婚外子の続柄差別廃止 12月5日 北海道新聞 戸籍6 

古川有子

法律上の結婚をしていない男女間の子ども
(婚外子)の戸籍の続柄が 「男」「女」と
表記され嫡出子と区別されていた問題で
法務省は11月から嫡出子と同じく、「長男」
「長女」などという表記を採用し統一を図った。

しかし、婚外子がこれまでの記載を変更
するには、本人や母による申し出が必要で
変更できること自体を知らない人も多い。

このため、専門家から「国が責任を持って
記載をあたらめるべきだ」との批判も出ている。

変更のきっかけとなったのは,事実婚の
田中須美子さん、福喜多昇さんとその長女
=東京都在住=が「戸籍の続柄欄における
差別記載の差し止め」を求めた裁判だ。

東京地裁は今年3月、「婚外子と判別できる
記載はプライバシー権を侵害する」との
判決を出した。

これを受け、同省が戸籍法施行規則を改正した。
この結果、戸籍表記での婚外子差別はなく
なったかに見える。

しかし、課題も残ったようだ。
田中さんは
「表記を『長男』『長女』などとするよう
統一した点と、既に記載されている婚外子
だけ申し出によって変更するとした点は
大きな問題」 と指摘する。

まず、改正に伴い、嫡出子は父母との続柄
で「長男」「長女」などと記載されるのに
対し、婚外子は母との場合、同性だといず
れの子も「長男(長女)」の表記となり、
結果的に婚外子と判別できてしまう。

田中さんは
「家制度下の長男、長女という序列付け
はやめ、住民票のように、嫡出子も婚外子
も『男』『女』と表記すべきだ」
と主張する。

一方、変更手続きの方法が十分に周知
されていない問題もある。

札幌に住む婚外子の女性は言う。
「頼んで『女』に記載してもらっていた
わけではないのに、それを訂正するのに
なぜ本人が申し出なくてはいけないのか。
自分は婚外子だと申し出るのは精神的な
負担が大きい」
と怒る。

このような状況に対し,家族をめぐる
問題に詳しい布施晶子・札幌学院大学長
(家族社会学)は
「これまで国の職権で戸籍の続柄記載」
続柄で記載されるようになったことに
よる問題がある。

例えば、同じ母が嫡出子と婚外子を出産
している場合、同じ戸籍の中に長男が
二人存在したり、二男よりも年下の長男
がいるという事態も起こりうる。
子を持つ法律上の夫婦が婚姻関係を解消し
「事実婚」を選んだ後に出産した場合など
に発生するケースという。

 

 

 

法務省通知
嫡出でない子の戸籍における父母との続柄の記載の更正及び訂正並びに申出による戸籍の再製について(通知)2010.3.24 戸籍5 

法務省民事第一課長

嫡出でない子の戸籍における父母との続柄
の記載については、平成16年(2004年)
11月1日付け法務省民一第3008号民事局長通達
(以下「3008号通達」という)
に基づく取扱いがされているところ、標記に
関する戸籍事務については、下記のとおり
取り扱うこととしますので、これを了知の上、
貴管下支局長及び管内市区町村長に周知取り
計らい願います。

 

1 更正の申出の対処となる父母との続柄の記載

(1) 事件本人が現に在籍している戸籍(以下
「現在戸籍」という。)に事件本人を婚姻等により
除籍した記載(以下「除籍記載」という。)がある
ときは、当該除籍記載中の父母との続柄の記載に
ついても更正の申出の対象とすることができるもの
とする。

 

(2) 3008号通達に基づく戸籍事務の
取扱いの開始後、事件本人の現在戸籍中の
除籍記載以外の部分の父母との続柄の記載
は更生されているものの、除籍記載中の
父母との続柄の記載が更生されていない場合
において、当該除籍記載中の父母との続柄
について更正の申出がされたときは、父母
との身分関係を記載して申述書(3008号通達2
(3)ウ)の添付を求めることなく、当該
現在戸籍中の訂正済みの父母との続柄の記載
に従って更正をするものとする。

 

2 親子関係不存在確認後の裁判が確定した
ことによる父母との続柄の記載の訂正

(1) 親子関係不存在確認の裁判が確定した
ことにより、事件本人を嫡出でない子とする旨
の戸籍訂正の申請がされた場合には、事件本人
(事件本人が15歳未満のときは、法定代理人)
又は母から提出された申述書等に基づき、嫡出
でない子の父母との続柄を認定した上、「長男
(長女)」、「次男(次女)」等の記載に戸籍
の訂正をすることになるが、その訂正が関連す
る戸(除)籍に及ぶときは、現在戸籍のみなら
ず、当該関連戸(除)籍についても、上記認定
に基づき、父母との続柄の記載を訂正するもの
とする。

 

(2) 3008号通たるに基づく戸籍事務の
取扱いの開始後、現在戸籍中の父母との続柄
の記載は「長男(長女)」、「次男(次女)」
等に訂正されているものの、関連する戸(除)
籍中の父母との続柄の記載が同時に訂正され
ていない場合において、当該関連戸(除)籍
中の父母との記載について当該現在戸(除)
籍中の父母との続柄と同様に訂正する旨の
申出があったときは、父母との身分関係を
記載した申述書の提出を求めることなく
当該現在戸籍中の訂正済みの父母との続柄
の記載に従って市区町村長限りで職権訂正
するものとする。

 

3 申出による戸籍の再製
3008号通達及びこの通知に基づき戸籍の
父母との続柄の記載が更生され、又は
訂正された場合において、申出人から
当該更正又は訂正に係る事項の記載の
ない戸籍(除籍及び改製原戸籍を含む。
以下に同じ。)の再製の申出があった
ときは、3008号通達4に基づき(又は
準じて)戸籍の再製をすることができ
るものとする。
なお、上記戸籍の再製の申出は、戸籍
の父母との続柄の記載の更正又は訂正
の申出と同時にされる必要はない。

 

 

戸籍続柄裁判に寄せて 澤田省三(志学館大学法学部教授)(「Voice」106号 2002.2) 戸籍4  

昨年11月22日戸籍続柄表記訂正等請求の
訴えが東京地裁に提起された。(略)

住民票続柄裁判に続いての訴え提起となるが、
淡々としたお話の節々に見られた静かな闘士
に深い敬意を抱きつつしかしその裏には
「至極当然の主張をすることになぜこれだけ
のエネルギーと時間をかけなければならない
のか」という忸怩たる想いもお持ちであろう
と推測していた。

この裁判で原告が主張されている請求の正当性
(とりわけ嫡出子と嫡出でない子との区別記載
の不当性)とその根拠は「訴状」にすべて網羅
されているといってよい。

公平にみてこの主張を退ける理由を見いだす
ことは今日ではかなり困難であるように思われる。

その理由は訴状に明らかにされているので
同じことをここでくり返すことは無用の
ことであろう。

今回の訴えは民事訴訟として人格権に基づく
差し止め請求という形をとられていることも
一つの特徴であろう。

住民票続き柄裁判での経験を活かして
おられるのであろうと推測する。
いずれにしても裁判の展開に注目したい。

「続柄」を戸籍に記載する意義は少なくとも
実体法レベルの問題では最早存在したいことは
ほぼ異論のないところではなかろうか。

「法の建前としては、長男でも次男でも何にも
区別のないのが原則なのに、戸籍の上で何とか
書こうとすることが、何より問題なんだ」

(唄孝一『戸籍1・出生』戸籍セミナー(1)
・青木義人他ジュリスト選書・有斐閣394頁)、
「戸籍が本来法律で要求されていないことまで
問題を自分に抱え込んでいるようなものだと思う」
(青木義人・前出396頁)という指摘は
正鵠を得ているように思われる。

むしろ実態法との関連でいうなら
必要な公示は「性別」の方であろう。

「本来からいえば戸籍法では性別を明らかに
しろということをまともに規定しておいて
然るべきですが…」
(青木義人・前出399頁)、それを「続柄」
の表示で兼ねたというところが本末転倒で
あったということであろう。

現行の嫡出でない子についての続柄欄表示の
「女(男)」はどのような意味でも特定の人
との関係における「続柄」表示ではありえない。
融通無碍もいいところではないか。

なぜこのような不合理な扱いが改善されない
ままに時が過ぎていくのであろうか。

それは結局のところ1996年2月に取りまとめ
られた「民法改正法律案要綱」(法制審議会答申)
に基づく法改正が棚上げされて一向に実現しない
ということに帰着するように思われる。

この要請では選択的夫婦別氏制の採用等の問題
とともに「嫡出子」と「嫡出でない子」の法定
相続分を同等とする問題も含まれている。

1996年2月3日読売新聞夕刊の記事によれば、
「嫡出・非嫡出子の記載 戸籍上も区別廃止
法務省方針」と題する報道がなされている。

これは前記の相続分に関する改正が実現すると
従来区別記載の理由としていた唯一の根拠が
なくなることを前提にした措置(方針)で
あることは明らかであろう。

しかりとすればこの法改正が速やかに成立
していれば少なくとも今回の裁判における
区別記載の差し止め請求は不要であった
ともいえるのである。

ところが政府・自民党はなお世論の動向を
見守る必要がある(正当な理由のない時に
使われる常套手段であり、逆に真に世論の
動向を見極める必要のある時は一顧だに
しない)などを根拠に棚上げして全く熱意
を示さない。

ところが、こうした人権に関わるしかも
国際的にも批判を浴びている問題に全く
無関心かと思うとそうでもないらしい。

同じ政府が「男女共同参画社会基本法」
という少なくとも内容的には意味ある
法律を成立させているのである。

しかしこの法律の理念に即して考える
なら前記の民法改正など真っ先に成立
させてこそ初めて評価できると思うのだが
「それとこれとは別」というのが真相の
ようである。

同じ政府・与党の意思が明らかに
矛盾しているのである。

しかし問題の本質はそのような民法改正
という事実を待たずとも改革は可能で
あるということである。

民法に手を付けることなく改革は
十分に可能かつ必要なのである。

振り返ってみれば住民票続き柄裁判
は1988年5月に提訴された。

最高裁で決着したのが1999年1月であった。
実に10年余の歳月を要している。

その間東京高裁判決(1995年3月22日)
の直前の1995年3月1日から自治省は
従来の態度を改めて住民票の続柄欄の子
の記載については、全て「子」と統一
記載する扱いとしてのである。

しかし、この態度変更は住民票続き柄裁判
のもたらした成果であることは否定できな
い事実であろう。

もし住民票続き柄裁判の提起がなかった
としたら果たしてこのような結果を見て
いただろうか。
疑問であろう。

今回の戸籍続柄裁判の提起を見てこの裁判が
住民票続き側裁判と同じような経過を辿るの
ではないかという危惧をもっている。

決してそうではない早期の明快な判断による
決着と速やかな戸籍上の是正措置の実現を
期待したい。

正義とか公正とか公平という民主主義社会
の基本を支えるキーワードがほとんど死語
になりつつある社会はとても健全である
などとはいえない。

同様に人間として生きる基本な権利として
万人に等しく保障されている「人権」の
実現が常に被害者である少数派に属する
人々の必死の闘いによってしか達せられ
ないとしたら何と寂しい社会であろうか。

21世紀を指呼の間にして私たち
一人一人の生き方が問われている。

戸籍続柄裁判もそのような視点で見守って
いきたいと念じている。
      (2000年1月8日)

 

 

ここまでできる戸籍の写し省略 戸籍3

戸籍抄本とは、戸籍に載っている一人の人
(たとえば四人のうちの一人とか二人とか)
の写しと思っている人も多いと思います。

(自治体の窓口職員も法務局の職員でも
そう信じている人が多いです)

ところが、戸籍抄本とは
「戸籍原本に記載されている事項のある部分
のみを謄写し作成したものをいう」
(法務省民事局編「戸籍基本先例集」
1971年 P,129 P180 P181)ということです。

さらに明治42年4月5日付民刑第223号民刑局長回答
によれば、「請求する人の要求によって、
いかなる部分も省略することができる」

とされ、また

「父母欄の記載をして父母との続柄欄の記載、
生年月日の記載を省略することは認められる
と考えられる」

とのことです。

省略された抄本をとる場合、窓口職員は抄本の
意味を知らない人が多いので、この回答や先例
を知らせ説得する必要があります。

これまで渋谷区・調布市・三鷹市・横浜市でも
とれましたし、東京法務局でもとれることを
確認しています。

戸籍の省略したものをとる場合は、「一部事項
証明書」を請求

この「一部事項証明書」とは、
戸籍法施行規則第73条で
「戸籍に記録されている事項中の証明を
求められた事項」とされています。

(ちなみに戸籍の中の全員ではなく個人のみ
〈一人とか二人の〉の記載事項全部の写しが
必要なときは、個人事項証明書といいます)

電算化された戸籍の場合は、二つの意味を
持っていた従来の「戸籍抄本」(必要なもの
以外は省略する抄本の意味と、戸籍に記載
されている人のうち一人とか二人の人の
記載事項全てを証明するという意味)が
「一部事項証明書」と「個人事項証明書」
の二つの様式として分離したものです。

このため、この一部事項証明書を請求すれば
自分の求める必要な事項だけが記載された
ものをとることができます。

父親欄が空白であっても省略できるか
否かが問題になることは全くありません。
自分の必要とする箇所だけをとればよいからです。

「戸籍法施行規則第73条の規定により(本来
は書く必要はないのですが、念のため)、
下記事項についての一部事項証明書を申請する」
と記載し、求める必要事項を書いておけば
大丈夫です。

 

 

 

戸籍届書等に元号ではなく、西暦で記載OK! 戸籍2

「Voice」 田中須美子

戸籍届書等は、元号ではなく
西暦で記載することもできます。

その根拠は、法務省通達や
元号法案審議答弁にあります。

出生届等の戸籍届を役所に出す際、元号は
使いたくない、西暦で記載して出したいと
思われる方はたくさんいます。

私たちもこれまで出生届の書き方見本などで、
元号を拒否しようと呼びかけてきました。

これまでは西暦で書いてもそのまま訂正されず
に受理されてきたのですが、最近は市区町村や
法務局によっては訂正させるところも出てきました。

窓口でNo!といわれた時、即反論し西暦のまま
受け取らせる根拠は以下の2点です。

 

● 元号法国会審議で「元号を強いるべきではない」
との政府答弁

元号法は1979年6月6日に国会で成立し、
6月12日に公布施行されました。

戦後旧皇室典範が廃止され元号使用の
法的根拠がなくなり、昭和がそのまま
慣習として使われてきましたが、
「元号を制度として明確に安定したもの
とするため、根拠を法律で明確に規定する
必要がある」と法案が提出されました。

この国会審議では、「元号法制化は天皇主義
の明治憲法に戻ることになり、主権在民の
憲法理念に反する」との反対意見や、
「元号を国民に強制するべきではない」
との意見などがあり、時の大平正芳総理大臣
に変わり三原朝雄国務大臣が以下のように
答弁しました。

「法案には元号の使用を義務づける規定はない。
政府としては元号の使用を強いることは
すべきではないと考えている」。

決して元号を強いるものではないとの答弁でした。

〈元号法〉
1 元号は、政令で定める。
2 元号は皇位の継承があった場合に限り改める。

● 法務省、西暦を記載した戸籍届出はそ
のまま受理するよう通達
元号法が成立した
すぐ後の6月9日付けで、法務省は「年の
表示方法として西暦を用いて届出等がなさ
れた場合においても、市区町村長はこれを
そのまま受理する」等の通達を全国市区町村
に出しました。

この通達で西暦記載の問題は解決します。
しかしこの通達が出てから35年も経って
いるため、この存在も内容も忘れている
市区町村や法務局もあり「元号しか使え
ません」との対応がされています。

このような対応がされた時には、西暦の
まま受理するよう1979年6月6日通達が出さ
れている!と言えば、通達を調べた上で、
訂正されることなく受理されると思います。

 

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元号法の施行に伴う戸籍事務の取り扱いについて
1979年(昭和54年)6月9日
民ニ第3313号民事局長通達

本月6日元号法が成立し、12日に公布施行
される予定であるが、同法は、元号制定
の手続きを定めることを主たる目的と
したもので、国民に対してその使用を義務
づけるものではない。

したがって、元号法は、戸籍事務になんら
影響を及ぼすものではなく、今後とも、
左記のとおり取り扱うのが相当であるから、
右趣旨を了知の上、事務処理に遺憾ない
よう貴管下支局長及び管内市区町村長に
対し周知方取り計らわれたい。

1 年の表示方法として西暦を用いて
届出等がなされた場合においても、
市区町村長はこれをそのまま受理する。

2 年の表示方法として西暦を用いた
届出等を受理した場合において、
これを戸籍に記載する際には、
公簿の記載の統一を図る趣旨から、
従来通り元号をもって記載する。

なお、外国人の生年月日については、
従来通り西暦による。

3 戸籍の謄・抄本等は、原本に基づいて
作成すべきものであるから、戸籍に記載
された元号による年の表示を西暦による
表示に改め、又は西暦による表示を併記
した謄・抄本等の交付請求がなされても、
これに応じることはできない。
(通達本文は、縦書きです)

 

 

 

戸籍1 「住所」と「本籍」

戸籍には住所のほかに本籍というものがあります。
住所と同じで、都道府県ー市区町村
ー◯◯のX丁目Y番地で成り立っています。

本籍と住所が同じ人もいますが、昔の住所
だったり、祖父母の出身地だったり、誰も
住んだことのない知らない土地である場合
もあります(あなたの本籍はどこなのか、
知らない人は調べてみてください)。

住所とはわたしたちが現在、生活の拠点に
しているところ、しばらく離れて暮らして
いても(一時滞在地のことを居所という)、
家財道具を揃え、やがては帰るところです。

だから引っ越しなどで生活の拠点を移す
場合には住所変更が必要になります。

住所を記録し,証明する台帳が住民基本
台帳(住民票ともいう)で、住所地の
役所に世帯ごとに保管されています。

最近では単身世帯も増えていますが、家族
(親族グループ)ごとに暮らしています。

この親族グループを住民票では
家族ではなく世帯と呼んでいます。

というのも、住民票に記録される親族
グループは、現実にその場所に共同生活
をしている、そこを生活の拠点としている
人たちのことで、これからお話する戸籍上
の家族とは違うからです。

では次に,戸籍上の家族に
ついてお話しましょう。

日本には戸籍制度というものがあり、戸籍
には実際の家族(紛らわしいのでこれから
は実際の家族を世帯とか家庭と呼ぶ)では
なく、法律上の家族が記録されます。

法律上の家族とは法律上の夫婦関係と親子
関係(これらを総称して身分関係という)
で組み立てられる親族グループのことですが
現在の戸籍制度では、夫婦と未婚の子を
セットで記録することにしています。

この法律上の家族(これからは単に家族と
呼ぶ)を記録する戸籍のある場所が本籍
なのです。

家族の記録・証明は本籍地の役所が行います。
住所地の役所ではありません。

本籍は家族の登録地で、現実の生活とは
何のかかわりもありません。

生活の根拠地ではないので、住所と違い
引っ越しても変更することはありません。

現実の生活とは関係がないので、いつでも
どこにでも移す(これを転籍という)
ことができます。

だからまったく知らない土地を
本籍にする人もいるのです。

世帯と家族とがぴったり重なっている人は
なぜ世帯の記録と家族の記録が別々なのか
理解しにくいかもしれません。

でも,人はいろんな事情を抱えて暮らしています。
夫婦仲がすっかり冷え込んで別居しているけれど
事情があって離婚できないいカップルとか
愛しあっていて一時も離れては暮らしたくない
けれど、事情があって法律上は離婚している
カップルなど,例を挙げればきりがありません。

日本は戸籍と住民票によって、わたしたち
の暮らしを、家族と世帯の両面から記録し
証明しているのです
(外国で「家族」といえば現実の世帯を指す)。

この仕組みには便利なところもあるので
明治以降、長い間続いてきました。

でも個人の人権やプライバシーなどの観点か
最近ではさまざまな批判にさらされています。

たとえば世帯と家族が重なっていない
人のことを考えてみてください。

何らかの理由で別々な記録になっている
そこには他人に知られたくない家庭の秘密
があるかもしれません。

それをむやみに暴くことは許されない
そうではありませんか。
少なくとも市民生活のエチケットに反します。

外国にも住所(世帯)を登録する仕組みを
もつ国はかなりあります(ということは
もたない国もあるということ)が、戸籍
(法律上の家族の登録)をもつ国は
ほとんどありません。

戸籍は日本特有の制度なのです。

 

 

血縁がない父子の関係、解消を認めず 最高裁判所判断2014年

DNA型鑑定「血縁なし」
2014年7月18日
朝日新聞朝刊
父子関係の解消認めず

 

DNA型鑑定で血縁がないと証明されても、
それだけで一度決まった父子関係を
取り消すことはできない。

最高裁第一小法廷(白木勇裁判長)は17日、
3家族が争ってきた裁判の判決で、そうした
判断を初めてしました。

血縁よりも「子の法的な身分の安定」を
重視した。

 

子の身分安定優先

5人の裁判官のうち、2人はこの結論に反対した。
父子関係を116年前に定義した民法の
「嫡出推定」が、現代の科学鑑定で
否定されるかが最大の争点だった。

この日の判決では複数の裁判官が、
新たなルール作りや
立法などを求める意見を出しており、
議論が高まりそうだ。

争っていたのは北海道、近畿地方、
四国地方の各夫婦(2夫婦はすでに離婚)。

訴えなどによると、このうち北海道と
近畿の夫婦は、妻が夫とは別の男性と
交際、出産した子と交際男性との間で
DNA型鑑定をしたところ、生物学上の
父子関係が「99.99%」との結果が出た。

これを受けて妻が子を原告として、夫とは
親子でないことの確認を求めて提訴した。

一、二審はいずれも父子関係を取り消す判決
を出した。
「DNA型の鑑定結果は親子関係を覆す究極の
事実」などと指摘した。
ともに父子関係の維持を求める夫側が上告した。

これに対して最高裁は、「科学的根拠に
よって生物学上の父子関係が認められない
ことは明らかである上、夫婦がすでに
離婚して別居している。
それでも子の身分の法的安定を保つことは
必要」と指摘。

そのうえで「夫と子の間に嫡出推定が及ぶ」
として二審判決を破棄し、夫と子の父子関係
を認めた。

この判断について反対意見を出した金築誠志
裁判官は
「夫婦関係が破綻して子の出生の秘密が明らか
になっている上、血縁上の父親と新たな親子
関係を確保できる場合には、素の父子関係を
取り消すことを認めるべきだ」
などと指摘した。

一方、四国の夫婦を巡る裁判は、夫がDNA型
鑑定の結果を根拠に父子関係取り消しを求め提訴。
一審は「子の利益のため、確定した父子関係を
DNA型鑑定で覆すことは許されない」と棄却し、
二審も支持した。

北海道、近畿の裁判とは反対の判断を示していた。
最高裁も夫の上告を退け、判断を統一した。
(西山貴章)

嫡出推定

結婚している妻が出産した子は夫の子
(嫡出子)と推定する、と定めた民法の規定。
父親を早期に決めて親子関係を安定させる
ことが子の利益につながる、との考えに
もとづく。

1898(明治31)年に定められたもので、
DNA型鑑定などは想定していない。
ただし、子の出生を知ってから1年以内に
限り、夫は父子関係の取り消しを求めら
れるとしている。

 

親子認定 司法に難題
DNA鑑定、性別変更…「想定外」

DNA型鑑定だけで父子関係は取り消せない
とした17日の最高裁判決は、賛成3、反対2
と僅差の結論だった。

反対した白木勇裁判官は「科学技術の進歩は
めざましく、DNAによる個人識別能力はすで
に究極の域に達している。
このようなことは民法制定当時はおよそ想定
できなかったことだ」と指摘した。

賛成した裁判官にも「技術の発達を考慮すると、
反対意見の問題意識も十分に理解できる」
とする意見があった。

それでも判決は、
「結婚している妻が出産した子は夫のこと推定する」
と定めた民法の「嫡出推定」を優先した。

この規定は「早期に父親を確定することが
子の利益につながる」という考えに基づいた
もので、最高裁は昨年ものこの考えを示している。

「性同一性障害」で性別を女性から変更した
男性とその妻が、第三者から提供された精子
によってもうけた子を、男性の子と認める
ように求めた裁判。

血縁は明らかになく、一、二審は男性の求め
を退けたが、最高裁は昨年12月、嫡出推定を
適用して父子と認めた。

ただし、この決定も賛成3、反対2と、
裁判官の判断は割れた。

嫡出推定が問題の原因になるケースも出ている。
「無戸籍」の問題だ。
夫の暴力から逃れた妻が、その後に別の男性
と生活を始め、子をもうけるケース。

夫との接触を恐れて離婚が成立していない
ことも多く、出生届を出せば嫡出推定で
夫の子になってしまうため、出さない女性
もいる。

無戸籍で育った子らが民法改正を求めて
いるが、法務省は否定的だ。

この日の判決で、賛成した桜井柳子裁判官は
こう言及した。

「旧来の規定が社会の実情に沿わないので
あれば、裁判所で解決するのではなく、
国民の意識や子の福祉、生殖補助医療の進展
も踏まえて、立法政策お問題として検討
すべきだ」(西山貴章)

実情ふまえ法整備を/「嫡出推定」意義ある
この日の最高裁判決について、棚村政行・
早稲田大学教授(家族法)は「DNA型鑑定
偏重の傾向に警鐘を鳴らした点は評価できる
が、判決に沿えば『法的な親子』と『事実
上の親子』との間にねじれが起きる。
子の利益や生活実態が考慮されておらず、
大いに疑問だ。
実情を踏まえた法整備を急ぐべきだ」と話す。

一方、水野紀子・東北大教授(同)は
「判決は妥当だ。
DNA型鑑定だけで父子関係を覆せることに
なれば、子の身分は不安定になる。
嫡出推定は、子の養育環境を守るために、
妻の生んだ子について夫に責任を負わせる
制度だ。
鑑定で父子関係がわかるようになっても、
その存在意義は失われない」と述べた。

 

近年の『親子関係」をめぐる最高裁判断

2006年9月 死亡した夫の凍結精子で妊娠・
出産した子について、夫との父子関係を
認めず

2007年3月
代理出産を依頼した夫婦と、
代理母から生まれた子との親子関係を求めず

2013年3月
結婚していない男女間に生まれた子(婚外子)
の遺産の取り分を、結婚した男女の子
(婚内子)の半分とする

民法の規定は憲法違反と判断

2014年1月
子を認知した親は基本的にその認知を
取り消せないが、血縁がない場合には
取り消せることを認める

 

 

米国で代理出産、母子と認めず 神戸家裁支部

米国で代理出産によって生まれた子の出生届
を不受理にした兵庫県明石市の処分の
取り消しを求め

兵庫県在住の50代の夫妻が神戸家裁明石支部に
申し立てていた家事裁判で、同支部が申立てを
却下していたことが14日、わかった。

審判官(裁判官)は
「妻は卵子提供者でも分娩者でもない。
法律上の母子関係は,基準としての客観性・
明確性の観点から,分娩した者と子との間
に認めるべきだ」
とした。

夫妻は
「事実誤認がある。
子どもが誕生した経緯を十分くみとっていない」
として,大阪高裁に即時抗告する方針。

子どもは02年秋、米国で誕生。
夫妻は父母欄にそれぞれの名前を書いた出生届
を提出したが、高齢だったため、米国人女性
に依頼した代理出産だったことが明らかになり
受理されなかった。

 

 

婚外子の死後認知を認める判決

父の名前を戸籍に記載したい、と願う婚外子の男性の
死後認知を認める裁判の判決が出されました。
2018年2月21日の朝日新聞デジタルからです。

 

婚外子として生まれたさいたま市に住む
36歳の男性が、戸籍に亡き父の名前を残したい
という裁判をして、その訴えが認められました。
彼は、小中学校へ通わせてもらえずに
育ったということです。

 

自力で社会へ出てから、認知の問題が
コンプレックスだったといいます。
彼が起こした裁判は、死後認知ですが、これは
親の死亡から3年以内に、検察官を相手として
認知を求める訴えを起こすことができるものです。

 

血縁的な親子関係の有無や、DNA鑑定、証言
などをもとに総合的に判断されます。
最高裁によりますと、2016年に死後認知を含む、
認知や認知取り消しなどの訴えは263件ほど
起こされているそうです。

 

男性の裁判は、2018年1月15日、東京家裁
(堂英洋裁判官)で、死後認知を認める判決が確定。
父母の交際を直接裏付ける証拠はなかったものの
生い立ちを述べた本人尋問の供述に、整合性が
あることなどから信用できると認められました。

 

裁判の証拠になるDNA鑑定は、異母兄弟の協力が
得られずにできなかったそうです。
今回はDNA鑑定がなくても死後認知を認める判決
でしたからよかったものの、これが認めない判決
だった場合、異母兄弟のDNAしか証明方法がない時
などは、どうなるのだろうと私は疑問に思いましたが。

 

男性は生い立ちを供述した他、父の戸籍や、父から
の電話の着信記録などを提出しています。
判決の確定後、内容に目を通ししばらくの沈黙のあと
男性はぽつりと言いました「苦しかった」
「ここからは自分で人生を作っていく」
と言いました。

 

2月15日、父のな目を戸籍に記載するために市の
窓口を訪れ申請。
男性が持参した謄本の、空欄だった部分を指して
「ここに乗ります」と説明された時は、ほっとしたと
いうことです。
男性は今もPHSに、父からの着信記録の残しています。