「婚外子相続差別裁判」の最高裁判例(1995年〜2009年)

    多数意見          反対意見
_____________________________

1995年7月5日 大法廷決定
_____________________________

合憲10人           違憲5人

うち4人(園部逸夫、    (中島敏次郎、大野正雄、高橋久子、
大西勝也千種秀夫、        尾崎行雄、遠藤光男)
河合伸一)が補足意見   「規定は『嫡出でない子』を『嫡出子』
で立法府における    に比べ、劣るものとする観念が社会的に
法改正を指摘      受容される原因になっている」
          「無用の犠牲を強いる規定は憲法に
           違反する」
_____________________________
__________________________________________________________

2000年1月27日 第一小法廷判決
_____________________________
    合憲4人           違憲1人
補足違憲(藤井正雄)        (遠藤光男)

「国民に広く関わりをもち、    大法廷決定の反対論を引用
極めて幅広い影響を及ぼす
ものであるだけに、混乱を
避け、法的安定を損なわ
ない配慮が必要である」
_____________________________
__________________________________________________________

2003年3月28日 第二小法廷判決
_____________________________
    合憲3人           違憲2人

                (梶谷玄、滝井繁男)

               「価値観が多様化し、
                家族生活も様々に変容」
               「合憲であるということは
                一層困難である」
____________________________
_________________________________________________________

2003年3月31日 第一小法廷
____________________________
    合憲3人           違憲2人

 補足違憲(島田仁郎)    (深澤武久、泉徳治)

「家族形態の変化、シング 「離婚件数や婚外子の出世率の増加、
ルライフの増加、事実婚・  社会事情の大きな変動」「本件の
非婚の増加傾向とそれに   ような少数グループは代表を得る
伴う国民意識の変化には   ことが困難な立場にあり、司法に
相当なものがある」     よる救済が求められている」

____________________________
________________________________________________________

2004年10月14日 第一小法廷
____________________________
   合憲3人          違憲2人

 補足違憲(島田仁郎)    (泉徳治、才口千晴)

「相続分を同等にする  「立法当時に存した本件規定による
方向で法改正が立法府に  相続差別を正当化する理由となった
理、可及的速やかになさ  社会事情や国民感情などは、大きく
れることを強く期待する」 変動している」「できる限り早い
            時期に法律の改正によって救済
            すべきであるが、それを待つまでも
            無くし方において救済の必要がある」

____________________________
________________________________________________________

2009年9月30日 第二小法廷決定
____________________________
    合憲3人           違憲1人

補足違憲(竹内行夫)        (今井功)

「現時点においては違憲   「本来立法が望ましいとしても、
の疑いが極めて強い。    その規定によって権利を侵害され、
社会情勢等の変化に、    その救済を求めている者に対し
かんがみ、立法府改正    救済を与えるのは裁判所の責務で
することが強く望まれて   あって、国会における立法が望ま
ている」          しいことを理由としてい違憲判断
             をしないことは相当ではない」
* 

                    「 Voice」より

授業で婚外子差別を知った学生達の感想

1 今回、一番気がついたことは、私が18年間
生きてきて、無意識のうちに間違った知識を
得ていたかもしれないということです。ーーー
小宮千春

 

2 この講義の後、結婚は届けを出して成り立つ
という「常識」がいっぺんにひっくり返ったよう
な気がします。(略)
日本人のほとんどが当たり前じゃないことを
当たり前だと思っている。あたりまえだということ
に、流されていて、どうしてそのことについて
違っていてもいいんじゃないかということに、気が
つかなかったというか考えなかったのか、自分自身
も不思議に思いました。ーーー坂崎朱美

 

3 このような問題が生じたときに、人は自分の
本当の正体を現すのかもしれないということを痛感
した。ーーー伊藤麻友子

 

4 (婚外子の相続差別)家族の愛の深さを、
そんな狂った物差しで測るのはおかしいと思います。
ーーー水野友紀

 

5 「婚外子」このような言葉が、世の中に存在
していいのだろうか。何度考えても、あってはなら
ない言葉です。ーーー伊藤麻紀

 

6 自分を恥ずかしく思った。私のように、無関心
だと考える者がいることも差別の一つだからだ。
ーーー橋本康子

 

7 私たちの住んでいる国には、こんなにひどい差別
があったということに驚きました。ーーー田辺いずみ

 

8 世の中にこんなことが起こっているなんて、全く
知りませんでした。世界の平和を祈るなんて訴えている
日本が、婚外子に残酷な差別を犯してしまっていること
を知り、驚き、ショックでもあります。ーーー中村育代

 

9 この世の中で「正統でない子」などというのは存在
しないと思う。どうして法律は、このような差別用語を
作ったのだろうか。ーーー村松理恵

 

10 中田さんの辛い過去を聞いて、悲しくなりましたが、
それ以上に怒りがこみ上げてきました。女が男より弱い
立場であることを見せつけられたようでした。ーーー寺
田さとみ

 

11 母親が届出婚をしたかしないかによって起こる差別
は変。国はもっと考えるべきだと思います。ーーー勝野恵

 

12 恥ずかしい話ですが、ほんの少しだけ、心の中で中田
さんに対して差別のようなことを思ってしまいました。ー
ーー遼()美里

 

13 そういう状況にいる人、それによって差別を受けて
いる人がいるからこそ、こういう言葉があるのに、今回
話を聞くまでは、「婚外子」「非嫡出子」という言葉を
聞いても何も感じることはなかった。それどころか、
今こうして考えてみると、私はそういう立場の人たちを
自分とは違うものというように考え、決めつけ、当たり
前というように差別をしていたのだということに気づき、
自分をとても恥ずかしく思いました。ーーー秋元良子

 

14 この国は、どこまで男中心にできているのだろう。
と怒りを通り越して、驚きを感じています。ーーー加藤
夕季

 

15 社会にどう追われようと、中田さんにとってはたった
一人のお母さんだし、それを誰にお変えることもできない
し、そんな権利は誰も持っていないのです。江戸時代にエタ
・非人を置き査閲をして、農民は一番くらいの低い立場で
はないと思わせたように、婚外子を差別することによって、
誰かが特でもするというのでしょうか。決して誰も得なん
てしません。夫婦別姓の問題もそうですが、国が干渉しす
ぎているような気がします。いつかこの世から「婚外子」
と言う言葉がなくなることを私も祈っているます。ーーー
前川夕紀

 

16 なぜ婚外子が差別を受けなければならないのかわかり
ません。別に正義感とかそういうのじゃなくて、単純にそう
思います。

 

17 本当に世の中には色々な差別があるなと思いました。
それを、差別されて当然とか、そのことの問題の重大さに
気づかない人が世の中にいっぱいいるのだということもわ
かりました。それに気づいた人が、その問題に正面から
向かっていくことが大切だと思います。ーーー林美里

 

18 人種差別や部落差別は全面的に問題とされているのに、
日本には認められていない子どもがいる。それこそ大問題
のはずだ。ーーー飯田亜矢

 

19 今回初めて婚外子という言葉、その意味を知りました。
とても現実にはあり得ないような話だと思いました。ーーー
松川るみ

 

20 全く罪のない子に、こんな残酷なことをしてもいいのだ
ろうか。日本の社会にも苛立ちを、国の考え方にとても不安
を感じました。ーーー市川志都江

 

21 出生届に嫡・非嫡を書かせることで何になるのでしょう
か。ーーー小川知美

 

22 今まで婚外子をたくさん傷つけてきているというのに、
きちんと改正されなかったのは何故なのかと思う。ーーー
瀬川麻里子

 

23 講義を聞いて、自分が何も知らないことに気がつきま
した。自分が何も考えずに生きていることが恥ずかしくな
ってきました。(略)(婚外子の責任を母に負わせること
を当然とする女性に対して)もし本当に彼女らがそのよう
に考えているのなら、私は彼女らが同じ女性であることを
恥ずかしく思います。(略)今、現在「婚外子」といわれ
ている人たちの苦しみを知り、心が痛みました。ーーー
伊藤ナルミ

 

24 とてもばかばかしいことは、婚外子になるか否かが
たった紙一枚で違ってくるということである。(略)そんな
日本社会を知り、とても悲しかった。はたして自分は何か
できるかわからないけれど、婚外子の方の実体験を聞けた
ことによって、私の中で法律に対する見方が変わったような
気がした。と同時に、ここでも男女の差別を強く思い知らさ
れた。ーーー河江和代

 

25 「現代の日本社会は何だか変だぞ」とおもいました。
特に婚外子差別は合理的差別だなどと衆議院の議会で話され
ていたなんて、びっくりしました。ーーー間瀬梨加

 

26 憲法14条の「法の下の平等」は素晴らしいと思います。
しかしそれは、この法律が本当に守られていればの話です。
(略)子どもは大人を見て育つのだから、大人が差別をする
ような態度をとっているうちは、いじめもなくならないと
思います。(略)まだ20歳になっていない私でもわかること
なのに、なぜ多くの政治家や法を作っている人にはわから
ないのだろうと思ってしまいます。ーーー後藤麻奈美

 

27 「婚外子」や「非嫡出子」などと違う人種のような呼び
方をされていることに、とても驚きました。なぜ、そう呼ば
れなくてはいけないのでしょうか。(略)
女性は子作りのマシーンと化されていて、人間としての扱い
をされていなかったのだと思いました。(略)
「人間は法のもとに平等だ」と言っている法律に「どこが
平等なの?」って言いたくなります。紙一枚で親子の関係の
重さを計られるのは、何よりも辛いことだと思いますし、紙
一枚で愛情は計れないのに、とても不思議に思います。ーーー
服部梢

 

28 生まれて18年間で知った男女差別は全て他人事であり、
深い関心は持たなかった。それが今回の中田さんの講義を聞き、
不思議と「女の私と人間の私」を考えるようになった。(婚外
子差別の)率直な感想は「ばかばかしい、どうしてこんな法律
に縛られ苦しまなければならないの」
人が人を差別するのは人権侵害だと思うが、法律や制度を設
けているのはそれ以上だと思う。(略)私が18年生きてきた
日本でこんなことがあったなんて本当に信じられない。今すぐ
改正してほしい。するべきだ。ーーー長尾麻貴

 

29 母親が届出婚をしたかしないかによって、なぜ子どもの保
育所の入所費や公営住宅の家賃にまで影響されなければなら
ないののか。全く理解できない。(略)なぜ婚外子だからとい
って、戸籍や相続で差別されるのだろうか。こんなふざけた
法律のせいで、どれだけの子どもが傷ついているだろうか。
ーーー堀田利加子

 

30 女は男の性欲を満たす道具ではない。こんな法律があるから
いまだに男女の差別があるのだ。差別をなくすためには、婚外子
の差別をなくし、その父親にも責任を負わせなければならない。
(略)今回の講義で日本の残酷さと無責任さを切々と思い知らさ
れた。ーーー柴田恵利香

 

31 (婚外子差別を知って)あいた口が塞がらない。(略)「婚
外子」や「非嫡出子」という言葉が一般的に認められていること
自体が変だ、ということに気がついて。その言葉が差別を生み、
一部の人を苦しめている。それに気がつかなかった自分も、その中
の一人だったのだ。
今回の授業で、普段当たり前(常識)に感じていたことが大きな
間違いだったり、自分がどんな意見を持って生きてきたのかが分か
った。それは、日本社会という偏った考えの中で、単に踊らされて
いただけのような気がしてならない。ーーー重山知子

 

32 (婚外子差別は)ばかばかしすぎると思います。世の中間違っ
ています。まるで人間を、物質的に扱っているようで大変腹立たしい。
全くの人権侵害、差別である。ーーー北村妙子

 

33 平気で女性をここまで差別する日本人の一人ということを
今、初めて嫌だと思った。これまでにも女性差別のことは何度も
聞いてきたが、「まあ楽できるのも女だ」と聞き流してきたが、
今回の婚姻、婚外子のことについては心の底から腹が立った。
そして日本という国についても、裕福だということで先進国だ
と言われているが、中身をみたら考え直さなければならないこと
だらけの貧しい国という気がしてきた。それを改善するために
も、今回の民法改正は重要なカギになるだろう。ーーー堀田
利加子

 

34 (子どものために婚姻届を出すこと)さんざん悩んだ結果と
はいえ、子どもを嫡出子にして問題からするりと抜けていくの
では、今後の日本は変わっていかないと思う。ーーー塩沢美穂

 

35 母と子が何の心配もなく生活できるような制度が、婚外子
であっても適用させるような社会にならな変えれば、日本も先
進国とはいえないと思う。
(略)日本の戸籍制度が婚外子を苦しめている。法律婚制度を
維持したいために、婚外子を差別するなんてもってのほかで、
日本の国は戸籍制度を考え直さなければならないと思う。ーーー
田島佳代子

 

36 婚外子差別のことを知ったことによって、今まで考えもしな
かったことを考えさせられた気がする。ーーー奥本尚代

 

37 国は、生まれてきた子どもを、本人にはどうしようもないこ
とで差別しているのだ。国に従って法律婚をしないと婚外子差別
をする、というのは脅迫に近い。ーーー廣田美起

 

38 婚姻届を出すから「非嫡出子」と呼ばれる子どもが生まれ、
「嫁」という感覚で見られるのだと思います。もう少し結婚とい
うことを考え、届出が本当にそれほど大切なものかを、みんなが
考えるようになってほしいと思いました。ーーー鶴田美里

 

39 もっとはっきり自分を表現でき、自分の考えを述べられる
女性が必要だと私は考える。自分もその一人でありたい。今回の
講義でそのきっかけをつかめたような気がする。ーーー小林晶江

 

40 紙一枚のために、自由を奪われ差別を受けている人もいる。
その人の人生は一体、誰が責任を取るのか。ーーー赤野ゆう

 

41 中田さんの話を聞いて、初めて法律とは何のためにあるのだ
ろうと思った。人を、人権を守るための法律が、そんなに人を
差別していることを知った。(略)
裁判に携わっている人には、女の人もいると思う。その人たち
はどういう思いで裁判を行なっているんだろう。法律が正しいと
思っているのか、心のどこかでおかしいと思いながらも裁判を行
なっているのか。その人たちには、間違いを正す力はないのか。
もっと女性に権力があればちょっとは変わっていたかもしれない。

 

42 未婚で出産すると、女性だけが非難され、男性の責任は問われ
ない。どうして女性だけ非難されるのか。そしてなぜ、同じ性の
女性からも非難されるのだろう。ーーー田辺寛子

 

43 「婚外子」をめぐる法律や差別する風潮のある日本の人間だと
いうことが、私はとても恥ずかしいし情けない。ーーー小嶋朋子

 

44 私は日本の多数の人たちの意識は、まだ明治民法のままである
と感じました。ーーー稲葉あゆみ

 

45 政府は婚外子差別をしなさいと言っているようなものだと思う。
(略)婚姻届を出すのは、生まれてくる子どもが差別されないため
だけだと思う。そう考えると、婚姻届とは、何を意味するのかわから
なくなってくる。ーーー中島亜紀

 

46 家族に対しての古い考えを改めて、家族とは自立をした個人が
助けあえる場所になれたらいいと思う。対等な人間として生活を
共にして、もっと自由に生活できるといい。そのためには女性が、
もっとこの問題を自分のこととして考えなければいけないと思う。
ーーー小林麻美

 

47 お話を聞き、歴史は動いているんだなと感じました。「家制度」
に縛られていて何もできなかった女性が、今は中心となって法と
たたかっている。ーーー加藤有紀子

 

48 日本人は個の感覚が少なく、法律・規範・しきたり・伝統など
に縛られている人がたくさんいる。そういう人が政治家をやり、
法律をカチンコチンの頭で作っているから、日本の法律は世界より
劣っていると言われるのだろう。(略)結婚ということが「お嫁に
行く」「嫁をもらう」ではなく、「パートナーになる」というよう
に、言葉からも男女平等になっていくように、少しずつ変化が見ら
れるようになったらいいと思う。ーーー金森美智子

 

49 日本人の「結婚」に対してのイメージを、180度変えるべきだ
と思います。ーーー林野亜希

 

50 結婚するときは戸籍を入れて名前を変えて、それが当たり前
だと思っていました。でも当たり前ではないんですね。何のために
そんなことをする必要があるのか。男にとって、世間にとって、
支配する者にとって都合がいいだけ、馬鹿らしい。ーーー倉本涼子

 

51 結婚は二人の意志でしたことなのに、結婚すると一番偉いの
は夫であると思っている人が多いと思い。それは男だけでなく、
女もそう思っていたからではないだろうか。ーーー中井麻友美

 

52 同性が一体感を生み、それにより離婚しないというので
あれば、夫婦同姓のもとで離婚が増えるというのは不思議な
ことになる。ーーー中西佳美

 

53 今まで夫婦別姓は、家族の一体感が損なわせ、また子ども
にも被害を被らせるのではないかと思っていました。しかし
講義を受けて考え方が変わったというのか、男性に対して、
法律や制度に対して不満が出てきました。
女性は妻となったら、その名は、大げさかもしれないが、
知られることもなく使われることもないかもしれない。
こんなことにも、男女差がはっきり見えるような気がします。
ーーー斎藤奈美

 

54 考えてみれば、夫婦別姓でもいいと思います。(略)
妻が夫の姓を名乗ることで、夫の従属物になったような気
になって、夫婦の対等な関係が保ちにくくなるのではない
かと考えました。ーーー佐藤友未子

 

55 高校生の時、先生の名前が変わりました。その時私たち
は、離婚をしたのだと噂ばかりしていました。当事者にとっ
ては、居ても立っても居られない気持ちだったに違いありま
せん。この講義を聞くまでは、夫婦が同じ姓にするのは当た
り前なのだと思っていました。けれども、結婚を考える相手
に出会った時、その人と真剣に考えてみようと思います。
(婚外子差別を知って)日本という国は国際的には豊かで
あるけれども、人情的には最低だと思う。ーーー米山亜友子

 

56 婚姻届を出して姓が変わると、女性は一個人ではなく、
「夫の妻」であるというイメージを受けますが、別姓だと、
不思議なことに一人の女性という印象を受けます。ーーー
栗本麻貴

 

57 そもそも、どちらかの姓を名乗る必要なんて、どこにも
ないはずである。よく、結婚したら女は家事をし、外に働き
に出るのは夫が許さないという。私の父も、その中の一人で、
母が働きに出て家に帰るのが遅くなると機嫌が悪い。その理
由が「家の掃除が手抜きだ」「遅くなると子どもがかわいそ
うだ」など。子どもがかわいそうというより、自分が寂しい
のだと思う。誰もが忙しいなら、家のことは分担すればいい。
(略)(同性が)子どものためだとかいうのは、子どものいい
迷惑だろう。ーーー松行陽子

 

58 私の家族を含めて今の日本のほとんどの家族は、夫(父親)
によって支配されている一集団のような気がします。ーーー
小宮千春

 

59 父が母におかずの味付けの事で、すごく怒った時があった。
私は自分で作りもしないで文句ばかり言う父に、すごく腹が
立った。母だって仕事をしている。食事の巡撫をする時間には
きちんと帰ってきて作っている。それはとても大変なことだと
思う。父はその時何をしているかと言うと、テレビを見て待って
いるだけだ。ーーー村松里恵

 

60 姓という支配の下で女性が家庭に縛りつけられるくらい
なら、個人個人を尊重する生活の方が魅力があると思います。
夫婦別姓に反対している人は、何だか変な誤解と偏見がある
ように思います。夫婦も人と人のつながりであることを自覚
しないといけないと思います。
子どもについては一番差別してはいけない点だと思います。
ーーー熊谷有香

 

61 男は女を所有物のように扱い、妻が子どもを生む道具の
ように思っている人もいます。結婚制度は父権を守るために
あり、女を守るためではありません。ーーー加藤三代子

 

62 考えてみると、結婚するからといって改姓するのは、
納得いかない話だ。ーーー森光真弓

 

63 男が女の姓に変わるのは勇気がいることなのに、
女が結婚して姓が変わっても誰も不思議に思わないと
いうのは、初歩的な男女差別だと思った。ーーー山内
智洋

 

64 中学、高校の委員長、副委員長を決める時、いつ
でも委員長は男、副委員長は女であった。別にそう
決まっていたわけではなかったが、当時は何も考えな
かったし、別に違和感もなかった。今になって考えて
みれば「副委員長」の「副」の字は何だったのだろう。
ーーー加藤妙美

 

65 夫の氏に変わるのは当たり前だと思っていたが、
それはおかしいことではないかと思えた。(略)私が
結婚する時に別姓にしたいからというわけではない、
誰かが夫婦となって自分の姓でいたいという時に別姓
が認められていてほしいと思う。ーーー清水美紀

 

66 所詮は、男性が作り上げた法律であるに過ぎない。
民法改正について、賛成している議員の中にどれだけの
女性議員がいて、反対している議員の中にどれだけ女性
議員がいるのか。ーーー有賀詠子

 

67 国会とか、議員とか、法律って自分とは遠いものだ
と思いがちだけど、そんなことはないと思う。法律は変
えようと思えば変えられるものです。ーーー内藤晃江

 

68 現在の教育制度を見直し、未来を担う子どもたちに、
新しい考えを持たせるべきだと思います。そして中田さん
の訴えていること、願っていること、つまりは、本当の
「自由・平等」を日本の社会に芽生えさせるのです。ーー
ー寺田さとみ

 

69 届けを出した時が結婚と考えるのは、やはりおかしい
と感じ始めました。ーーー小川知美

 

70 小さい頃、母が結婚する前は、名字が「田中」では
なく、「酒井」だったということを聞いて驚いたことを
思い出しました。ーーー田中なぎさ

 

71 別姓にするだけで一体感を損なうくらいなら、たいした
夫婦・親子関係ではないのだと思います。ーーー加藤夕季

 

72 夫婦別姓同姓を選択できるようになり、話し合って
二人で納得して決めることができれば、そこに一体感が
生まれてくるのではないでしょうか。ーーー廣田美紀

 

73 私の母は母子家庭で育ち、姉、つまり私の伯母とは
母親が違います。けれどそのことについて、辛かったとか、
寂しかったとか母が言うのを聞いたことはありません。
それに伯母ともとても仲がよく、最近まで私はそのことを
知らなかったほどです。こうしたように、家族というもの
は血縁でも戸籍でも決められるものではありません。まし
てや、第三者が決めるものでは絶対ありません。ーーー
太田千栄子

 

74 結婚しても名前を変えない、そこから本当の自立を
始めることができるのではないだろうか。(略)
婚姻届を区役所に置かずに、離婚したという証明書を
自分で持っていた方がいいと思う。これも人間としての
権利なのではないだろうか。李星洋

 

75 今までこのようなことに関して、何も考えたことが
ありませんでした。けれどやっぱり変える必要がある
ような気がしました。このままではいけないような気が
しました。それができるのは現代を生きる人間、あたり
前に思っていたことを、もう一度しっかり見つめ直す
必要があると思いました。ーーー金森友紀

 

76 夫婦の間に国が割り込むこと自体おかしなことで
あるし、国に届出をしなければ結婚と認めないという
のは選択の自由を奪っていて、それこそ人権が守られ
ていないのではないかと思います。考えてみれば、
戸籍は人権差別そのものなのかもしれません。ーーー
湯浅和美

 

77 好きな人と結婚して、その人の宇治になることは
幸せなことだと思っていた。(略)
戸籍がどのくらい大きな影響を与え、私たちの生活
に関わってくるのかを知った時、今の夫、同姓の制度
をうかつに受け入れてはいけないと思いました。(略)
大の大人、つまり一人の人間が個人の籍を持つのは
むしろ当然のことであって、それと家族とは全く別の
問題として考えていいと思います。ーーー松川るみ

 

78 好きな時に好きな姓を名乗って、一体誰が困るの
でしょうか。ーーー鈴木裕子

 

79 自分の姓さえ自由に選択することができない国が、
民主主義の国であると言えるのでしょうか。戸籍制度に
ついて私たち一人ひとりが差別されているのだと気づい
て、自分の問題として真剣に考え直さなければならない
と思いました。ーーー亀井芳子

 

80 人間にとって一番大切な心と心の結びつきを、戸籍
制度や同姓制度といった人間が自ら作った法律で、妨害
してしまってはいけないと思う。法で人間を縛り付ける
のではなく、人間の権利をもっと尊重できるようなものを、
夫婦や家族がもっと住みやすい社会を、自分自身の手で
作り上げていかなければならないと思う。ーーー恒川史子

 

81 (女性の自立を)別姓というスタイルから始めてみる
という方法もあると思うのです。戸籍というのは本来何の
ためにあるのか考えてみたい。私たちに本当に必要なのか。
(略)何も考えずに法に従って行きて行くのは楽なことか
もしれません。しかし、それでは女性に生まれた意味が
ないのではないか。ーーー加藤典子

 

82 戸籍がいかにおかしなものか、いかに女が知らず知ら
ずに差別されているか、自分の国のことなのにカルチャー
ショックを受けるなんておかしいですが、今、私はまさに
そんな感じがしています。ーーー服部真衣

 

83 今まで19年間近く生きてきたが、戸籍制度を当たり
前のことに受け止めてきた。疑問にすら思わず、このよう
なことを考えさえもしなかった。しかし、今回講義を受け
て、何も知らなかった無知な自分が非常に恥ずかしく思え
た。
「人民の人民による人民のための戸籍制度の見直しを」
ーーー竹村幸

 

84 日本という国は、なんというおかしな国なのかと思い
ました。(略)女だからそのうち誰でも結婚するから、放
っておけばいいなんて役所の人間が平気いうなんて、何か
間違っている気がします。(略)
差別がなくなり、私は私として、一人の人間として扱わ
れるようになるには「戸籍」という理不尽な制度を見直し
ていかなければならないと思いました。ーーー成瀬英香

 

85 人が幸せに暮らすための法律がこんなに矛盾だらけで
は、なんの役にも立たないと思った。だが、国のことを考
える前に私たち自身の考えから買えなくてはいけないのだ
ろうと思う。ーーー近藤佐代子

 

86 考えが変わりました。戸籍は本当に必要なのだろうか。
もし必要だとしたら、誰にとって必要なのかがわかりませ
ん。ーーー白井留美

 

87 姓や血のつながりに頼るのではなく、個人を尊重して
いける家族を作りたい。ーーー清水知子

 

88 最後に、講義を聞いて、行動を起こさなければ何も起
らないということに、はっきりと気づいたと思う。ーーー
早川さやか

 

 

 

規約人権委員会審議 1993年10月〜11月 ジュネーブ 

規約人権委員会審議
「ジュネーブ1993 世界に問われた日本の人権」
              こうち書房 1994.5.3

日本政府の第三回定期報告書に対する
国際人権(自由権)
規約委員会の
審査記録および日本弁護士連合会の報告
P.61
第1章の最後の質問1は、次の通りです。
「非嫡出子の王的情況はどのようなものか」
我々の回答は次の通りです。
婚姻関係以外で出生した子ども(婚外子)に関して、
子どもが法律上の親を有する限りにおいて、たとえば
扶養・相続権など、民法所定の親子関係に基づき
1親等親族の有する権利義務を取得することになります。
日本民法に従った婚外子の取り扱いは、婚姻により出生
した子どもとは次の点において異なったものとなっています。
第一に、婚姻関係から生まれた子どもは、出生により
法律上の父親を有することになります。
ほとんどの場合は、合法的な婚姻関係から生まれた子ども
は嫡出子であると看做される(訳注、「推定される」)
と規定する民法第772条の嫡出推定規定の適用を受けます。
これに対して、婚姻外から生まれた子どもは、父親の
認知によって初めて法律上の父親を有することになります。
第2に、婚姻関係から生まれた子どもは、
その両親の姓を名乗ることになります。
これに対して婚姻外から生まれた子どもは、
その母親の姓を名乗ります。
これは民法790条に規定されています。
第3に、相続に関し、婚外子と嫡出子が同順位の
相続人である場合において、婚外子は嫡出子の半分
とされています。
こ
れは民法900条4号但書に規定されています。
この他、出生登録において婚外子と嫡出子とが
明確に区別されることを定める戸籍法によって、
嫡出子はたとえば「長男」または「長女」などの
ように記載されますが、婚外子は「男」または「女」
のように記載されます。
このような区別は、全て不可避的な事実的区別から
生じるものであり、子どもが合法的な婚姻関係から
生まれたかどうか、また合法的な婚姻関係を保護する
ための必要から行われるものです。
したがって、婚外子に対してそれが何らかの不合理な
差別を作り出すものではないと考えられます。
議長、以上が質問書第1章に対する我々の回答です。
ご清聴ありがとうございました。

(ディミトゥリエヴィッチ議長)
國方さん、どうもありがとうございました。
それでは、委員会の委員の皆さんに質問事項第1章に
関する補足的質問、または日本政府代表団による
回答に関するコメントをいただきます。
委員の皆さんには、現在発言予定者は12名であること、
また時間の制約も考慮して発言していただき
たいと思います。
最初の発言者は、サディ氏です。
サディさん発言をどうぞ。

(サディ委員)
議長、遠藤大使を団長とし、伊藤公使、
人権難民課長の國方氏から成る日本政府代表団を
心から歓迎したいと思います。
代表団の規模がこのように大きなものであるという
ことが、日本政府がここでの対話をきわめて重要な
ものであると考えているということを証明するもの
であると思います。
こ
れは非常によいスタートであると思います。
私は、代表団の後世上の選択がすばらしいものであり、
またそれぞれが多くの任務を委ねられた規約の
各分野の専門家であると思います。
本当によい審査開始になると思います。
日本の報告書は、私の考えでは優れたものであり、
委員会の指針にかなりの程度においてしたがって
いるものであると思います。
こ
れが第3回定期報告書であるという事実を考慮しても、
また以前の報告書を補足するものであるという点からも、
全体的に見て、日本における人権の情況を明確に
示しているものと考えます。
今朝は、冒頭の陳述および質問事項に対する詳細な
回答をいただきましたが、國方氏の回答は実に役に立ち、
日本における人権に一層の光を当ててくださったものです。
まず、日本の報告者は、一の重要性を付加したものである、
と考えます。
というのは、日本はただ単なる一国家で
あるわけではなく、日本は地域的なパワーを持つ国です。
日本は大きなパワーを持った国であり、スーパー・パワーを
持った国になり、国連安全保障理事会の席を占めている国です。
したがって、日本が規約に基づいて行うこと、発言すること
のすべてが、地域的にも国際的にも機関車的役割を果たす
ことになります。
したがって、日本が規約の選択議定書や拷問禁止条約など
のその他の条約の批准に関してやや保守的であることを
残念に思います。
再び申しますが、日本の地位を考えると、日本が地域の
ためにもまた国際的役割のためにも、基準を示すという
意味における指導的役割を果たすことを期待します。
質問事項に関して述べる前に、いくつか
申し上げたいことがあります。
私は問題の全てを取り上げるつもりはありません。
まず、安藤仁介氏とこうして一緒に仕事をさせて
いただいていることを心から感謝したいと思います。
私は過去3年間知遇を得ており、彼が優れた専門家であり、
学識ある専門家であり、またこの委員会の非常に
重要な委員であると思います。
また、彼が委員長に選ばれているという事実こそ、
安藤氏の見解や貢献に我々が多くのものを負って
いることの証左です。
したがって、日本政府に対してこのように有能な委員を
推薦していることに関して感謝したいと思います。
それでは、時間がありませんので、私の念頭にある
いくつかの問題を取り上げ、その他のものについては
他の委員に譲りたいと思います。
私の最初の質問は、規約の地位についてです。
この機会が日本における規約の地位に関してうかがう
第3回目のものであると思いますが、これは中心的問題
ですので、この問題を再び取り上げさせていただきたいと
思います。
この問題について明確にしておかないと、我々としても
永久に問題の明確な認識を欠くことになりますので。
自分にとってよくわからないのは、報告書の第12項に
おいて、日本国憲法では日本国が締結した条約が忠実に
遵守される旨の記述があります。
それで結構かと思います。
しかし、規定の趣旨にしたがうという文章に関して、
この「規定の趣旨」とは何をいうのでしょうか。
法的術語においては、意図とか趣旨ということになった
場合に、トラブルが生ずることが多いのです。
そして、問題が不明確になります。
規定の内容に関して
実際に解釈されたとこに関して「規定の趣旨にしたがい」
ということを説明した後で、今度は、これこれのことが
「……と考えられている」と言われました。
この「と考えられる」とは、誰がそのように考えている
ということでしょうか。
つまり、日本における規約の地位はトリッキーなもの
(微妙なもの)となっているのです。
このような私の考えが誤ったものであることを希望して
いるのですが、しかし、報告書を読んだ上での私の
コメントをさせていただければ、そのように感じるわけです。
さて、政府代表は、本日、規約が日本の判決でときどき
言及されることがある、と言われましたが、同時に、
規約が国内法の一部としての地位を占めているという
ことを明確に述べている判決が皆無であるという
事実にも触れられました。

規約が裁判で取り上げられることがしばしばある、
とも言われました。
また、裁判所の中には、
(問題とされた)法律は規約に違反していないと
判決している例もある、とも言われました。
そこで、私の直接的質問は、以下の通りです。
裁判所が規約を解釈する場合において、裁判所は、
当委員会の先例を指針とするのでしょうか。
たとえば、
ある種の法律が規約に違反していない、とされる場合です。
さまざまな規約の規定を解釈する際に、当委員会が
述べていることを考慮に入れるのでしょうか。
というのは、これは非常に中心的問題であり、
国内裁判所が規約を国内法との関連で解釈する場合には、
当委員会の先例を指針とすべきである、と私は考えます。
そうでなければ、さまざまにことなった解釈が
生じてしまうことになります。
次に、第2条の差別に移りたいと思います。
報告書
35項で、日本国憲法は、何人も、人種、信条、性別、
社会的身分または門地により差別を受けないと
されていますが、国籍又は出生国が除外されている
ことに何か特別の理由があるのでしょうか。
「優しい」
欠落あるいは非意図的な欠落かもしれませんが、しかし、
規約の観点からすれば、何故そのような基準が欠けて
いるのかということに関して伺わざるをえないわけです。
次に在日朝鮮・韓国人の問題に移りたいと思います。
私はこれが経過のある問題であり、差別に関しては
あまり強い主張がなされていない問題であると承知
していますが、私の質問は、このような差別的取り扱い
は朝鮮・韓国人であることによって生じているのか、
ということです。
こ
れは朝鮮・韓国人が日本国籍を喪失したことを
理由とする一種の「もつれ糸」のような関係で
生じていることなのでしょうか。
私は、将来における問題を念頭において考えているのです。
現在では第三世代が日本国内に居住しているとのこと
ですので……質問の趣旨は、この問題が、原因結果の関係
においてどうか ……在日朝鮮・韓国人に関してだらだらと
長期化してきている問題なのですが。
私のもう一つの質問は、彼らを特別永住者として考える
場合に、たとえば米国の居住者であるグリーン・カード
保有者として取り扱うことができないのでしょうか。
たとえば、カナダや米国における場合のように、
(理解可能な)選挙権の問題を除き、意図や目的など
あらゆる点において事実上完全に平等の取り扱いを行う
ことは不可能なのでしょうか。
もしこの点に関する情報をいただければ、毎年2万人もの
在日朝鮮・韓国人が外国人登録証を携帯していないために
逮捕されていると聞いていますので、それを訂正して
いただけるかもしれません。
これが正しい情報がどうか私は知りません。
しかし、正直に申し上げると、日本の報告書が、かなり
広範なレベルでの緊張を生じさせているように感じています。
もちろん、その他のさまざまな分野で積極的な発展が見られ
ることは確かですが。
このような情報が正しいでしょうか。
というのは、問題がそのようなレベルまで達していれば、
消極的な差別的取り扱いが、たとえば在日朝鮮・韓国人に
対して行われているかどうか、という問題です。
次に第4条に行きたいと思います。
報告書における第4条の
取り扱いは、非常に簡素なものであると思います。
緊急事態に関する問題はほとんど存在しないのではないか
と思いますが、しかし、規約の下では日本は国内法を
規約第4条に適合させる義務を有しているということを
率直に指摘したいと思います。
たとえば、緊急自体を宣言する際の理由に関して、
国連事務総長に通知すること、規約の規定の適用除外の問題、
その他についてです。
立法に関して述べるだけでも、この問題に関してもう少し
多くの取り扱いが必要であると思います。
次に、少し早口になりますが、女性の権利について
扱いたいと思います。
男女の平等問題に関して、市民権、子どもの出生、たとえば
外国人と婚姻した母から生まれた子どもについて、
母の(日本)国籍は、日本人父親の場合と同様に
(子に)伝わるのでしょうか。
もう既に回答された
かもしれませんが……。
しかし、回答を全体的にうかがった後で、私としては、
ただその点に関して確認したいのです。
私の最後の懸念は……私の同僚の懸念も考慮しつつ……
婚姻外で生まれた子どもの問題です。
思うに、
我々は婚外子は付加的な保護を必要とするということに
皆同意することができると思います。
平等の保護のみだけでなく、付加的な保護であり、
また(婚外子であることによって)罰を受けることが
あってはならないのです。
非嫡出子に関しては、両親が罰を受けることがありえても、
子どもが罰を受けることがあってはならないのです。
それを念頭に置けば、また規約では「それぞれの
子どもは」と規定しており「婚姻によって生まれた
子ども」とは規定していないのですから……。
私は、日本がこのような状況を矯正するための努力をし、
またこの無実の子どもたちに対して付加的な保護を
与えることにより相当の進展をしていただければ、
たいへん喜ばしいと考えています。
そして、それが実際にそのような子どもに対する
必要な留意、ケアそして保護に拡張されることを
希望しています特に、相続を含むものとされる
べきであり、私は個人的には婚外子はより少なく
ではなく、より多くを相続すべきであると考えます。
もちろん、これは私の主観的な考えであり、
他の人々にお仕着せするつもりはありません。
少なくとも、それらの子どもには、同情と付加的な
保護を、いかなる意味においても(その身分による)
罰が与えられないことが必要だと思います。
以上が私の質問です。
もちろん、後ほど、別の章で質問をしたいと
思っております。
どうもありがとうございました。

(ディミトゥリエヴィッチ議長)
マブロマティスさん、ありがとうございました。
では,ポカール委員に発言をお願いします。

(ポカール委員)
議長,ありがとうございます。
議長,私も,遠藤大使のご欠席の下で,伊藤公使より
代表される日本政府代表団を心から歓迎する
ことから始めたいと思います。
伊藤公使には,別の会議でいろいろと
協力いただいています。
代表団の規模および能力からして,今朝から既に
開始しておりますが,質問事項の第3章に至るまで
我々は良好な対話をもつことができるのではないか
と考えます。
時宣にかなって提出された(政府)報告書については,
我々の立て込んだスケジュールの関係で直ちに審理する
ことができませんでしたが,よい報告書であります。
また,國方氏に対しては,報告書をアップ・ツー・
デートなものとするための補足的説明を
いただきありがとうございました。
議長、私がいくつかのコメントをする前に,我が委員会の
委員長である安藤氏について述べさせて
いただきたいと思います。
彼にこの委員会の委員長を
務めていただいているのは,我々の喜びとするところです。
安藤氏は我々の活動に対して大きな貢献を行っています。
我々の非差別——この問題は,ここ数日においても
取り上げられることになっています——に関するジェネラル
・コメントの最終のドラフトの作成のような困難な仕事
においても,指導的な役割を演じています。
最近の優れた
ロラボルトゥール(報告書)であり,さらに我々に議
論においてもいつも刺激的な考えを示してくださっています。

最後に,また必ずしも最も重要性が低いわけでは
ありませんが,彼の公正さ,親切、我々のすべての
ものとの友情において,極めて顕著な方です。
それでは,個別的な問題に移りたいと思います。
まず,人権状況を改善するための近年における日本
政府の大きな努力について私はよく熟知しております。
国内外で,私は,アジア地域におけるさまざまな会議
やワークショップに参加する機会を得ており,
また個人的に,この分野における日本人の専門家や
代表団が果たしている役割を知る機会がありました。
そして,ここに,このように多くの政府代表団やNGO
が来られていること自体が,少なくとも規約の周知に
関する目的が達成されたことを示すものである
と思われます。
これは,多くの他の国にとっては,一般的なことで
あるわけではありません。
特に,私は,我々に多くの情報を提供してくださった
さまざまなNGOに感謝したいと思います。
ところで,私は最近日本を訪問し,意見を
交換する機会がありました。
このようなことを言うのは,これから述べるいくつかの
問題に関する批判について,このような背景を持って
申し上げているということを理解していただきたいと
思うからです。
この質問事項第1章に関しては,私はごくわずかな
質問しか有していません。
これは,他の多くの問題が討議を必要としているという
ことのみならず,いくつかの問題は,今朝,既に代表団
によって回答されているからでもあります。
私の主要なコメントは,差別問題についてです。
私の印象では,今朝,代表団が述べた日本政府のさまざまな
努力にもかかわらず,また立法や実務慣行における非常に
多くの改善例にもかかわらず、いくつかの領域で法と慣行の
両方において一定の差別が依然として存在しています。
法の点に関してまず申し上げます。
私の同僚は,既に婚外子差別について述べられました。
私自身も婚外子差別が存在するのみならず,正当化されて
いるという話を聞いて,驚きを禁じえなかったわけです。
相続事項に関して婚外子が差別される旨を規定する
民法第900条は、規約違反です。
明確に規約違反です。
委員会も規約24条に関するジェネラル・コメントにおいて、
相続を含むあらゆる領域における差別について言及しています。
マブロマティス氏が既に述べたことを繰り返しませんが,
子どもの差別に関するその他の規定もあるわけであり,
出生の登録や通知など,差別の根拠とされる事項を含めて,
それは出生後の社会における婚外子の差別となります。
この問題は,私にとって非常に重要なものであり,
代表団がただ今説明したような家族を保護するための
法秩序をもってしても,子どもの権利を阻害するような
ものとて確保されることが会ってはならない,
というのが私の意見です。
その他の方法によって達成されなければなりません。
私が申し上げたいのは,家族の保護をもってしても,
婚外子という家族の一員が保護されない自体が
生じてはならないのです。
もし第一次的保護が家庭内の保護であるとしても,
なぜ社会が,家族自身を保護しようとしない家庭を保護
しなければならないのか理解できません。
当該の状況に関してまったく責任を有しない子どもの利益
を害するような仕方で,家庭を保護する理由はないのです。
したがって,子どもの保護が第一に考えられるべきであり,
次に,婚外子の不利益にならないという考え方に照らして,
家庭の保護が考えられるべきである,と思います。
したがって,私は,この種の差別が
すべて除去されるよう希望します。
次に,私の印象では,国のさまざまな地域で,特に職場
における女性や労働者に対する差別が存在する,と思います。

もちろん、さまざまな改善が行われているわけですが,
この点について,NGOからの一定の思想を有する
労働者あるいは一定の行動を行った労働者の解雇に
関するいくつかの情報を得ています。
私は,このような労働者慣行は法に違反するもので
あると理解しています。
法はそのような差別について規定していないからです。
代表団に確認をしてみたいことは,救済方法が
不適切であるため,実際に差別が存在している
のかどうかということです。
私の理解では、解雇された労働者は、地方(労働)委員会
に申し出て、問題を討議してもらうことができるもの
とされている、と思います。
地方(労働)委員会からは中央(労働)委員会に、
さらにそこから東京の下部裁判所に、さらに最終的
には最高裁判所に提起することができ、それも事件
によって全体で15年以上かかると思います。
手続きを急速化したり、差し止め命令が利用可能と
されるメカニズムがない場合は、そのようになる
わけですが、代表団は何か差し止め命令について
述べられたのでしょうか。
さまざまな分野における差別を除去するために、
差し止め命令が利用可能なものとされ、または適用に
なるかどうかうかがいたいと思います。
議長私は子どもの権利に関して1つ質問をするのを
忘れたような気がします。
また、それに関して代表団から情報を
いただきたいと思います。
最近、東京高等裁判所は、今年の6月ですが、
民法第900条4号が憲法違反であると宣言した、
と聞いています。
この判決のインパクトがどのようなものであったか
知りたいと思います。
民法900条を違憲として無効としたのでしょうか,
あるいは別の立法が必要とされたのでしょうか。
もしそうであれば、この点に関する日本政府の
アプローチはどのようなものとなるのでしょうか。
議長、最後に私も、日本が近い将来において
我々の規約の選択議定書を批准することが
非常に望ましいものであると申し上げたく存じます。
マブロマティス氏と同様に,私が前述したように,
問題が救済方法の問題とリンクされているのでなければ,
司法システム制度上の問題や消極的影響の救済が不合理に
引き延ばされたとの通報を送ることができたことは
確かなのですから。
そ
れは司法制度に影響を及ぼすかもしれませんが,
司法制度にとって何らの問題も発生させる
ものではありません。
問題があれば,法律の改正を行えばよいことになります。
というのは,私の国でも多くの点で司法手続きの
長期化の問題があるからです。
わが国では,可能な場合には手続きを急速化する
ための試みが行われています。
もちろんそれは簡単ではありません。
規約人権委員会のような国際機関の支援が
この点においても有効かと思います。

 

(ディミトゥリエヴィッチ議長)
ポカールさん、ありがとうございました。
それではエヴァットさん、発言をどうぞ。

(エヴェト委員)
議長、ありがとうございます。
同僚とともに、
日本政府代表団を心から歓迎したいと思います。
その規模と強さは、規約が日本で重要視
されている証左です。
ご存知のように私の国と日本とは、地理的に隣人である
という意味においてもさまざまな関係を有しています。
私にとって、初めてこの委員会に対する日本の報告書
の審査に参加することになり,たいへん嬉しく思います。
冒頭の陳述で赤松女史への言及がありましたが、
女性の(権利に関する)委員会の委員としてご一緒
させていただきましたので、嬉しくうかがった次第です。
また、私がこの委員会に加わりましたとき、有能な
指導者である安藤仁介氏が委員長を務められている
ことを嬉しく思った次第です。
彼は,これまで私がこの委員会で知遇を得た、唯一の
委員長であり、私は彼と一緒に仕事をすることが
できることを喜びとしています。
日本の第3回報告書および付属資料は、
非常に包括的なものです。
マブロマティス氏がいわれたように、先例のない
ほどの量の資料をNGOから受取っています。
私は20以上の団体から資料を受取りました。
そこでは多くの問題点が指摘され、あるものは
大きな問題であり、あるものは小さな事件を
問題にしています。
それらは、我々が日本報告書に関してとりあげるべく
詳細に研究するにはあまりに多くの問題を掲げています。
その点で、日本政府がこれらの資料とそこで掲げられて
いる問題点を検討すると今朝言われたのを知り、
嬉しく思っています。
私は、日本が詳細な資料を提供して下さったことに
感謝したいと思います。
それらは英語で作成されていましたので、嬉しく
思うわけですが、それらのなかでは、前回の審査で
とりあげられた問題について扱われています。
また、今朝、明確な回答をしていただいた
ことにもお礼を述べたいと思います。

日本の報告書を見ていますと、前回の審査で当委員会
委員による討議の内容は、規約の地位、勾留されて
いる者の処遇、死刑の適用、さまざまな差別であり、
これらの同じ問題が今回の報告書でも、また我々が
NGOから受取った報告書でも扱われています。
まず初めに、だい選択議定書の批准問題から
コメントしたいと思います。
これは前回においても議論され、
今回も本日議論されました。
個人通報に関する選択議定書の、人権世界会議に
よる普遍的な批准の要請を考慮すると、日本が
この問題にも積極的な考慮をおこなうことが
重要であると思います。
多くの国は、選択議定書を批准する手続きを
とっていますし、またいずれの意味においても
選択議定書の批准により批准国の司法権の独立が
侵害されるようなことはないわけです。
また、いままであまり経験されていませんが、
濫用の問題が生じても、国内的救済を尽くさ
なければならない、という要件もあります。
規約の地位に関して。
以前にはこれに関して
若干の懸念が表明されていたようであり、また
その懸念は現在でも継続しているように思います。
特に、公共の福祉による制限に関して
そのような懸念があります。
説明によれば、この問題は個別の事件において
裁判所が決めるものであるとされていますが、
そのことが権利の適用の不確実性を
もたらすように思われます。
規約自体に、当該の状況を定義する法律
による規約が定められています。
報告書題15項における説明において、
「もし法が当該の定めをしている場合は
規約が許容される」と書かれていますが、これは
非常に重要な要件をミスリーディングするものであり、
許容される制約は人権規約において明確に認め
られているものでなければなりません。
報告書で言及されている判決および今朝説明された
ものは、いくつかの懸念を生じされるものです。
私の考えでは、選択議定書を批准することによる
この問題は、オープンな討議を必要とする
ものであると思います。
報告書の第8項では、「ナショナル・インスティ
チューション」(国の機関)とされているものですが、
人権擁護委員会の任務についてさらに、特に、
その期間が行政機関による人権侵害のケースを
とりあげることがあるのかどうかについて、
情報をいただきたいと思います。
報告書によれば、私人間の私的問題を扱う事例が
ほとんどである、とされていますが、公的機関が
関わっている場合に、どのような手段を利用する
ことができるかうかがいたいと思います。
女性と差別の問題に関して、今朝かなり長い間
討議されたわけですが、国内行動計画が歓迎
されるべきステップである、ということを
まず申し上げたいと思います。
私は、雇用機会均等と平等賃金の実施が遅れている
ことに関するILOの報告を読みました。
育児に関する報告書題94項の記述との関係で、
規約題23条4項に基づく責務を考慮すると、
「家事責任を有する労働者に関するILOの条約」
を日本が積極的な考察を行っているのか
どうかについて質問したいと思います。
ここにおいて問題になっているのは、日本の家族関係
における男女の役割に関する黙示的または
伝統的な前提であり、それが女性の地位向上、
雇用および政治参加の障害になっていると思います。
他の委員が、(既に)子どもの権利、とりわけ
婚外子に関して続けられている差別について話され
ましたので、私はその点に関して、次のことだけを
申し上げたいと思います。
氏名や家族事項の登録があまりに厳格すぎるのが
この問題の核心にあるのだと思います。
それが、婚外子の継続的差別につながっているのです。
この問題の解決のためには、それらの両方の要件を
克服することが必要だと思います。
なぜならば、子どもであれ大人であれ、平等に
扱われなければならないのは個人の人権であるからです。
ポカール氏が言われたように、高等裁判所が婚外子の
相続に関して判決を下したとのことですが、私はそれが
上訴されたかどうかもう少しうかがいたいと思います。
他の委員が在日朝鮮・韓国人および被差別部落
について話されましたので、私は以下のことだけを
申し上げたいと思います。
アイヌ社会に関して、私の認識する問題点は、
個々の文化的アイデンティティーや言語を
維持し続けるという当該社会の希望が取り
入れられていないのではないかということです。
このことは、今日ここで議論された改善以上のもの、
すなわちこれらの地域社会自体が自己の発展のために
協議と参加をすることが必要である
ということを意味するわけです。
議長、この章で最後に私がとりあげたいのは、
選挙過程と政治参加についてです。
委員会では
さまざまな委員から、選挙キャンペーンに
おける人々に対する非常に厳格な制約に
ついて懸念が表明されました。
私としてはこの問題は、また規約第25条における
自由かつ公開の選挙過程に参加する権利との関係を、
明確にしていただきたいと思います。
議長、どうもありがとうございました。
以上が私の論点です。

 

(ディミトゥリエヴィッチ議長)
エヴァットさん、ありがとうございました。
委員のご理解をいただきたいと思いますが、
我々はこの報告書と審議の重要性をもちろん完全に
理解しているわけですが、しかし、時間は限られて
おり、発言リストにある発言予定者は多くおります。
したがって出来るだけ完結に、また既に他の委員に
よって扱われた問題については、代表団が一まとめ
にして回答していただくことになっていますので、
重ねて言及することのないようにお願いします。
このことは、利用可能な時間を用いて発言して
いただくことを決して制約するものではありませんが、
手続き状の経済から、御配慮をお願いするものです。
では、次に、ヒギンズさん、発言をお願いします。

(ヒギンズ委員)
議長、ありがとうございます。
まず初めに、私は議長も代表団も「見る」ことは
できませんが、しかし議長も代表団何処かそこに
いらっしゃると信ずべき十分の理由がありますので、
それぞれの方に語りかけたいと思います。
私は、心から代表団を歓迎し、また第2回の審査に
際して行った対話の続きをここにおいて行いたい
と思います。
私の同僚が我々の委員長に対して表明した言葉と
同じものを、安藤教授におくりたいと思います。
安藤教授は、静かに、丁寧に、かつ強力で良好な力
を持って委員長席につかれています。
私は、彼を委員長および同僚として
高く評価しています。
私は、そこに盛られている膨大な情報に関しては
多くの対話を必要とするけれども、(日本政府)
報告書をかなり良い報告書であると考えています。
また、極めて有能な代表団であると思います。
このように我々の質問やコメントに真に
回答することができる代表団を贈っていただいた
ことについて、日本政府に感謝したいと思います。

また、國方氏に対しても、相当の準備が必要で
あったと思われる、当初の質問に対するあのように
優れた回答をしていただいたことに関して感謝します。
同僚が既に言われたように、我々は非常に多くの
NGOからの提出物を受取っています。
そのあるものは規約に関してかなりの根拠を有する
内容を持っており、またそうでないものもありますが、
しかし、それらのものをいただいて大変喜んでいます。
また、私は、人権に関するこのように健康的な
公的意見の交換に対する政府の
積極的な対応を喜んでいます。
また、顕著な領域における最近の立法における
非常に印象的な変化があったと聞いています。
行政的措置においても疑いもなく改善が行われており、
またさまざまな問題に対する特定的なアファーマティブ
・アクションに関する解答が出されている、
と聞いています。
こういったことのすべてが、非常に推奨される
べきものであると考えています。
選択議定書に関して、私は、私の同僚が
既に話された、裁判所の独立に対する懸念に
関する2つの主要な理由およびその他の
濫用問題について非常に興味をひかれました。
第2の点について私が申し上げたいことは、
ただ、選択議定書自体が、濫用となる個人通報の
拒否に関する規定を有しているということです。
また、手続きの濫用から我々自身(委員会)
またその国連の締約国を保護するため、第2条
および第3条にその他のメカニズムも有しています。
したがって、まったく問題はない、と強く信じています。
さて、私は、特定問題に入る前に、
一般的問題について扱いたいと思います。
前回の審査において懸念された問題のいくつかは、
現在でも存続しているのではないか、
という疑問をもっているからです。
また、その反面、いくつかの分野に関しては
改善があったと思います。
ただし、そのような変更の理由の背後には、
たとえば他国の政府との交渉によるものがあった、
ということもあったと思います。
それは、我々の予備的な質問を
生じさせることになります。
我々の考え方が政府にどのように受け入れられた
のかという意味で、我々の前回の報告書審査のあと、
何が実際に起こったのでしょうか。
我々が述べたことが検討されたのでしょうか。
その結果、どのような行為がとられたのでしょうか。
よりよくご理解していただくために申し上げれば、
変化に抵抗を示していた者が変化を受け入れた
理由に関して、変化をもたらした他の外部的要因
とは別に、我々がこの委員会で述べていたことが
変改に対してどのように影響を及ぼしたのか、
ということです。
それでは、これから、いくつかの特定的質問を
行いたいと思います。
議長が「差し止め命令」を出されましたから、
私は非嫡出子については、同僚委員から出された
もの、特にポカール氏によるコメント以上の
質問を重ねて致しません。
在日朝鮮・韓国人に関して継続している差別に
関して、私は以下の特定質問を持っています。
長期在住者が外国人登録証を常時携帯しな
ければならない目的はなんでしょうか。
私自身、登録証を携帯させることが人権違反
になるとは必ずしも考えているわけではありま
せんが、社会のある者が登録証を携帯すること
が必要とされ、別のものには必要とされないこと、
また携帯しないことに対して刑罰が科される
ということになれば、当該の差別的取り扱いが
目的とするものは何であるか、
とうことを知りたいと思うわけです。
私の第2の質問は、他の外国人と比較して特権が
与えられている5年以内の再入国許可についてです。
永住資格を有している外国人にとっては、
なぜ5年という期限が課されているか
教えていただけますでしょうか。
私の第3の質問は、文化における同化(政策)
一般に関してであり、特定的には姓名に関して
生じているものに関してです。
率直に言って、このようなこと全てが、
ヨーロッパ人には理解が困難です。
しかし、私は次のように理解しています。
帰化した朝鮮・韓国人にとっては、朝鮮・韓国名の
継続的使用については、日本式の表記の仕方に
変更せざるをえないという一定の「事実上の」
制約があるものと思います。
しかし、朝鮮・韓国式の姓名を保持している者
にとっても、姓名は漢字で戸籍に記載され、
それがローマ字化されて、異なった日本式姓名
になりパスポートに記載されます。
また、姓名が日本式のひらがまな・カタカナで
戸籍に記載される場合でも、ローマ字化されて、
異なった姓名としてあるいは朝鮮・韓国式の
ものにいくぶん近い形で表記されます。
私が一般的に知りたいのは、名前を別のものに
表記させるため、なぜ圧力が存在するのか
ということです。
私の次の質問は、在日朝鮮・韓国人が規約27条
の規定する少数民族であると承認されているか、
ということです。
報告書には在日朝鮮・韓国人と27条の関係に
関する記載がまったくありません。
少数民族についてはアイヌに関する言及があるのみ
であり、彼らは日本人であり、その平等が保障
されている、とされているに過ぎません。
これは次のような意味で、「不吉な」
記述の仕方であります。
つまり、少数民族の権利は、彼らが国民である
限りにおいて保障される、ということを
(日本政府が)示唆しているものであり、
当委員会としてはそれを受け入れることが
困難であるわけです。
少数民族の権利は、領域内に居住している
少数民族の何人に対しても適用されなければ
なりません。
たまたま偶然に領域内にいる者に対しても
適用されるものと我々は考えていますが、
永住している者に適用され

 

(ディミトゥリエヴィッチ議長)
ヒギンズさん、ありがとうございました。
次の発言者は、シャネさんです。

 

(シャネ委員)
まず最初に、日本がこの委員会に送られた
大規模な政府団を心から歓迎させて
いただきたいと思います。
大規模のみならず、非常に有能な代表団です。
これは日本が当委員会の仕事を重要視している
ことの表れであると思います。
また、当委員会では有能な安藤仁介氏が委員長を
務められているという事実も歓迎したいと思いますし、
彼の親切、有能さ、友情と人間性を
私はほとんど毎日のように感じております。
議長、5年が経過して、私はこの対話を続ける
ことをたいへん嬉しく思っております。
私がこの委員会の委員になったのは1988年中ごろ
であり、そのとき(日本の報告書の審査が行われて
いたので)それに参加しました。
この報告書が予定通りに提出され、また迅速に審議
されることが大変重要であると思います。
つまり、それにより一国の法的かつ制度的な枠組み
を一層多く学ぶことが可能となるからです。
また、審査に際して行われたコメントが考慮に
入れられたのかどうか、またそうでない場合は
なぜこの間に改善がなされなかったのか
ということを知ることができるからです。
代表団は当委員会に明確な説明をすることが
できるでしょうから、結果的にどのようなことに
なるか知れませんし、政府もその見解を変更する
かもしれませんが、しかし、いくつかの問題が、
「差別」というよりも、「違い」に関して
存在するように思います。
その「違い」が正当化できる違いなのかどうかに
ついて知ることができるのではないかと思います。
法律や慣行が正当化できないものである場合は、
規約を遵守するものでないことになります。
しかし、多くの人々や集団が異なった仕方で
取り扱われているように思います。
したがって、それがなぜなのか、また女性、外国人、
非嫡出子など、彼らの地位に関して何らかの変化が
生じているのかについて知りたいと思います。
また、私の個人的関心では、精神障害者の場合
にも懸念を有しています。
少数民族、外国人、特に在日朝鮮・韓国人に
関して行われた質問にも同感ですし、また医療援助
に関しても質問を個人的にはつけ加えたいと思います。

思うに、医療援助は日本国民に対して
のみ適応可能とされているようです。
日本の経済に参加する形で日本で労働している
外国人が、同じ条件の下で社会保障や医療援助の
利益を受けることができないのでしょうか。
この問題(医療援助)に関して代表団に情報を
提供していただければ大変有難く存じます。
子どもに関しては、もし数字があれば、
国籍を有しない子どもは日本にどれくらい
存在するのか知りたいと思います。
婚外子が嫡出子と同じ割合の相続分を
受けることができないという出生による差別
に関しては、私は前の発言者のコメントと
同様の考えを持っております。
民法は、その点に関してな規約を遵守する
ものではありません。
それは規約が禁止する差別に当たると思います。
國方氏は、我々にその正当事由あるいは婚姻の
保護について説明して下さいましたが、
婚姻の保護と非嫡出子である子どもの保護、
子どもの置かれた状況およびその将来とは、
まったく関連すべきことであると思いません。
子どもは当該の関係に何らの参加もしていない
のであり、彼は,そのような規定の犠牲者です。
したがって、それは適正な正当事由
ではないと思います。
この件では、規約違反があると思います。
エヴァットさんが提起した女性差別の問題
に関して、またここでは女性の運命に関する
全ての問題をカバーすることは出来ないのですが、
私がうかがいたい問題は、國方さんが述べたように、
公共・民間のそれぞれの部門において
女性と使用者との間の紛争を解決するための措置
が存在するとのことですが、もし差別的取り扱いに
よって女性がその職場で差別された場合に、
何らかの救済方法が存在するでしょうか。
国の管轄(裁判所)に訴える手段や
手続きがあるのでしょうか。
その救済手段の利用方法は
どのようなものでしょうか。
彼女は、労働者としてまたは女性として、
何か特別の機関で救済を受ける
ことができるのでしょうか。
次に、精神障害者に関して、第2章において
救済方法に関する質問がありますが、
この第1章においては、私は、精神病に罹って
いる者に対する差別に関心を持っています。
1988年に報告書を審査した際に、
1987年に法律が通過したけれども、
私の質問に対する回答では、依然として
差別がある、とのことでした。
たとえば、癲癇の人は運転免許証をとることが
できないとか、精神障害者は働くことが
できないなど、労働を禁止されているのです。
私がうかがいたいのは、現時点において、
精神病に罹っている者の非常に重大な状況に
関するこのような法は、依然として施行されて
おり、彼らの合意なしに明らかに精神障害者
を制約しています。
精神障害者に対するこのような差別的取り扱いは、
彼らの責任が否定され、また行為を行うことが
できないとされているにもかかわらず、
1993年3月には、精神障害者が死刑の宣告
をなされると、判決されていますから、より一層
不思議なものとなります。
我々が受取った情報の一つによれば、
ある精神障害者が刑法の下では自己の行為に
対して責任を有するとされているのに、
しかし、一方、仕事に就くことができないのです。
議長、以上が私の質問であります。
既に行われた質問については
繰り返してうかがっておりません。
また、できるだけ短く致しました。

 

(ディミトゥリエヴィッチ議長)
では次に、ブラド・ヴァレホさん
に発言をお願いします。

 

(プラド・ヴァレホ委員)
議長、私も著名な日本代表団を
歓迎したいと思います。
この対話が前回のものと同様に、
実りあるものとなる確信を有しています。
私は、幸運にも2つの審査に参加することができ、
またいずれもポジティブなものでした。
日本代表団は非常に有能であり、今回もまた、
日本の法律の進展状況に関して、より一層有用な
対話をしたいと思っています。
議長、この委員会において安藤氏を構成員として
有していることについて、私の満足感について
表明することもお許し下さい。
私は、幸運にも彼がこの委員会に委員として
加わった当初から委員長の現在に至るまで、
共に委員を務めさせていただいています。
彼は(委員会にとっても)その仕事を運営して
いく上でも、規約の実施の上でも、才能と人間的
感情を持った膨大な価値のある方であり、また討論
を指揮するに際しても、この委員会にたいして
膨大な貢献をしています。

今回の報告書は、前回のものと同様、良い報告書
であり、今朝、著名な代表団により回答された
答えも日本における規約の地位に関して補足的な
描写をしていただきました。
議長、しかし、他の委員が既に言及されたように、
いくつかの問題があります。
私は、
その幾つかに関して懸念を持っており、
また高名な代表団に質問したいと思います。
他の委員と同様、選択議定書を未だに批准
していないことを残念に思います。
選択議定書を批准しないことに関して、
報告書は何らかの正当事由を提供していない、
と思います。
ヒギンズさんもこの事に言及されました。
日本は批准をすすめるべきであります。

驚いたことは、日本が未だ拷問禁止条約を
批准していない、ということです。
これは、人権に関する分野での基本的文書です。
日本がなぜ、拷問禁止条約を批准しないのか、
本当に理解できません。
何が問題なのでしょうか。
日本が批准することは、人権のために役に立つと思うのです。
というのは、日本国内においてのみならず、
国際的にも役に立つからです。
議長、婚外子に関して代表団が述べたことは、
その点に関して差別を正当化するものではありません。
嫡出子の相続分の半分しか婚外子が相続できない
という事実は、明らかな差別であり、また出生登録
(戸籍登録)における氏名に関しても差別があります。
この分野に関して、日本は法律を改正し、
婚外子に完全な平等を実現するという規約上の
責任を有しています。
議長、第2に、私が入手した警察の行動に関する
情報でありますが、男性と女性の被拘禁者がいる場合に、
女性の処遇が男性のそれより過酷なものである
という事実は、確保するため何かが行われなければ
ならない、ということを意味するものです。
女性の非拘禁者に対するそのような処遇を除去する
措置がとられなければなりません。
報告書には、また、いくつかの
積極的な側面も見られます。
私はそのいくつかを指摘したいと思います。
報告書の第88−89ページにおいて、
女性の平等を促進するための中心的オフィスが
設置された、とありますが、報告書において記載され、
また代表団が述べられたことは、良い措置であり、
良い結果を生みだしています。

規約人権委員会(自由権規約)第3回フランス政府報告書(抜粋)

規約人権委員会(自由権規約)への
第3回フランス政府報告書(抜粋)

1、財産以外の事柄に関する非嫡出子の法的地位

376、フランスの法律では、民法334条に
嫡出子と非嫡出子における平等の原則があるが、
異なった種類の非嫡出子間、つまり、「通常の
(ordinarry)」非嫡出子と「姦通による
(adulterine)」非嫡出子——法廷な定義では
妊娠時に父親または母親が他の人との結婚の
きずなにより束縛されている場合の子ども——
についても同様に平等を認めている。(334条2項)

377、唯一特別な点は、近親相姦に関するものである。
民法334条10項には「非嫡出子の父親と母親の
間に161、162条に規定するような結婚の障害
が存在する場合…どちらか一方がすでに親族関係、
親子関係が確立されている場合、もう一方の
親子関係は禁止される」との規定がある。

138、最後に、非嫡出子への親権の行使に関しては、
民法374条2項の規定、両方の親が子どもを認知
した時には「親権は母親により完全に行使される」
に留意すべきである。
しかし、同条項に以下のような規定もある。
法廷は、「にもかかわらず、どちらか一方の要求、
または公的検察官の要求により,父親のみ、
または父親と母親の共同で親権を行使するとの
判決を下すこともできる…」

 

2、非嫡出子と相続

379、原則として、非嫡出子は嫡出子と同等の
相続の権利をもつ(民法575条)。
しかし、姦生子の権利は、姦通の犠牲者である
配偶者や嫡出子と競合する場合、少なくなる
(民法759,760条)〈1997年7月審議の後、
婚外子差別撤廃の勧告が出された〉
〈2001年2月 欧州人権裁判所でも、
相続差別は人権条約違反との判決出される〉
2001年12月4日 婚外子差別撤廃される

 

 

 

規約人権委員会 ジュネーブ 1993.10.27(水)1278委員会

1993.10.27(水)1278回委員会 午後3時〜6時

規約人権委員会

 

(渡部、法務省国際課長)

私は、日本語で発言します。
まず、婚外子の問題について、民法第900条4号但書
は、被相続人について,非嫡出子と嫡出子でない子
の双方があり、かつ被相続に人が遺言により相続分
を定めなかった場合の嫡出でない子の相続分は
嫡出子の2分の1としているわけであります。

すなわち、我が民法は、相続人が嫡出子のみで
ある場合と、相続人が嫡出子でない子のみで
ある場合について、その相続に差異を設けては
いません。

また、被相続人が遺言によって自己の相続人で
ある嫡出子でない子に対して、自己の相続人で
ある嫡出子と同じ、またはそれよりも多い相続
分を与えることも否定していません。

ただ、被相続人がそのような遺言をしていない
場合にのみ、嫡出子と非嫡出子でない子の相続
分に差異をもうけているものであります。

この規定の目的は、正当な婚姻関係にある夫婦
とその間の子から形成される、正当な家族関係
を保護しようとすることにあります。

我が国の法制は、一夫一婦制の下で、夫と妻
およびその間の未成熟の子を家族の基礎的単位
としています。

正当な婚姻関係によって形成された家族
の保護は、憲法上の要請でもあります。

この観点からすると、正当な婚姻関係から
出生した子と、そうでない子との利益が
対立する場面において、正当な婚姻関係
から出生した子の利益を図ることによって
家族の保護を図ろうとしているのが
民法900条4号但書の規定であります。

その目的は、合法的なものであります。
また、相続は、私有財産性の維持の観点から
被相続人の死亡により帰属を失うことになる
財産を、誰に承継させるかという問題であります。

これを相続人の側から見ますと、被相続人
の死亡に伴う反射的利益としての性格が強い
のであります。

相続分に差異を設けることによる不利益は
人が本来有する権利を剥奪することによる
不利益に比べれば、小さいのであります。

目的の合理性と較べても、不当な差を
設けるものとはいえないのであります。

なお、本規約が23条において家族制度を
社会の自然かつ基礎的単位として認めて
いること、国連事務総長によって出された
規約の草案注釈の内容、それから本条約
の審議経過に照らしますと、相続に関する
事項について、嫡出子と非嫡出子との間の
区別を廃止することを要求するものと
解することはできません。

民法900条4号但書は、本規約に
抵触するものではないと考えます。

なお、この規定につきましては、我が国内
でも憲法の規定、本規約に違反するとの
意見もあります。

これと同じ見解に立つ高等裁判所の
判決もございます。
先ほど、委員がリファーされたのは
この判決でございます。

他方で、この規定は、憲法および本規約
の規定に反するものでないとする高等
裁判所の判決もあります。

この点に関する最高裁判所の
判決は、いまだ出ておりません。

一方、この問題に関します国民
の意識について申し上げます。

1979年に実施された世論調査によりますと
嫡出子と嫡出子でない子との相続分を平等
とすることに賛成するものが16パーセント
であります。

これに反対するものが48パーセントでございます。
法務省におきましては、1979年7月、司法界
や大学、婦人団体等の関係各界に意見を
求めました。

この時点でも、先ほど話したとおり、国民の
反対が多かったうえ、関係者の意見も国民
感情に反し、時期尚早であるとの反対意見
が少なくありませんでした。

そのため、嫡出子でない子の相続分は、
嫡出子である子の相続分と同等とすると
いう案について、改正を見送りました。

また、1980年の相続法の改正に関しまして
国会審議の際に反対意見も述べられています。

そのため、嫡出子と非嫡出子の相続分を同等
とすることについては,国民の合意が得られ
ていません。

この問題は、正当な婚姻による妻や子等の
家族の保護と、嫡出子でない子の保護との
調和という観点から、立法政策上の問題と
して解決を図るべきだという意見も強い。

今後も、このような取り扱いを維持するか
否かにつきましては、国民の価値観の変化、
国民世代の動向等を見極めながら、慎重に
検討する必要があると考えています。

次に、戸籍面についての問題についてお答えします。
子どもが認知されました場合には、民法
791条1項の規定により、家庭裁判所の許可
を得て父の氏を名のることができるように
なっております。

婚外子の数について質問がありましたので
お答えいたします。

 

 

規約人権委員会 1278委員会 ジュネーブ 1993年10月27日(水) 午後3時〜6時 

1993.10.27(水)1278回委員会 午後3時〜6時

(25)再開        P94〜

(ヴェナーグレン議長)

これより会議を再開します。
質問事項第1章に関して発言を希望されている
リストにしたがって会議を進めます。
もし午前中に提起された争点に関して特に発言を
希望する方がいなければ、リストにしたがい、
ハーンドゥル氏に発言を認めたいと思います。
ハーンドゥルさん、どうぞ。

 

 

(26)ハーンドゥル委員(オーストリア)の質問

(ハーンドゥル委員)

議長、ありがとうございます。
本日の午後の最初の発言者ですので、午前中に
おける賛辞のいくつかを繰返したいと思います。

まず、日本の第3回定期報告書を「提出」し、
またこのような言い方が可能であれば、「防御」
するためにジュネーブまでやってこられた
著名な日本代表団に感謝したいと思います。

代表団に是非知っておいていただきたいのは、
私個人として、この委員会の尊敬されている
委員である安藤氏に最大の敬意を有している、
ということです。

私が3年前にこの委員会の委員となってから
共に仕事をさせていただいております。
彼は現在、委員長であります。

私は彼に対して最高の評価を有しており、彼の
この委員会に対する貢献を賞賛するものであり、
また人権全般のために彼が貢献していることに
たいしても賞賛したいと思います。

彼は、いまやさまざまに複雑な人権問題を
長年にわたって扱ってきており、前述したように
彼自身非常な貢献を行っているわけです。
このことを高く評価したいと思います。

賛辞に関して、報告書自体も高度
な質を持ったものであります。
私は、この報告書の起草者に
賛辞を送りたいと思います。

どれほど多くの作業や省察がこの文書に
関して行われているか明らかです。
議長、では以下に、質問事項第1章に
関する最初の一連の問題および議論に
関して質問させていただきたいと思います。

私が質問したいと考えていたことのほとんど
は既に質問され、また私はそれを繰返したい
とは考えておりませんが、少なくとも2〜3の
事柄に関して質問させていただきたいと思います。

というのは、それらについて若干
強い印象を持っているからです。
最初の問題は、再び称讃の言葉になりますが、
明らかに、日本では規約が非常に知られている、
ということです。

それが何を意味するかということを別にしても、
日本のNGOや個人が規約について知っており、
また思うに、その証拠はこのようにたくさん
の文書を委員会の我々が受け取っていること、
また多くの傍聴者がこの討議を傍聴するために
こられているという諸事実によっても明らかです。

NGOが言いたいことは、日本政府によって
考慮されることになるのを希望していますし、
また政府もこのように膨大な―—「膨大」と
いう言葉を強調したいと思いますが――文書が、
日本における規約の実施に関してNGOにより提出
されているということをご存知のことと思います。

さて、議長、私が問題にしたい最初の真に
実体的なトピックは、再びその問題を取り上げて
恐縮ですが、規約と国内法との関係です。

私は、日本国憲法第98条を取り上げたいと思います。
第98条では、この憲法か「国の最高法規であって、
その条規に反する」法、条例、詔勅、政府の行為
の全部、または一部は法的効力または有効性を
有しない、と宣言しています。

これが、問題の核心に直接的に
私の関心を引きつけるのです。
規約の規定と憲法自体の人権規定との間に
矛盾・乖離があった場合には、憲法の文言
により、規約の規定、それが国内法に融合
していたとしても、何らの法的効力も有し
ないことになります。

したがって、これは私の最初の質問ですが、
実際に矛盾が生じた場合はどうなるのか、
ということです。

1998年、第2回定期報告書の討議の際に、
日本代表団は、規約の規定と日本の立法
との間には何らの衝突もかつて発生した
ことがない、と言われました。

これはサマリー・レコード(要的記録)
の827頁にあります。

しかし、憲法のなかに1組の限定された
人権規範と、異なった仕方で形成された
1組の規範を有していますので、締約国が
報告書のなかで述べているような簡単な
答えを出すことは困難だと思います。

しかしどのような言葉使いであろうとも
原理がそこ(憲法の規定)にありますの
で……つまり、これは規約の規範に関す
る言葉使いの問題、解釈の問題であるわ
けです。

これは私のコメント第1です。
(P.96〜)私のコメント第2は、
人権の制約に関する問題です。

報告書の第5項は、人権が公共の福祉に
よって制限されうると述べています。
それが基本であり、続いて公共の福祉が
何を意味するのか、またその意味を決め
るのは裁判所であるということについて
説明が試みられています。

ところが、憲法第12条および13条を見て
みると、立法者または行政府が人権を制
限するための権限が何ら書かれていません。

第12条および13条は、個々の人権の個人自身
による「利用」について定めているのです。

第12条をちょっと引用してみますと、
「この憲法が国民に保障する自由および
権利は、国民の不断の努力によって、
これを保持しなければならない。
また、国民は(自由および権利)を濫用
してはならないのであって、常に公共の
福祉のためにこれを利用する責任を負う」
とされています。

つまり、一定の責任が明らかに
個人に課されているのです。
そして、思うに、これが一般的に、
人権概念と矛盾するのです。

何故なら、人権概念に内在するものとして、
個人と国家との関係、および国家や国家の
機関により尊重されなければならない
個人に属する人権が存在するのであり、
したがって、利用しまたは責任を負うこと
または自己の人権を公共の福祉のために
利用しなければならないことを、個人の
責任とすることはあり得ないのです。

これは、思うに、日本国憲法第12条、
13条と、政府報告書第5項において説明
されていることの矛盾関係です。

他の発言者がすでに述べていますので、公共
の福祉の概念についえは言及いたしません。

申し上げたいことは、規約によれば、ただ
特定の権利のみが公的利益や公的秩序を
理由として制限されうるのであり、また
国家によっても全く制限できない権利が
存在する、ということなのです。

私の第3のコメントは、平等および女性の平等
について述べられたことに関するものです。

わたしは、平等の報酬に関する日本政府と
ILO専門家委員会の間の多岐にわたる意見
についていくつかの懸念を有しています。

以下のような事実にはあまり言及したくない
のですが……思うに、女性は、事実の問題
として、明らかに、低賃金の労働を割り当て
られており、調査によればわずか23%の企業
しか女性をあらゆる(種類の)仕事に就かせ
ていないとのことです。

また、女性は、事情に婉曲的な言い方をすれば、
「女性としての特徴および感受性を示すことの
できる仕事」に就いてもらっている、という
人もいます。

このような言い方自体が、いくぶん、
差別的な刊行を示しているものです。

(220)私は、婚外子の相続、(戸籍)登録
の必要性、およびその権利に関する一定の
範囲における差別について、サディ氏やその
他の委員が言われたことを支持したいと思います。

私は、平等に関する私の発言との関連で、
日本国憲法第14条を引用したいと思います。

「人種、信条、性別、社会的身分又は門地
により、政治的、経済的又は社会的関係に
おいて、差別されない」

と定める第14条は、2つの点において制限的
なものです。
第一に、問題は、差別のための理由が十分
なものであるかどうか、ということです。

それは、人種、信条、性別、社会的身分
又は門地のみに限られるのでしょうか。
一般的にその他の領域においては
どうなのでしょうか。

また、実体に関して、いかなる差別も
政治的、経済的又は社会的関係において
行われてはならないのです。

さて、それが、少数民族等に影響を及ぼす
文化的関係におけるような、その他の
問題に関する制限なのです。

これらの2つの制約は、それが適用される
範囲に関して、どうなっているのでしょうか。
この点に関して回答していただければ
ありがたく思います。

議長、最後に、私は、日本社会における
特定の集団の取り扱いに触れたいと思います。

平等に関する規約第26条、少数民族に
関する第27条が適用になるものです。
私は、まずアイヌ民族に関して
話したいと思います。

彼らの取扱いについては、第27条の下で
いくつかの説明がありましたが、私の
質問は、アイヌ人に関する基本的な規範
が1899年に制定された「北海道旧土人
保護法」に依然として依拠しているのは
事実かどうかというものです。

したがって、我々は、まもなくこの法律
によれば、アイヌは、北海道の原住民で
あるとされており、「保護法」ですから、
その保護について述べられています。

私は、他国において行われているのと同様
に、法律の改訂の時期がきていると思います。

そして、この法律により依然として合法的
なものとされている差別を除去すべきで
あると思います。

規約第27条の下で少数民族が保護に必要
とされることは、国が彼らを集団として
保護することです。

言及したいその他の日本社会における
(問題)は、同和の人々、一般的には
「部落民」と呼ばれている人々です。

報告書の第230項に同和問題に関する短い
記述があり、また部落民の(地位を)改善
するために政府が過去において行ってきた
ことに関する補足説明がありました。

さて、議長、これは5年前に報告書で
討議された事柄でありますが、政府が
その人々の運命を改善するためにさまざま
な努力を重ねているとはいえ、我々は皆、
依然として差別されている部落民と呼ばれ
ている人々が日本には存在するということ
を知っています。

私の主張は、あらゆる可能な措置を講じて、
日本におけるこの「部分」を社会全体の中
に統合し、またおそらくこの世代において
できなくても、次の世代においては、一般
の日本人と同和地区の人々と報告書で記載
されている人々との間にいかなる「区別」
もないようにすべきだ、ということです。
これは規約の平等条項の本質的な特徴の一つです。

 

 

(29)ヌジャーイェ委員(セネガル)の質問
             (p.101〜)

(ヴェナーグレン議長)

セリエさん、ありがとうございました。
ヌジャーイェさん、発言をどうぞ。

 

 

(ヌジャーイェ委員)

議長、ありがとうございます。
議長、最初に日本からの有能な代表団
に対して、私の心からのお祝いをさせ
ていただきたいと思います。

日本は、非常によい第3回報告書を提出
してくださいましたし、それは全体とし
て優れた、詳細な、率直なものです。

私は、まず、同僚と同様に我々の現在の
委員長である安藤氏に非常に満足している
と申し上げたく存じます。

彼は有能、熱心かつ仕事に専心している
人であり、常に親切な方で、それが(委員
会の作業のために)非常に役立っています。

ただ一つ残念なのは、この委員会が日本で
開催されなかったということであり、もし
開催されていたならば日本の方々、また私
を含むこの委員会の委員の好奇心を満足
させていたはずである、と思います。

議長、我々が日本の第2回報告書を審査した
際、私は、私自身の国セネガルのように、
アイディンティティーを主張したい国と
して、日本は特に興味深い国であると
強調いたしました。

何故なら、日本は非常に古くからの文明を
持つ国でありながら、現在では近代化され
ており、いまや最も進んだ科学・技術を
持っています。

日本では、尊敬される夫や妻、その他に、
文化的伝統が一定の諸価値に基礎をおいて
いる国です。

したがって、このような国においては、
人権の尊重はさまざまな問題を生じさせる
かもしれません。

したがって、以下のような質問をして、
私の質問を終わりたいと思います。

人々の中に、このような進歩に対する
何らかの抵抗がないのでしょうか。

この問題を再びうかがうのは、報告書
第89(a)項において、男女の平等に
関する改革の再評価がありますが、
そこには、諸制度におけるもののみ
ならず、実際の実務における、女性の
向上に関するステレオ・タイプ的な性別
に伴う男女の役割が記されています。

また、母性の重要性、性の尊厳そして
母性の保護の促進のための意識の向上
の促進について書かれています。

同じ項目の(b)、英語版の18ページの
本文の89ページなど、中長期的プログラム
に関しては、法律や命令に示されている
日本政府の意思と、これらの権利に対する
抵抗を示している一般的な(労働)規約と
の間には、一定の不調和が存在するように
思われますし、それは別の項目についても
同様に存在するように思います。

これは、日本の国際的責任の問題をとりわけ
発生させるわけではありませんが、しかし、
基本的な選択に関する問題を発生させます。

おそらく人権教育の分野で行われ
ている努力があるでしょう。
というのは、そのレベルにおいて規約の
適用可能性に関する問題が生ずるからです。

我々がいかに感謝しているかということ
に関して、日本の代表団にお知らせしたい
と思います。

また、さまざまなNGOが報告書を提出して
くださいましたが、それらの報告書および
ここにいらしてくださったNGOの方々を
歓迎したいと思います。

おそらく、HGOが、当委員会のさまざまな
コメントを一般に知らせていただけると
思います。

したがって、規約第40条に基づき、これが
あなた方のシステムを改善するのに役立つ
と思います。

更に、終わりにあたっていくつかのコメント
をしたいと思いますが、ヒギンズさんが私の
言いたいことのほとんどを言ってください
ましたので、端的に申し上げますが、日本は
選択議定書批准の努力をすべきであると思います。

選択議定書に関して法的機構と国際機構の
関係においてあまりに懸念される必要は
ないと思います。

既に述べられているように、国内的救済を
尽くさなければならないとのルールもあり、
委員会は考えられるさまざまな濫用に対応
することもできます。

我々の先例には、我々が事案の重要性を
モニターする方法や、個人通報が依拠すべき
理由などを示す事件をお示しできるものも
あります。

また、何故、日本があらゆる形態の差別
撤廃条約、アパルトヘイト禁止条約を批准
をしないのかということを理解することが
困難です(訳注・日本は批准しており、
委員会の誤認と思われる)。

アパルトヘイトに関して、外交のみならず、
財政的、経済的にも、日本が過去および
現在において行っているさまざまな努力を
知っており、南アフリカの国民の発展を
可能にするプログラムや情報もあります。

報告書の31項に記載されています。
たとえば、第35項において、日本国憲法は、
第14条1項において個人の尊厳と法の下に
おける平等を定めていますが、そこでは
「何人も」と定めており、「人種、信条、
性別、社会的身分又は門地による差別」
があってはならないとされています。

これらが規約に完全に一致しあるいはそれに
等しいアパルトヘイト反対の基本的な規定です。

あらゆる種類の人種的差別を除去するため、
除去に関する条約およびアパルトヘイト
禁止のための処罰が必要です。

これらは、日本だけにおいて
生ずる問題ではありません。

イデオロギーや宗教に支配されている全て
の国において、嫡出子および婚外子の間の
差別があります。

また、場合によっては、姦通によって
生まれた子どもに対する差別もあります。

規約第24条にしたがって
立法が行われるべきです。

NGOから得られた膨大な情報によれば
会社や企業の内部においてさまざまな
差別が存在するようです。

それらの差別によれば、人々を酷使し、
忍耐に基礎をおくような差別、長時間に
わたる労働可能能力による差別がある
ようです。

ある会社では、1日14時間以上も
働く必要があるとのことです。

そうでなければ,労働者として適当で
なく、仕事を失うこともあります。

NGOから受け取ったこのような情報の中
には、かつての軍人であって,日本国籍
の同僚軍人であったものと同じ取り扱い
を受けていないことを主張している人々
もいます。

もし必要であれば,お渡ししてもかまいま
せんが、これらの文書にはこの委員会の
管轄内に属することが書かれており、規約
の26条に、事実、違反するものかどうか
我々としても検討すべきです。

我々は、それをあなた方とともに
見ていかなければなりません。

以上が、私が今申し上げたいことの
全てであり、また後ほど、関係の章
で発言したいと思います。
議長、ありがとうございました。

 

 

(30)アギラー委員(コスタリカ)の質問

(ヴェナーグレン議長)

ヌージャーイェさん、ありがとうございました。
発言予定者のリストには、あと一人の予定者が
残されています。

その後、フランシスさんに発言していただきます。
では、アギラーさん、発言をどうぞ。

 

(アギラー委員)

議長、ありがとうございます。

私が最後の発言者であることを本当は希望しません。
しかし、私が考えていた質問の
全ては、既に質問されました。

私は、このような非常に重要な
代表団を歓迎したいと思います。
私がかつて経験したものの中で、
最も印象深い代表団です。

特に、彼らは非常によく準備が出来ています。
また、我々の委員長の安藤氏の貢献に対する
賞賛について同僚と同意見であります。

我々は、4年間、私の唯一の隣人でありました。
私は、この委員会の委員となって、彼の左側
の席に着席していることを心から嬉しく
思っております。

彼は私の右側にいるわけですが、私の最初
の経験は,この委員会での居心地をよくして
いただき、その援助を得たということであり
その意味でも感謝しています。

議長、私は、他の委員によって行われた質問
を再び行うためにこれ以上の発言を求める
ことをいたしません。

しかし、私の同僚が質問したことを一層強調
するために2〜3の質問を非常に短く行いたい
と思います。

私の最初の質問は、日本の法律における
規約の位置が正確にはどのようなもので
あるか、ということです。

最初の2回の報告の審査において、特に
第2回の報告書において、委員会は、規約
に関する取扱いが国内法によって変更さ
れるべきではなく、規約は国内法の一部
となっている、との報告を受けました。

しかし、既にさまざまな機会に、日本の裁判
所は、以下に私が引用するように述べています。

すなわち、見方によっては、これは以前に
我々に語られたことに極端に反しています。

したがって、私は、日本の法律における
規約の位置が正確にどのようなものである
かということを知りたいのです。

また、私のところにやってきた何人かの
方々から、またここで発言された委員に
よって、女性、少数民族、非嫡出子に
対するさまざまな差別が指摘されました。

それらのケースはたくさんあります。
また、個別のケースについても言及されました。
また、私以前に発言された全ての同僚に賛意を
表したいと思います。

また、私が個人的に重要であると考えている
2つのケースについて述べたいと思います。

第1は、非嫡出子に関するものです。
相続に関する質問がありましたし、姓名に
関する質問、すなわち(戸籍)登録に
あたって他の日本人の子どもには認められる
表記が認められないこと、などがありました。

私は、これは非常に残念なことであると思います。
特に、マブロマティス氏が既にいわれたように
差別やその携帯に関するもの以外に、第7条の
定める非人間的かつ品位を傷つける取扱いが
存在すると思います。

他に何らの責任も持たない子どもが、社会に
よって責任をとらされ、また社会と日本の
法律によって差別されているのであり、
したがって、私は、マプロマティス氏の
言われたことに賛意を有するのです。

日本政府が法律を抜本的に変更し、また
大規模かつ核心に迫る教育を行って、
婚外子に対するこのような差別がなくなる
ように努力されることを促したいと思います。

また法律婚と事実婚における違いがあるようです。
たとえば、規約第23条に関して離婚後の父親
のいない家族を保護するための措置が講じら
れている、といわれましたが、しかし、父親
がまったくいない家族に関しては、何も報告
されていません。

これは差別にあたります。
何故なら、離婚後に父親が不存在となった
家族と、父親が初めから不存在であった
家族との間に、差別があるからです。

たとえば,子どもの保護または家族の保護
のための財政的援助について言及がありま
したが、コモン・ロー家族(事実上、家族
を構成している人々)であって、両親が婚姻
していないて同居している「家族」について
は何も報告されませんでした。

重大な懸念があるもう一つの問題は、
タジャーイェ氏が提起した最後の
ポイントに関してです。

それは、第二次世界大戦において、自己の
生命を危険に曝すことにより、自分の生命
を提供しようとした人々です。

現在、彼らは、他の日本軍人であった人々に
与えられている権利の享受を奪われています。

彼らのある者は、過去において日本国籍
を有していましたが、戦後の状況により、
他国の市民となり、また、日本軍に属して
いたことを理由に、彼らは彼らの国に
おいて差別されています。

そのほか、日本国民である退役軍人と
日本国民でない退役軍人との差もあります。

国籍を有するものは退役軍人恩給を受ける
資格がありますが、朝鮮・韓国人、台湾人
の(旧日本兵であった)者は資格を持って
いません。
彼らは恩給を受けることができないのです。

タジャーイェ氏が言われたように、委員会
に個人通報事件として提出されたゲイエ
事件がありますが、これを当委員会の先例
に照らしてどのように考察すべきが考えた
いと思います。

以上、いくつか申し上げましたが、さらに
報告書のいくつかのポイントに触れたいと
思います。

まず。公共の福祉についてですが、國方氏
が今朝、規約上の権利の制限との関連で
公共の福祉の問題に言及された時、2つの
権利の衝突が問題にされました。

そのような衝突は、一定のケースにおいて
法律がある権利よりも他の権利を保護する
のであると(説明し)、また彼は、表現の
自由との関連における名誉の保護に関して
特定な例を挙げました。(略)

 

 

「ベアテの日本国憲法」朝日新聞 1993年5月24日〜27日 夕刊

その古びたいすに、ベアテ・シロタ・ゴードン
(69)はこわごわと腰を下ろした。

87歳のチャールズ・ケーディスが
ちゃめっけたっぷりに言った。
「帰ったらマッカーサー夫人に言いつけてやる。
君が元帥のいすに座ったって」。
ベアテは子どものように心配そうな顔をした。

24日朝、二人は東京のお堀端にある
第一生命ビルの6階にいた。
日本を五年あまりにわたって統治した
ダグラス・マッカーサーの旧執務室である。

ベアテにとってマッカーサーは今も怖い存在だ。
彼の下で日本国憲法の草案と作った頃
ベアテは22歳だった。

1946年2月4日午前10時、連合国軍総司
令部(GHQ)民政局行政部のスタッフは、
民政局長のコートニー・ホイットニーに
召集された。

マッカーサーの執務室に近い小さな会議室だった。
行政部長のケーディス以下約20人の
末席に最年少のベアテもいた。

おはよう、と言ったあとホイットニーは、
ややおおげさな表現で命令を告げた。
「諸君は今は、憲法制定会議の一員だ」

ベアテは「びっくりしましたよ。
でも、軍では注文があればすぐやらなければ
ならないでしょ」とそのときの気持ちを思い出す。

ホイットニーは天皇制存続、
戦争放棄、封建制度廃止の「マッカーサー
三原則」を示し、極秘作業を命じた。
八つの委員会ができ、ベアテは
「人権に関する委員会」に入った。

同僚は55歳と47歳の二人の男性だった。
「あなたが女性の権利を書いたらどうですか」
と言われ、ベアテは喜んで承知した。
時間は切迫していた。

2月1日、毎日新聞が日本政府の憲法問題
調査委員会の「試案」をスクープした。
「天皇の統治権は不変」という見出し
の記事を見てGHQは危機感を抱く。

日本民主化の決め手として、早く
GHQ案を出さなければならない。
日本政府がまもなく正式に草案を
示すことになっていた。

ホイットニーは一週間で原案を
完成するよう命じた。
さっそく、ベアテは街に飛び出した。
行き先は図書館。

しかし、焼け跡の東京のどこにどんな
図書館があるか見当がつかない。
ジープの運転手に行き先は任せて三つほどの
図書館を回り、世界各国の憲法を借り出した。

「今でもどこに行ったのかわからないんです。
英文だからたぶん大学でしょうね」
集めた憲法文献は、引っ張りだこになった。

法律の専門家もいたが、突然、一国の憲法を
書けと言われ、みんなが手本を見たがった。

ベアテはタイプに向かい、各国の憲法から
学んだ考え方と、自らの理想とを練り上げた
草案を打ち込んでいった。

「妊婦は国の保護を援助を受けられる」
「私生児も法的差別をしてはならない」
など、女性の視点を生かした案文が
つむぎ出されていった。

だが、「妊婦及び授乳期の母親は,既婚,
未婚にかかわらず,国の保護及び,必要
とする援助を受けることができる」
という条項を始め,私生児への差別禁止、
児童の医療費無料など、ベアテが書いた
こまやかな案文は次々に不採用になる。

ケーディスたちは「民法に入れるべきだ」
という意見だった。
「でも憲法に入れておきたかった。
日本の男性に任せたらどうなるかわからない
と思った」

と、今、ベアテはいう。
「私,みんなの前で泣いちゃったんです。
とても心が痛かった」

GHQ案は命令から9日後の13日に
日本政府に示され、3月6日には政府の
「憲法改正草案要綱」が発表される。

ベアテの草案はGHQ内部のチェックで
文章も変わったが、そこに込めた精神は
「婚姻は、両性の合意のみに……」という
憲法24条の「男女同権条項」に生きた。

ベアテは5歳から15歳まで日本で暮らし、
日本語を自由に話す。

先進的な草案の背景には、その体験が
色濃く影を落としていた。
憲法記念日を前に、一人の女性起草者を通して
日本国憲法誕生を振り返る。(田中英也)

 

憲法草案作成の作業がはじまって四日目の
1946年2月7日、連合国総司令部(GHQ)
民政局は、各委員会が作った案文の検討
に入った。

ベアテ・シロタ・ゴードン(当時22)たち
三人の「人権委員会」は41条もの草案を
用意していた。

医学部出身の陸軍中佐ピーター・ルースト
(当時47)と,戦前慶応大で教えたハリー・
ワイルズ(当時55)の二人の同僚は女性の
権利を大幅に広げるベアテ案に賛成していた。

しかし草案をまとめるチャールズ・ケーディス
(当時40)ら三人のチェックは厳しかった。
ベアテの自信作は、「家庭は人類社会の
基礎で(中略)婚姻と家庭は法に保護される」
ではじまり,「個人の尊厳と両性の平等に
立った法律が制定されるべきである」で
結ぶ「男女同権条項」だった。
これは採用された。

3月4日から5日にかけて、GHQと日本政府が
政府案作成の最終協議をした。
ベアテは通訳としてその席にいた。

「男女同権のところに来たら
日本側が強く反発するんです。
でもケーディスが『これはシロタ嬢が
確固たる信念で作ったから可決しましょう』
通し切ってしまいました」

ベアテは39年に渡米するまでの十年間、
東京の乃木坂で両親と暮らした。
父レオ・シロタ、母オーギュスティーヌ
は共にウクライナ出身。

ベアテはピアニストの父が活躍
していたウィーンで生まれた。
山田耕筰に誘われて来日した父は、
東京音楽学校(現東京芸大)ピアノ科
主任教授を務めた。

ベアテは独英仏各語で学び
両親はロシア語で話した。
だが遊び相手は近所の子どもだった。

社交的な両親も日本人の友人を
次々に家に招いた。
ベアテは幼い目から昭和初期の
日本社会を観察する。

「男性は給料を奥さんに渡し,
教育もお母さんが決める。
でも女性は社会に出てこない。
自分からは離婚も出来ず、パティーの時
も自分は台所で食事をすましてましたね」

早熟なベアテは十五歳でカリフォルニア
の大学に入り十九歳で卒業した。

就職した雑誌「タイム」での
肩書きは「調査員」。
「記者」は男性に限られていた。

「私が全部材料を用意して,男性が書く。
出来るとまた私に回ってくる。
一語一語チェックして、間違ったら
私のせいなんです」

アメリカでは,戦争が人手を求めた
ため男女同権が進んだといわれる。
しかし、ベアテは女性が置かれた現実
にくちびるをかみ、日本の土を踏んだ
のだった。

二十六日夕、東京・本郷の学士会館分館
で,来日中のベアテはケーディスと並び
憲法学者たちに人権条項が後退したいき
さつについて説明していた。

「ルーストとワイルズは分かってくれた
けど、ケーディスさんたちは違いました」。
威な頭脳で聞こえたかつてのGHQ行政部長は、
隣でただ笑むばかりだった。

「あのときどんなお仕事をしていたのか,
今までまったく知らなかったんですよ」
洋画家,梅原龍三郎の長女、嶋田紅良=(77)は,
ベアテ・シロタ・ゴードンにそう言った。

幼なじみの二人は二十四日午後、東京で再開した。
ベアテが連合国軍司令部(GHQ)にいた
とき以来,四十六年ぶりだった。

憲法は日本政府の手で起草され,
帝国憲法の改正手続きを経て成立した。
そういう建前を,政府もGHQも貫いた。

GHQの憲法草案作成は極秘で,ベアテは自分が
関係していることを両親にも知らせなかった。
1947年5月、日本国憲法の誕生を見とどけて,
ベアテはアメリカへ戻る。

憲法制定過程にGHQが大きく関与していた
事実は50年代に入って日本国内でも
広く知られるようになった。
「押し付け」論が台頭した。

ベアテは沈黙を守った。
「憲法を変えるため,『こんな若い女性
が書いた』と言い出す人もいたんです。
利用されたら憲法が困ると思い,
インタビューもみんな断りました」

アメリカでは,日本との交流を求める
「ジャパン・ソサエティ」で働いていたが
65年まで来日を控えた。

日本の級友の多くは最近まで,彼女が
憲法起草者の一人であることを知らなかった。
だが,日本との縁は持ち続けた。

訪米した婦人運動下の市川房枝とアイゼン
ハワーとの通訳をしたこともある。
「市川先生には、自分が書いた女性の
権利の話はしました。
もちろん賛成してくれましたよ」

ベアテが「男女同権」条項を書いた
背景は,戦前の日本体験と戦中の
アメリカ体験だけだったのだろうか。

憲法草案作成当時、GHQのスタッフは,
高野岩三郎や鈴木安蔵ら日本の学者たち
の「憲法研究会案」も手に入れていた。

国民主権を打ち出した案だった。
チャールズ・ケーディス(87)も、
「それがなければ短期間では無理だった」
と、参考にしたことを認めている。

女性の権利を担当してベアテは
「参考にしたのはスカンジナビアの国の憲法」
といい、「日本の学者の案は研究しません
でした」と話している。

そのころ、GHQのスタッフを支えていたのは
「ルーズベルトのニューディールでした」
とベアテはいう。

「政府はみんなのために援助するという考え方。
私たちは日本の民主主義のために何かしたい
と思ってました」

ベアテはまた、しいたげられたものの
痛みを知る立場にもいた。
戦争が終わってすぐベアテが日本に
来たのは,両親に会うためだった。

ベアテが大学進学でアメリカに去ったあと,
父レオ・シロタは東京音楽学校を追われ,
両親は軽井沢で細々と暮らしていた。

再開すると、「パパは顔に線が出来るほど
やせていたし、ママは反対に栄養不良で
とっても太っていた」

ユダヤ人だった。
元々オーストリア国籍だったが、ナチス
の併合でドイツ籍になっていた。

ベアテは四十七年前の九日間を振り返る。
「私の人生の中で、一番面白かった
のはあの時です」

字句は大幅に変わったが、ベアテが
「自分らしい表現が残っている」という
憲法24条の1項をもう一度読もう。

「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し
夫婦が同等の権利を有することを基本として、
相互の協力により、維持されなければならない」

 

 

「戸籍続柄裁判」

1999年11月22日  東京地裁提訴
_______________________________________
2004年3月2日   却下
_____________________________________________________
2004年11月1日   「長男」「長女」に記載が変わる
_____________________________________________________
2005年3月24日    東京高裁 棄却
_____________________________________________________
2005年11月18日  最高裁 棄却

「婚外子住民票続柄裁判」

1988年5月9日   東京地裁に提訴
_____________________
1991年5月23日    棄却
_____________________
1995年3月1日   前年、12月の自治省通達により
       「子」に統一 全国一斉改製
_____________________
1994年10月31日   東京高裁判決 指定日
  ↓      1度目の延期
  ↓      2度目の延期
1995年3月22日  東京高裁判決
        「訴えの利益なし」
   (3週間前に記載を「子」に統一したので)
         差別記載は違憲
_____________________
1999年1月22日  最高裁  棄却