「出産期待され悩み苦しんで」
予備校講師 沼尻玲子(札幌市 38歳)
結婚したとたん周囲から子どもを産むこと
を暗黙のうちに期待され、そして子どもは
男児であることを望まれる。
それを役割だと受けとめ周囲の期待に応えたい。
同時に、ただ子どもを産むことのみを求められる
自分の存在意義とはなんだろうかと言う、
二つの想いのあいだで深く深く苦しむ——。
これは今でも多くの女性が経験していること
ですが、家の跡継ぎの妻という立場でなければ、
同じ女性でも分かってもらいにくい問題です。
まして、男性には理解できないかもしれません。
私自身、跡継ぎとして婿養子をとり、結婚して
すぐに「子どもは」と問われました。
「あぁ、私はもう子どもを産む機械でしかないのだな」
と思った瞬間、言葉に表せないほど自分を強く
否定されたような気がしたのを覚えています。
その数年後、自分の意志で離婚しました。
私には生きたい人生があります。
しかし、年老いていく両親を見ると
自分の不甲斐なさを思うのです。
二つの思いに心が引き裂かれ、
一日に何度もその痛みを感じます。
独りで苦しまず周囲の人と心を交わして、
自分の心に少しずつ折り合いをつけ、
回りの人をも満たすように出来れば
いいと思うのですが……。