただし、そのような変更の理由の背後には、
たとえば他国の政府との交渉によるものがあった、
ということもあったと思います。
それは、我々の予備的な質問を
生じさせることになります。
我々の考え方が政府にどのように受け入れられた
のかという意味で、我々の前回の報告書審査のあと、
何が実際に起こったのでしょうか。
我々が述べたことが検討されたのでしょうか。
その結果、どのような行為がとられたのでしょうか。
よりよくご理解していただくために申し上げれば、
変化に抵抗を示していた者が変化を受け入れた
理由に関して、変化をもたらした他の外部的要因
とは別に、我々がこの委員会で述べていたことが
変改に対してどのように影響を及ぼしたのか、
ということです。
それでは、これから、いくつかの特定的質問を
行いたいと思います。
議長が「差し止め命令」を出されましたから、
私は非嫡出子については、同僚委員から出された
もの、特にポカール氏によるコメント以上の
質問を重ねて致しません。
在日朝鮮・韓国人に関して継続している差別に
関して、私は以下の特定質問を持っています。
長期在住者が外国人登録証を常時携帯しな
ければならない目的はなんでしょうか。
私自身、登録証を携帯させることが人権違反
になるとは必ずしも考えているわけではありま
せんが、社会のある者が登録証を携帯すること
が必要とされ、別のものには必要とされないこと、
また携帯しないことに対して刑罰が科される
ということになれば、当該の差別的取り扱いが
目的とするものは何であるか、
とうことを知りたいと思うわけです。
私の第2の質問は、他の外国人と比較して特権が
与えられている5年以内の再入国許可についてです。
永住資格を有している外国人にとっては、
なぜ5年という期限が課されているか
教えていただけますでしょうか。
私の第3の質問は、文化における同化(政策)
一般に関してであり、特定的には姓名に関して
生じているものに関してです。
率直に言って、このようなこと全てが、
ヨーロッパ人には理解が困難です。
しかし、私は次のように理解しています。
帰化した朝鮮・韓国人にとっては、朝鮮・韓国名の
継続的使用については、日本式の表記の仕方に
変更せざるをえないという一定の「事実上の」
制約があるものと思います。
しかし、朝鮮・韓国式の姓名を保持している者
にとっても、姓名は漢字で戸籍に記載され、
それがローマ字化されて、異なった日本式姓名
になりパスポートに記載されます。
また、姓名が日本式のひらがまな・カタカナで
戸籍に記載される場合でも、ローマ字化されて、
異なった姓名としてあるいは朝鮮・韓国式の
ものにいくぶん近い形で表記されます。
私が一般的に知りたいのは、名前を別のものに
表記させるため、なぜ圧力が存在するのか
ということです。
私の次の質問は、在日朝鮮・韓国人が規約27条
の規定する少数民族であると承認されているか、
ということです。
報告書には在日朝鮮・韓国人と27条の関係に
関する記載がまったくありません。
少数民族についてはアイヌに関する言及があるのみ
であり、彼らは日本人であり、その平等が保障
されている、とされているに過ぎません。
これは次のような意味で、「不吉な」
記述の仕方であります。
つまり、少数民族の権利は、彼らが国民である
限りにおいて保障される、ということを
(日本政府が)示唆しているものであり、
当委員会としてはそれを受け入れることが
困難であるわけです。
少数民族の権利は、領域内に居住している
少数民族の何人に対しても適用されなければ
なりません。
たまたま偶然に領域内にいる者に対しても
適用されるものと我々は考えていますが、
永住している者に適用され

 

(ディミトゥリエヴィッチ議長)
ヒギンズさん、ありがとうございました。
次の発言者は、シャネさんです。

 

(シャネ委員)
まず最初に、日本がこの委員会に送られた
大規模な政府団を心から歓迎させて
いただきたいと思います。
大規模のみならず、非常に有能な代表団です。
これは日本が当委員会の仕事を重要視している
ことの表れであると思います。
また、当委員会では有能な安藤仁介氏が委員長を
務められているという事実も歓迎したいと思いますし、
彼の親切、有能さ、友情と人間性を
私はほとんど毎日のように感じております。
議長、5年が経過して、私はこの対話を続ける
ことをたいへん嬉しく思っております。
私がこの委員会の委員になったのは1988年中ごろ
であり、そのとき(日本の報告書の審査が行われて
いたので)それに参加しました。
この報告書が予定通りに提出され、また迅速に審議
されることが大変重要であると思います。
つまり、それにより一国の法的かつ制度的な枠組み
を一層多く学ぶことが可能となるからです。
また、審査に際して行われたコメントが考慮に
入れられたのかどうか、またそうでない場合は
なぜこの間に改善がなされなかったのか
ということを知ることができるからです。
代表団は当委員会に明確な説明をすることが
できるでしょうから、結果的にどのようなことに
なるか知れませんし、政府もその見解を変更する
かもしれませんが、しかし、いくつかの問題が、
「差別」というよりも、「違い」に関して
存在するように思います。
その「違い」が正当化できる違いなのかどうかに
ついて知ることができるのではないかと思います。
法律や慣行が正当化できないものである場合は、
規約を遵守するものでないことになります。
しかし、多くの人々や集団が異なった仕方で
取り扱われているように思います。
したがって、それがなぜなのか、また女性、外国人、
非嫡出子など、彼らの地位に関して何らかの変化が
生じているのかについて知りたいと思います。
また、私の個人的関心では、精神障害者の場合
にも懸念を有しています。
少数民族、外国人、特に在日朝鮮・韓国人に
関して行われた質問にも同感ですし、また医療援助
に関しても質問を個人的にはつけ加えたいと思います。

思うに、医療援助は日本国民に対して
のみ適応可能とされているようです。
日本の経済に参加する形で日本で労働している
外国人が、同じ条件の下で社会保障や医療援助の
利益を受けることができないのでしょうか。
この問題(医療援助)に関して代表団に情報を
提供していただければ大変有難く存じます。
子どもに関しては、もし数字があれば、
国籍を有しない子どもは日本にどれくらい
存在するのか知りたいと思います。
婚外子が嫡出子と同じ割合の相続分を
受けることができないという出生による差別
に関しては、私は前の発言者のコメントと
同様の考えを持っております。
民法は、その点に関してな規約を遵守する
ものではありません。
それは規約が禁止する差別に当たると思います。
國方氏は、我々にその正当事由あるいは婚姻の
保護について説明して下さいましたが、
婚姻の保護と非嫡出子である子どもの保護、
子どもの置かれた状況およびその将来とは、
まったく関連すべきことであると思いません。
子どもは当該の関係に何らの参加もしていない
のであり、彼は,そのような規定の犠牲者です。
したがって、それは適正な正当事由
ではないと思います。
この件では、規約違反があると思います。
エヴァットさんが提起した女性差別の問題
に関して、またここでは女性の運命に関する
全ての問題をカバーすることは出来ないのですが、
私がうかがいたい問題は、國方さんが述べたように、
公共・民間のそれぞれの部門において
女性と使用者との間の紛争を解決するための措置
が存在するとのことですが、もし差別的取り扱いに
よって女性がその職場で差別された場合に、
何らかの救済方法が存在するでしょうか。
国の管轄(裁判所)に訴える手段や
手続きがあるのでしょうか。
その救済手段の利用方法は
どのようなものでしょうか。
彼女は、労働者としてまたは女性として、
何か特別の機関で救済を受ける
ことができるのでしょうか。
次に、精神障害者に関して、第2章において
救済方法に関する質問がありますが、
この第1章においては、私は、精神病に罹って
いる者に対する差別に関心を持っています。
1988年に報告書を審査した際に、
1987年に法律が通過したけれども、
私の質問に対する回答では、依然として
差別がある、とのことでした。
たとえば、癲癇の人は運転免許証をとることが
できないとか、精神障害者は働くことが
できないなど、労働を禁止されているのです。
私がうかがいたいのは、現時点において、
精神病に罹っている者の非常に重大な状況に
関するこのような法は、依然として施行されて
おり、彼らの合意なしに明らかに精神障害者
を制約しています。
精神障害者に対するこのような差別的取り扱いは、
彼らの責任が否定され、また行為を行うことが
できないとされているにもかかわらず、
1993年3月には、精神障害者が死刑の宣告
をなされると、判決されていますから、より一層
不思議なものとなります。
我々が受取った情報の一つによれば、
ある精神障害者が刑法の下では自己の行為に
対して責任を有するとされているのに、
しかし、一方、仕事に就くことができないのです。
議長、以上が私の質問であります。
既に行われた質問については
繰り返してうかがっておりません。
また、できるだけ短く致しました。

 

(ディミトゥリエヴィッチ議長)
では次に、ブラド・ヴァレホさん
に発言をお願いします。

 

(プラド・ヴァレホ委員)
議長、私も著名な日本代表団を
歓迎したいと思います。
この対話が前回のものと同様に、
実りあるものとなる確信を有しています。
私は、幸運にも2つの審査に参加することができ、
またいずれもポジティブなものでした。
日本代表団は非常に有能であり、今回もまた、
日本の法律の進展状況に関して、より一層有用な
対話をしたいと思っています。
議長、この委員会において安藤氏を構成員として
有していることについて、私の満足感について
表明することもお許し下さい。
私は、幸運にも彼がこの委員会に委員として
加わった当初から委員長の現在に至るまで、
共に委員を務めさせていただいています。
彼は(委員会にとっても)その仕事を運営して
いく上でも、規約の実施の上でも、才能と人間的
感情を持った膨大な価値のある方であり、また討論
を指揮するに際しても、この委員会にたいして
膨大な貢献をしています。

今回の報告書は、前回のものと同様、良い報告書
であり、今朝、著名な代表団により回答された
答えも日本における規約の地位に関して補足的な
描写をしていただきました。
議長、しかし、他の委員が既に言及されたように、
いくつかの問題があります。
私は、
その幾つかに関して懸念を持っており、
また高名な代表団に質問したいと思います。
他の委員と同様、選択議定書を未だに批准
していないことを残念に思います。
選択議定書を批准しないことに関して、
報告書は何らかの正当事由を提供していない、
と思います。
ヒギンズさんもこの事に言及されました。
日本は批准をすすめるべきであります。

驚いたことは、日本が未だ拷問禁止条約を
批准していない、ということです。
これは、人権に関する分野での基本的文書です。
日本がなぜ、拷問禁止条約を批准しないのか、
本当に理解できません。
何が問題なのでしょうか。
日本が批准することは、人権のために役に立つと思うのです。
というのは、日本国内においてのみならず、
国際的にも役に立つからです。
議長、婚外子に関して代表団が述べたことは、
その点に関して差別を正当化するものではありません。
嫡出子の相続分の半分しか婚外子が相続できない
という事実は、明らかな差別であり、また出生登録
(戸籍登録)における氏名に関しても差別があります。
この分野に関して、日本は法律を改正し、
婚外子に完全な平等を実現するという規約上の
責任を有しています。
議長、第2に、私が入手した警察の行動に関する
情報でありますが、男性と女性の被拘禁者がいる場合に、
女性の処遇が男性のそれより過酷なものである
という事実は、確保するため何かが行われなければ
ならない、ということを意味するものです。
女性の非拘禁者に対するそのような処遇を除去する
措置がとられなければなりません。
報告書には、また、いくつかの
積極的な側面も見られます。
私はそのいくつかを指摘したいと思います。
報告書の第88−89ページにおいて、
女性の平等を促進するための中心的オフィスが
設置された、とありますが、報告書において記載され、
また代表団が述べられたことは、良い措置であり、
良い結果を生みだしています。

「ベアテの日本国憲法」朝日新聞 1993年5月24日〜27日 夕刊

その古びたいすに、ベアテ・シロタ・ゴードン
(69)はこわごわと腰を下ろした。

87歳のチャールズ・ケーディスが
ちゃめっけたっぷりに言った。
「帰ったらマッカーサー夫人に言いつけてやる。
君が元帥のいすに座ったって」。
ベアテは子どものように心配そうな顔をした。

24日朝、二人は東京のお堀端にある
第一生命ビルの6階にいた。
日本を五年あまりにわたって統治した
ダグラス・マッカーサーの旧執務室である。

ベアテにとってマッカーサーは今も怖い存在だ。
彼の下で日本国憲法の草案と作った頃
ベアテは22歳だった。

1946年2月4日午前10時、連合国軍総司
令部(GHQ)民政局行政部のスタッフは、
民政局長のコートニー・ホイットニーに
召集された。

マッカーサーの執務室に近い小さな会議室だった。
行政部長のケーディス以下約20人の
末席に最年少のベアテもいた。

おはよう、と言ったあとホイットニーは、
ややおおげさな表現で命令を告げた。
「諸君は今は、憲法制定会議の一員だ」

ベアテは「びっくりしましたよ。
でも、軍では注文があればすぐやらなければ
ならないでしょ」とそのときの気持ちを思い出す。

ホイットニーは天皇制存続、
戦争放棄、封建制度廃止の「マッカーサー
三原則」を示し、極秘作業を命じた。
八つの委員会ができ、ベアテは
「人権に関する委員会」に入った。

同僚は55歳と47歳の二人の男性だった。
「あなたが女性の権利を書いたらどうですか」
と言われ、ベアテは喜んで承知した。
時間は切迫していた。

2月1日、毎日新聞が日本政府の憲法問題
調査委員会の「試案」をスクープした。
「天皇の統治権は不変」という見出し
の記事を見てGHQは危機感を抱く。

日本民主化の決め手として、早く
GHQ案を出さなければならない。
日本政府がまもなく正式に草案を
示すことになっていた。

ホイットニーは一週間で原案を
完成するよう命じた。
さっそく、ベアテは街に飛び出した。
行き先は図書館。

しかし、焼け跡の東京のどこにどんな
図書館があるか見当がつかない。
ジープの運転手に行き先は任せて三つほどの
図書館を回り、世界各国の憲法を借り出した。

「今でもどこに行ったのかわからないんです。
英文だからたぶん大学でしょうね」
集めた憲法文献は、引っ張りだこになった。

法律の専門家もいたが、突然、一国の憲法を
書けと言われ、みんなが手本を見たがった。

ベアテはタイプに向かい、各国の憲法から
学んだ考え方と、自らの理想とを練り上げた
草案を打ち込んでいった。

「妊婦は国の保護を援助を受けられる」
「私生児も法的差別をしてはならない」
など、女性の視点を生かした案文が
つむぎ出されていった。

だが、「妊婦及び授乳期の母親は,既婚,
未婚にかかわらず,国の保護及び,必要
とする援助を受けることができる」
という条項を始め,私生児への差別禁止、
児童の医療費無料など、ベアテが書いた
こまやかな案文は次々に不採用になる。

ケーディスたちは「民法に入れるべきだ」
という意見だった。
「でも憲法に入れておきたかった。
日本の男性に任せたらどうなるかわからない
と思った」

と、今、ベアテはいう。
「私,みんなの前で泣いちゃったんです。
とても心が痛かった」

GHQ案は命令から9日後の13日に
日本政府に示され、3月6日には政府の
「憲法改正草案要綱」が発表される。

ベアテの草案はGHQ内部のチェックで
文章も変わったが、そこに込めた精神は
「婚姻は、両性の合意のみに……」という
憲法24条の「男女同権条項」に生きた。

ベアテは5歳から15歳まで日本で暮らし、
日本語を自由に話す。

先進的な草案の背景には、その体験が
色濃く影を落としていた。
憲法記念日を前に、一人の女性起草者を通して
日本国憲法誕生を振り返る。(田中英也)

 

憲法草案作成の作業がはじまって四日目の
1946年2月7日、連合国総司令部(GHQ)
民政局は、各委員会が作った案文の検討
に入った。

ベアテ・シロタ・ゴードン(当時22)たち
三人の「人権委員会」は41条もの草案を
用意していた。

医学部出身の陸軍中佐ピーター・ルースト
(当時47)と,戦前慶応大で教えたハリー・
ワイルズ(当時55)の二人の同僚は女性の
権利を大幅に広げるベアテ案に賛成していた。

しかし草案をまとめるチャールズ・ケーディス
(当時40)ら三人のチェックは厳しかった。
ベアテの自信作は、「家庭は人類社会の
基礎で(中略)婚姻と家庭は法に保護される」
ではじまり,「個人の尊厳と両性の平等に
立った法律が制定されるべきである」で
結ぶ「男女同権条項」だった。
これは採用された。

3月4日から5日にかけて、GHQと日本政府が
政府案作成の最終協議をした。
ベアテは通訳としてその席にいた。

「男女同権のところに来たら
日本側が強く反発するんです。
でもケーディスが『これはシロタ嬢が
確固たる信念で作ったから可決しましょう』
通し切ってしまいました」

ベアテは39年に渡米するまでの十年間、
東京の乃木坂で両親と暮らした。
父レオ・シロタ、母オーギュスティーヌ
は共にウクライナ出身。

ベアテはピアニストの父が活躍
していたウィーンで生まれた。
山田耕筰に誘われて来日した父は、
東京音楽学校(現東京芸大)ピアノ科
主任教授を務めた。

ベアテは独英仏各語で学び
両親はロシア語で話した。
だが遊び相手は近所の子どもだった。

社交的な両親も日本人の友人を
次々に家に招いた。
ベアテは幼い目から昭和初期の
日本社会を観察する。

「男性は給料を奥さんに渡し,
教育もお母さんが決める。
でも女性は社会に出てこない。
自分からは離婚も出来ず、パティーの時
も自分は台所で食事をすましてましたね」

早熟なベアテは十五歳でカリフォルニア
の大学に入り十九歳で卒業した。

就職した雑誌「タイム」での
肩書きは「調査員」。
「記者」は男性に限られていた。

「私が全部材料を用意して,男性が書く。
出来るとまた私に回ってくる。
一語一語チェックして、間違ったら
私のせいなんです」

アメリカでは,戦争が人手を求めた
ため男女同権が進んだといわれる。
しかし、ベアテは女性が置かれた現実
にくちびるをかみ、日本の土を踏んだ
のだった。

二十六日夕、東京・本郷の学士会館分館
で,来日中のベアテはケーディスと並び
憲法学者たちに人権条項が後退したいき
さつについて説明していた。

「ルーストとワイルズは分かってくれた
けど、ケーディスさんたちは違いました」。
威な頭脳で聞こえたかつてのGHQ行政部長は、
隣でただ笑むばかりだった。

「あのときどんなお仕事をしていたのか,
今までまったく知らなかったんですよ」
洋画家,梅原龍三郎の長女、嶋田紅良=(77)は,
ベアテ・シロタ・ゴードンにそう言った。

幼なじみの二人は二十四日午後、東京で再開した。
ベアテが連合国軍司令部(GHQ)にいた
とき以来,四十六年ぶりだった。

憲法は日本政府の手で起草され,
帝国憲法の改正手続きを経て成立した。
そういう建前を,政府もGHQも貫いた。

GHQの憲法草案作成は極秘で,ベアテは自分が
関係していることを両親にも知らせなかった。
1947年5月、日本国憲法の誕生を見とどけて,
ベアテはアメリカへ戻る。

憲法制定過程にGHQが大きく関与していた
事実は50年代に入って日本国内でも
広く知られるようになった。
「押し付け」論が台頭した。

ベアテは沈黙を守った。
「憲法を変えるため,『こんな若い女性
が書いた』と言い出す人もいたんです。
利用されたら憲法が困ると思い,
インタビューもみんな断りました」

アメリカでは,日本との交流を求める
「ジャパン・ソサエティ」で働いていたが
65年まで来日を控えた。

日本の級友の多くは最近まで,彼女が
憲法起草者の一人であることを知らなかった。
だが,日本との縁は持ち続けた。

訪米した婦人運動下の市川房枝とアイゼン
ハワーとの通訳をしたこともある。
「市川先生には、自分が書いた女性の
権利の話はしました。
もちろん賛成してくれましたよ」

ベアテが「男女同権」条項を書いた
背景は,戦前の日本体験と戦中の
アメリカ体験だけだったのだろうか。

憲法草案作成当時、GHQのスタッフは,
高野岩三郎や鈴木安蔵ら日本の学者たち
の「憲法研究会案」も手に入れていた。

国民主権を打ち出した案だった。
チャールズ・ケーディス(87)も、
「それがなければ短期間では無理だった」
と、参考にしたことを認めている。

女性の権利を担当してベアテは
「参考にしたのはスカンジナビアの国の憲法」
といい、「日本の学者の案は研究しません
でした」と話している。

そのころ、GHQのスタッフを支えていたのは
「ルーズベルトのニューディールでした」
とベアテはいう。

「政府はみんなのために援助するという考え方。
私たちは日本の民主主義のために何かしたい
と思ってました」

ベアテはまた、しいたげられたものの
痛みを知る立場にもいた。
戦争が終わってすぐベアテが日本に
来たのは,両親に会うためだった。

ベアテが大学進学でアメリカに去ったあと,
父レオ・シロタは東京音楽学校を追われ,
両親は軽井沢で細々と暮らしていた。

再開すると、「パパは顔に線が出来るほど
やせていたし、ママは反対に栄養不良で
とっても太っていた」

ユダヤ人だった。
元々オーストリア国籍だったが、ナチス
の併合でドイツ籍になっていた。

ベアテは四十七年前の九日間を振り返る。
「私の人生の中で、一番面白かった
のはあの時です」

字句は大幅に変わったが、ベアテが
「自分らしい表現が残っている」という
憲法24条の1項をもう一度読もう。

「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し
夫婦が同等の権利を有することを基本として、
相互の協力により、維持されなければならない」

 

 

「戸籍続柄裁判」

1999年11月22日  東京地裁提訴
_______________________________________
2004年3月2日   却下
_____________________________________________________
2004年11月1日   「長男」「長女」に記載が変わる
_____________________________________________________
2005年3月24日    東京高裁 棄却
_____________________________________________________
2005年11月18日  最高裁 棄却

「婚外子住民票続柄裁判」

1988年5月9日   東京地裁に提訴
_____________________
1991年5月23日    棄却
_____________________
1995年3月1日   前年、12月の自治省通達により
       「子」に統一 全国一斉改製
_____________________
1994年10月31日   東京高裁判決 指定日
  ↓      1度目の延期
  ↓      2度目の延期
1995年3月22日  東京高裁判決
        「訴えの利益なし」
   (3週間前に記載を「子」に統一したので)
         差別記載は違憲
_____________________
1999年1月22日  最高裁  棄却

続柄表記の改正

保険証  1991年2月  「子」に統一

住民票  1995年3月  「子」に統一

戸籍   2004年11月  「長男」「長女」申し出制

出生届    今は問題にすらされていない

婚外子に対する差別法制度

出生届  「嫡出子」「嫡出でない子」にチェックさせる

 

     母が出生届を出す時は「母」として提出
     することができるが、父は「同居人」と
     してしかできない
     しかも、同居をしていない場合は
     提出資格すらない

 

戸籍    続柄欄での差別表記、一目で婚外子とわかる

 

     婚外子は、母のみとの続柄とされ、
     父母の続柄が記載されない

 

氏     婚外子の氏は母の氏

     父の氏への変更には、家裁の許可が必要
     しかも、父に法律上の妻がいて反対した
     場合は不可

 

親権    父母共同親権ではなく、母のみの親権

 

税制上   婚姻後に夫が死亡、あるいは離婚した場合に
     受けられる寡婦控除が未婚母子には適用され
     ないため、保育料等の額が多くなる

 

養子縁組  婚外子の母が、子の父以外の男性と結婚する
     時、男性と子は養子縁組をするが、それだけ
     ではなく、母との養子縁組も強制される
     (民法795 1987年改正)