不幸せな結婚の離婚を認めない判決 イギリス

今日、御紹介するのは少し前のBBC  News JAPAN の
ニュースからですが、離婚の申し立てをイギリスの
最高裁が認めなかったという2018年7月26日の記事。

 

不幸せなので夫と別れたいと訴えたのはイギリス中部
ウスターシャ州に住むティニ・オーウェンズさん(68)。
40年間の結婚していた夫・ヒューさんとの離婚を
希望していますが、夫は拒否しており、
訴訟は最高裁まで争われることになりました。

 

最高裁が全会一致で下したのは、オーウェンズさんの
申し立てを退け、現行法が定める通り2020年まで
離婚できないとの判断でした。

 

 

(地図/「Fragments」)

 

 

イングランドとウェールズで離婚が認められる要件
としては、結婚生活が破綻していることを証明し、
以下の理由のうちの1つを挙げなくてはなりません。

・浮気
・理不尽な行動
・結婚生活の一方的放棄
・2年以上の別居と双方による離婚への同意
・配偶者が離婚に同意していないが、
少なくとも5年間・別居している

 

ということから、2015年から別居をしている
オーウェンズさん夫妻は、同意がないため2020年
までは離婚できないとの判断を下したのです。

 


下級審では、オーウェンズ夫妻の結婚生活が破綻して
いると認めましたが、妻があげた理由は「根拠が薄弱
で誇張されている」との判断をしてしていました。

 

この判決にオーウェンズさんは
「精神的に打ちのめされた」おり、
「彼女の人生は前に進むことができない」
とオーウェンズさんの弁護士は語ります。

 

イングランドとウェールズの現行法では、
配偶者の同意がない場合、浮気や理不尽な行動、
逃避などで結婚生活が破綻していると証明できない
限り、最低5年間の別居が離婚が定められる条件
となっています。

 

英司法相は、判決を受け
「離婚をめぐる現在の制度は、ただでさえ困難な
状況の中で、敵意を不要に生み出しています。
政府はすでに、制度改革の可能性を検討している」
と述べています。

 

1978年に結婚したオーウェンズ夫妻の間には、
2人の成人した子どもがいます。
ティナさんは、2012年には離婚を考え始めたといい
ますが、2015年2月までは別居をしていませんでした。

 

2人の関係は修復できないところまでいっていると
ティナさんは主張します。
ヒューさんが同居を続けるのが常識的に不可能な
行動をとったということです。

 

ですがヒューさん(80)は、離婚に同意しておらず、
またティナさんがいうような行動もしていないと主張。
もし2人の関係が修復不能なまでに破綻している
とすれば、ティナさんが浮気をしたか、あるいは
「退屈」しているからだと反論しています。

 

最高裁は、今年5月に開かれた審問で「理不尽な」
行動や、「過失」をめぐるさまざまな法的主張を
検討した結果、25日に判断を下しました。

 

裁判官の1人、ウィルソン卿は、ティナさんの訴えを、
法廷が「ためらいつつも」退けたと説明し、現行法
の問題は議会で解決されるべきだと指摘しています。

 

一方、ヒューさんの弁護士は、文書で
「自分の結婚を救おうとする当人の努力が不当に
批判される」べきではないと述べ、
「ヒュー・オーウェンズさんは、自分や妻の私生活
に打撃を与えるこの経緯を喜んでしているわけで
はない」と述べています。

 

妻・ティニさんの弁護士であるサイモン・ベックルは、
最高裁には「今後を見据えた、現在の社会的規範に沿う」
判断をして欲しかったと語りました。

 

最高裁長官のレディ・ヘイルは、今回の裁判が
「非常に憂慮される」案件だったものの、法改正は
裁判官の役目ではないと述べています。

 

今回の訴訟は、イングランドとウェールズの離婚法が
改正されるべきかをめぐる議論に火をつけました。
離婚法を専門とするキャロライン・エリオット弁護士は、
「他国に比べてイングランドとウェールズの離婚法は
かなり立ち遅れていて、『無過失離婚』の導入など、
改革を求める空気が強まっている」と述べています。

 

ティナさんの担当弁護士らは、崩壊者に焦点を当てた
「穏やかな変化」が必要だと主張しています。
ティナさんが夫の「理不尽」な行動の立証を求められる
のではなく、結婚生活の継続が「常識的に不可能」
だと証明すれば良いはずだとも。

 

ヒューさんの弁護士チームを率いたナイジェル・
ダイヤー勅選弁護士は、これに反論し、「任意」で
離婚が可能になることへの懸念を指摘した。

 

最高裁判事の一人は、オーウェンズ夫妻の訴訟に
ついて「全く気が乗らない」判断だったとしましたが、
任意の「無過失離婚(no fault divorce)」を導入する
かは議会が決めなくてはいけないと語りました。

 

別の裁判官は、「惨めなくらいに不幸せな結婚生活」
は離婚の理由にならないと、議会によって
「定められて」いると述べています。

 

《クライブ・コールマン司法担当特派員の解説》
最高裁の判断がこれほど多くの人を、ここまで不安
にさせることは稀だ。
レディ・ヘイル長官は「非常に心悩まされる判断」
だと述べ、ウィルソン卿やマンス卿も「居心地の
悪い気持ち」だと口を揃えた。
なぜか。
離婚を成立させるため、お互いに責任をなすりつけ
合うことを強いる法律への深い違和感が存在するからだ。
相手の過失を攻めることが、すでに困難で多くの
ストレスがつきものの離婚手続きで、問題や対立を
さらに深刻にしていると、多くの人は考えている。
米国やオーストラリア、スコットランドで認められて
いるような「無過失離婚」への変更を求める声が
これまでもあった。
家庭裁判所で裁判官を務めていたバトラー=スロス
女男爵は現行法の改正を議員立法で提出している。
しかし、イングランドとウェールズですぐに法改正
が実現するのは見込み薄だ。

 

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