佐藤文明さん死去 戸籍13

2011年1月3日,多くの人たちに戸籍制度を、
戸籍制度の問題点を教えてくれた佐藤文明
さんが亡くなりました。

彼の最後の本が、解放出版社から出されています。
彼は、この本以外にも,執筆依頼があったそうです。
しかし彼は、自分の残り時間があまり
ないことを知っていました。

全てを受けるわけにはいかなかったのです。
彼はどうするべきか、考えました。

そして彼は、自分の一番書くべきこと
を書いたのです。

 

その本の中から。。。

佐藤文明
「知っていますか?戸籍と差別 一問一答」
解放出版社2010年11月

筆者が初めて戸籍に出会ったのは
1969年のことです。
東京都の職員となり、総務局総務部
総務課に配置された私は、職員の管理
よりも住民と触れあえる仕事がしたい、
と転属を希望。

受け入れられて新宿区の戸籍係
に出向したのです。

戸籍という住民の暮らしに密接した
制度なのに、筆者はそれまで戸籍に
付いて何も知りませんでした。

仕事に就く前に、法務省の役人の
研修を受けました。

「戸籍は世界に冠たる制度。
完全を期し,おろそかにしてはいけない」。

この「世界に冠たる制度」という
誇らしげな言葉は、その後も歴代の
法務大臣の口から聞く事になります。

でも、なのです。
仕事を通じてわかったのは、戸籍を知る人
などほとんどなく、法務大臣だって
例外ではないこと。

「冠たる制度」は法務省役人の常套句
だったのです。
筆者はこれにより「戸籍が日本にしかない」
ことを知り、そんなに素晴らしいものなら
「なぜ外国にはないのか」と不思議に
思うようになりました。

占領中、日本が押し付けた韓国・台湾の
戸籍は支配に役立っていたけれど、国民
の多くが迷惑していました。

同じことが日本にもいえます。
新宿の下層社会や花柳界や在日といった
異文化社会に、戸籍は紋切り型の人生を
押しつけ、差別を持ち込みます。

新宿区役所の戸籍係は
その最前線に立ち会います。

紋切り型の人生とは異なる人生との
出会いは、毎日が新しい発見でした。

戸籍制度はダメなのです。
法務省の役人が描いた常識的な人生に
営々と従うヒツジの群れ、そんな国民
を素晴らしいと考える政府や国家は
没落します。

外国に戸籍がないのは当然のことでした。
1981年,筆者はEOR BEGINNERSシリーズ
『戸籍』(現代書館)を上梓しました。

反響は大きく、たくさんの人たちから
支持されました。

なかでもありがたかったのは、戸籍を
もっともよく知る地方自治体の職員から
の支持でした。

住民との接点に立たされた心ある自治体
職員は、筆者と同じような矛盾を感じて
いたのです。

制度がおかしい。
制度を変えなければ、と。

彼らの見えざる力添えもあってのことでしょう。
出版以後、戸籍制度は筆者が願う
方向につぎつぎと改正されています。

『戸籍』の多くのページが書き換えられ
それでも追いつかない。

新しい入門書が求められていたのです。
本書はそれを目指しています。
めまぐるしい改正ですが、歩みは遅い。
小出しにすぎるのです。

本書は人権の確立を願う多くの住民と
その思いに応えようとする個人情報
取扱事業者、自治体職員や政府関係者
に問題を提供しようとするものです。

筆者は小出しではなく、戸籍制度の
抜本的な見直しが一刻も早くなされる
ことを期待しているのです。

 

 

 

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