国際結婚 ニュージーランド 児玉律子 「Voice」2006,3-4月号(166号

国際結婚 ニュージーランド 児玉律子

職業柄、結婚披露宴への招待も多い。
◯◯家・××家控室・◯×家結婚式場・
◯×家披露宴会場と大きな表示・祝辞・
引き出物・挨拶状等など、
数えれば限りなく「家制度」の完成である。

娘の結婚では「家」はご免蒙りたいと切望
していたが、昨年の春に結婚式を迎えた。
幸い相手は「家」とは全く無縁の典型的な
キウイ(ニュージーランド人)・ハズバンド。
世界一理想的な夫とのこと。

NZ(ニュージーランド)の結婚についてVoiceに
紹介したいと娘に問い合わせたところ、先ず
下記の点を紹介してほしいとのメールが来た。

娘からのメール
NZと日本の大きな違いは、NZが移民国だということ。
約1000年前から先住民マオリがすんでいて、
1840年頃にイギリス方面から大移民団が、
その後ヨーロッパ諸国・ポリネシア諸国・中近東・
アジア等からも移民団が来て、現在のNZが形成された。
今現在の人口約410万人のうち、マオリの
人口はわずか15パーセント、そのマオリでさえ
純血はほとんどいないと言われていて、人種・文化
も多種多様で、結婚式のやり方・仕来り・姓の選択
も千差万別、型にはまった様式はありません。
当然のことですが、戸籍制度も住民登録も住民票も
全く存在しない、それが日本との決定的な違いです。
NZは立憲君主制、英国君主制が国家元首(エリザベス
2世)でイギリスからの影響もありますが、歴史も
浅く小さな国で小回りがきき、その時代時代に
合わせて次々に新しいものを取り入れています。
例えば同性同士のカップルに結婚(marriage)と
同じ法的権利を与えるジビルユニオン
(Civil Union)法が一昨年施行され、これまでに
約700組が届出をしています。
最近では、栗栖カーター環境大臣が33年越し
のパートナーとシビルユニオン婚式を行い、
ヘレンクラーク首相も参列して2人を祝福しました。
もちろん、事実婚(ディファックト=defacto)
も認められていて、事実婚やシングルマザー
も非常に多いです。
婚外子への差別のみならず、
婚外子という概念も全くありません。
なお、シングルマザーの育児手当は手厚いので
、最近は父親はいるが、虚偽のシングルマザー
が多くなり、国民から批判の声があがって、
政府の頭痛のたねになっています。
出生率は伸びていますが、日本とは
別の問題を抱えています。

ニュージーランドの結婚
1 結婚式前に結婚証明書(Marriage Certificate)
を国に発行してもらいます。
2 挙式の場所はレストラン・自宅・ガーデン
・ビーチ等で,国の資格取得者の儀礼執行人
(Marriage Celebrant)の立ち会いのもとで人前式。
教会で式をする場合は牧師さんが婚礼執行人
になります。
婚礼執行人はどんな場所でも出張が可。
娘の場合はレストランに出張してもらって、
費用は約$200(1万6千円)を支払ったそうです。
3 挙式の流れは、婚礼執行人の話、お互いの
誓いの言葉、事前に発行してもらっていた
結婚証明書に新郎新婦が署名。
その後、新郎新婦の証人(Witness)2名が署名、
証人は親兄弟姉妹に限らず友人でも可。
最後に婚礼執行人の署名が書き込まれて結婚が成立。
役所への書類の届出も執行人がしてくれます。
4 姓の選択は自由。
戸籍のない国ですから、姓は変貌自在。
姓は同性や別姓。
その他妻と夫の姓をハイフン
で繋いで両姓を名のっている人もいます。
例えば佐藤花子さんが、ジェームズ氏と結婚
した場合、Hanako(名)Sato-James(姓)な
ど。
日本人女性とNZ男性の国際結婚カップルの場合、
日本の戸籍には日本の姓を残して夫婦別姓にして、
NZでは夫の姓にする夫婦同姓も多い。
この場合、日本のパスポートの姓は日本姓のまま
で()をつけて夫の姓を入れることもできます。
娘の場合はパスポート・クレジットカード・
銀行口座は自分の姓で、夫と共有名義の口座は
夫の姓、仕事や夫婦同伴のパーティなど公の場
では、実益に応じて自分の姓を名乗ったり、
夫の姓を名乗ったりしているようで、
今のところ全く問題ないそうです。
NZ人同士のカップルの場合は夫婦同姓が多く、
医師・弁護士・大学の先生など、仕事上旧姓
の方が都合の良い人に夫婦別姓が多いようです。
5 子どもの姓も自由。
両親が夫婦同姓の場合は両親と同じ姓にします
が、子どものミドルネーム上に母親の旧姓を
付けたりして工夫している人もいます。
両親が別姓の場合は父親の姓をつけて
いる子どもが多いようです。
娘の友人は夫婦別姓ですが、日本の戸籍は母親
の姓で届出をして、NZでは父親の姓にしています。
6 結婚しても女性は仕事を持ち続け、
仕事を辞める人はほとんどいません。
出産の際には国が定める期間は産休があり、
産休の延長を希望すれば、最大12ヵ月までは
無休ですが仕事を休むことができ、産休期間は
法律で定められているので、雇用主は産休中の
人を解雇することはできません。
NZは1893年に世界で一番早く女性が選挙権
を獲得した国で、1997年から今現在までの
10年間、女性首相がこの国を支えています。
7 一般的に家事は夫が手伝うのではなく、
分担するのが当たり前で、男性はよく働きます。
8 招待状やお祝い。
招待客は妻や夫や子ども
家族全員で出席し、娘の場合はほとんど
夫側の招待客でしたが120人。
それでも普通の数だそうで、お祝い金や会費の
習慣がないので、プレゼント形式で気楽に
出席できます。
最近は事前に欲しい品物を聞いて、効率的に
デパートなどの品物券をお祝いにしているようです。
9 結婚式と披露宴。
会場の掲示も自由で、
新郎新婦の名前だけやフルネームの掲示もある
そうで、娘の披露宴会場にはありませんでした。
式の進行は、NZの人はパーティー慣れしているので、
司会を雇うことはなく、友人や親戚の司会が多いようです。
日本のように新郎新婦・両親・仲人が入口に
立って来客を出迎えたり、見送ったりする
習慣もありません。
パーティーは夜遅くまで延々と続くので、
招待客は帰りたい時に各自が新郎新婦に
挨拶して帰って行きます。
娘の結婚式当日、開始時間は5時でしたが、
娘と私たちは6時に到着しました。
理由は披露宴が長時間になるので、遠路から
出席する私たちへの配慮とのこと。
新郎と招待客は5時から楽しそうに
宴会を始めていました。
結婚式や披露宴の流れにも、形式や時間の
束縛はなく、娘の時は婚礼執行人が到着する
7時まで、来客は飲み物で談笑して宴会、
新郎新婦と親族は写真撮影など、婚礼執行人
が到着すると挙式は自然に開始され、終了後
に本格的な披露宴が夜遅くまで続きました。

娘の結婚模様
娘の夫は母親が中国人、父親がアイルランド人です。
娘なAucklandに住んでいますが、飛行機で1時間
ほどの夫の故郷Wellingtin(NZの首都)で、
レストラン婚式をしました。
結婚式当日、娘は宿泊ホテルの自室で、友人の
手伝いで髪もメークも自分で、日本で作った
ドレスも自分で着て、ブーケは友人の手作り。
「着付けもブーケもプロに頼んだら良かった
のにね」
「日本じゃないから誰も気にしない」
会場へ行くタクシー内で、激しく母子喧嘩。
会場に到着すると、宴会はすっかり盛り上がって
いて、新婦はみんなに祝福され、その後は
レストラン中2階にある1階の会場から
丸見えの部屋(空間?)で家族写真撮影。
婚礼執行人のシーナさん(白いクロスが掛けて
あるだけ)の前にシーナさんと新郎新婦が
向き合って立ち、シーナさんの長い説教が始まり、
その後に誓いの言葉、新郎新婦の署名、
証人の署名、娘の証人は私がしました。
シーナさんが帰ると披露宴開始。
新郎新婦の特別な雛壇席はなく、中央の家族の
テーブルに2人の座席はありました。
披露宴の挨拶にも形式はありません。
娘の場合、日本では娘の親族と友人、NZでは
新郎の親族と友人を招待して、費用も別々に
披露をしましたので、日本では新郎新婦だけの
挨拶、NZでは新郎新婦の挨拶の後、新郎の父親
が私たちと招待客に感謝の挨拶と新郎の友人が
お祝いの挨拶をしました。
その後に食事が運ばれてきて、特別な余興
などはなく自由に談話。
新郎新婦は会場を回って挨拶し、新婦は
抱きしめられて祝福され、幸せいっぱいである。
いろいろカルチャーショックも受けましたが
、NZ人の素朴で温厚な人柄、洗練された
コミュニケーション能力、楽しい時が
ゆっくり流れていきました。

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