規約人権委員会 ジュネーブ 1993.10.27(水)1278委員会

1993.10.27(水)1278回委員会 午後3時〜6時

規約人権委員会

 

(渡部、法務省国際課長)

私は、日本語で発言します。
まず、婚外子の問題について、民法第900条4号但書
は、被相続人について,非嫡出子と嫡出子でない子
の双方があり、かつ被相続に人が遺言により相続分
を定めなかった場合の嫡出でない子の相続分は
嫡出子の2分の1としているわけであります。

すなわち、我が民法は、相続人が嫡出子のみで
ある場合と、相続人が嫡出子でない子のみで
ある場合について、その相続に差異を設けては
いません。

また、被相続人が遺言によって自己の相続人で
ある嫡出子でない子に対して、自己の相続人で
ある嫡出子と同じ、またはそれよりも多い相続
分を与えることも否定していません。

ただ、被相続人がそのような遺言をしていない
場合にのみ、嫡出子と非嫡出子でない子の相続
分に差異をもうけているものであります。

この規定の目的は、正当な婚姻関係にある夫婦
とその間の子から形成される、正当な家族関係
を保護しようとすることにあります。

我が国の法制は、一夫一婦制の下で、夫と妻
およびその間の未成熟の子を家族の基礎的単位
としています。

正当な婚姻関係によって形成された家族
の保護は、憲法上の要請でもあります。

この観点からすると、正当な婚姻関係から
出生した子と、そうでない子との利益が
対立する場面において、正当な婚姻関係
から出生した子の利益を図ることによって
家族の保護を図ろうとしているのが
民法900条4号但書の規定であります。

その目的は、合法的なものであります。
また、相続は、私有財産性の維持の観点から
被相続人の死亡により帰属を失うことになる
財産を、誰に承継させるかという問題であります。

これを相続人の側から見ますと、被相続人
の死亡に伴う反射的利益としての性格が強い
のであります。

相続分に差異を設けることによる不利益は
人が本来有する権利を剥奪することによる
不利益に比べれば、小さいのであります。

目的の合理性と較べても、不当な差を
設けるものとはいえないのであります。

なお、本規約が23条において家族制度を
社会の自然かつ基礎的単位として認めて
いること、国連事務総長によって出された
規約の草案注釈の内容、それから本条約
の審議経過に照らしますと、相続に関する
事項について、嫡出子と非嫡出子との間の
区別を廃止することを要求するものと
解することはできません。

民法900条4号但書は、本規約に
抵触するものではないと考えます。

なお、この規定につきましては、我が国内
でも憲法の規定、本規約に違反するとの
意見もあります。

これと同じ見解に立つ高等裁判所の
判決もございます。
先ほど、委員がリファーされたのは
この判決でございます。

他方で、この規定は、憲法および本規約
の規定に反するものでないとする高等
裁判所の判決もあります。

この点に関する最高裁判所の
判決は、いまだ出ておりません。

一方、この問題に関します国民
の意識について申し上げます。

1979年に実施された世論調査によりますと
嫡出子と嫡出子でない子との相続分を平等
とすることに賛成するものが16パーセント
であります。

これに反対するものが48パーセントでございます。
法務省におきましては、1979年7月、司法界
や大学、婦人団体等の関係各界に意見を
求めました。

この時点でも、先ほど話したとおり、国民の
反対が多かったうえ、関係者の意見も国民
感情に反し、時期尚早であるとの反対意見
が少なくありませんでした。

そのため、嫡出子でない子の相続分は、
嫡出子である子の相続分と同等とすると
いう案について、改正を見送りました。

また、1980年の相続法の改正に関しまして
国会審議の際に反対意見も述べられています。

そのため、嫡出子と非嫡出子の相続分を同等
とすることについては,国民の合意が得られ
ていません。

この問題は、正当な婚姻による妻や子等の
家族の保護と、嫡出子でない子の保護との
調和という観点から、立法政策上の問題と
して解決を図るべきだという意見も強い。

今後も、このような取り扱いを維持するか
否かにつきましては、国民の価値観の変化、
国民世代の動向等を見極めながら、慎重に
検討する必要があると考えています。

次に、戸籍面についての問題についてお答えします。
子どもが認知されました場合には、民法
791条1項の規定により、家庭裁判所の許可
を得て父の氏を名のることができるように
なっております。

婚外子の数について質問がありましたので
お答えいたします。

 

 

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